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12/24

初恋12

【中町学園前】


「おはようございます」


「おはよう」


9月になった。


生徒達と仲良くなれて、夏休みは楽しかったな。


さあ、新学期だ。


【職員室】


「台風が来てる、って」


「収穫前の作物に被害が出るでしょうな」


【階段】


さあ、部活の時間だ。


荻野寛太は3年生だから引退してしまった。


部員が少なくて寂しいけど、楽しく音楽鑑賞しますか。


【音楽室】


「台風やだね」


「また稲が倒れたり、ナシが落ちたりだね」


「玄ちゃんの家は農家だから大変だね」


「そうだね。うちも露天風呂困る」


「あ、先生来なった」


「さあ、今日は何を聴こうか?」


「ベートーヴェン」


「また?」


「ショパンは?」


「うん。ショパンが良い」


「了解。じゃあ席に着け」


「はーい」


響「それでは、今日は、ショパンのピアノコンチェルト第1番と第2番をマルタ・アルヘリッチさんの演奏で聞きます。彼女の情熱的でロマンチックな演奏に酔いしれてください」


【響の宿舎】


だいぶ風が強くなって来たな。


コッコちゃんの小屋を補強しておかないと。


「シロ。もう外に行くなよ」


「ニャー%〆」


〈ギコギコギコ、トントントン、カンカンカン〉


良し!


これで大丈夫だ。


【奥山町】


〈夜になると、次第に雨風が強くなって来る〉


【響の宿舎】


〈風で雨戸が鳴っている。激しい雨音〉


台風で外食は出来ないから、コッコちゃんの卵を焼いて食べよう。


味噌汁はインスタントだけど、ご飯はお(くどさんで炊いた美味しいご飯だからな~


だいぶ上手く炊けるようになったし…


あ、お焦げ出来てる。


〈璃子が来て響の背中にしがみつく〉


「璃子」


〈璃子の方に向き直る響〉


「怖くて1人で居られない」


「濡れてるじゃないか。風邪ひくぞ」


〈響がタオルを取ろうとすると、雷が鳴る〉



子供の頃からいつもこうだったな。


こんな日はこうやってくっついてた。


東京の家なら家族が居るけど、こっちじゃ1人だもんな。


嵐の日に璃子が1人で居られるはずが無い。


もう少し早く気づいてやれば良かった。


「ごめんな、放っといて」


「グスン」


〈響の胸に飛び込む璃子〉


「え?泣くほど怖かったか?」


「もう、バカ」


中学生ぐらいから泣かなくなってたのに、おかしいな?


〈汗汗の響〉


響のバカ。


本当鈍感なんだから。


子供の時みたいに優しいから…


だから…


【奥山町の空】


〈外は嵐。稲光り〉


【響の宿舎】


〈雨戸がガタガタ鳴っている。ビュービューと風の音。雨の打ち付ける音〉


「とりあえず、ご飯。璃子ご飯は?」


「食べて来た」


「そうか、じゃあ僕も…あ、味噌汁冷めてる」


〈味噌汁をチンする響。座って食事を始める。璃子は響に張り付いたまま〉


そんなにくっついて居られると、食べにくいけど、まっ、いつもそうだったからな。


頂きまーす。


あー、コッコちゃんの卵美味しい。


〈そして…夜も更けて来ると、響は居眠りを始めた〉


「ふあ~眠い」


〈ついにゴロンと転がって眠る響。璃子の膝枕で…〉


ああ、寝ちゃった…


「ミャー」


「シロおいで」


「ニャー%#☆」


シロを抱っこしてたら、怖くないもん。


〈そして…璃子も、いつの間にか眠ってしまう〉


【奥山町の空】


〈台風一過の青い空〉


コッコ「コッコッコッコッ」


【響の宿舎】


コッコ「コッコッコッコッ、コケー」


〈爽やかな朝だ。コッコちゃんの声で目を覚ました響と璃子は庭に出てみる

る〉


「コッコちゃん無事だったな」


「コケー」


「おはようございます」


柿崎玄だ。


「おはよう」


「おはよう」


「璃子ちゃんも、おんなった(いらっしゃった)だかいな」


「う、うん」



「梨拾いに来ならんか?」


「うわー、私も行きたーい」


「きんにょ(昨日)の晩の台風でえっと(沢山)落っちゃったけなぁ」


楽しそうだな。


行こう、行こう。


そう言えば、台風の後は竹籠背負って梨拾いに行った、って、お婆ちゃんが言ってたな。


【梨畑】


「よう来てごしなった(くださった)なあ」


うわ~


柿崎のお母さん、本当に竹籠背負ってる!


〈梨が沢山入った籠を重そうに下ろす柿崎唄子〉


「えっと入れて負うたら、重たーて、きゃあ」


うはっ。


出た「きゃあ」だ。


姫路の大伯母が、良く「なんだいな、きゃあ」って言ってたけど…


この「きゃあ」は、標準語訳が難しいんだよな。


色んな意味で使うみたいだけど、お婆ちゃんに聞いても「きゃあは、きゃあだよ」って言うだけだし…


でも、何か可愛い言葉だよな。


璃子のヤツ、最近柿崎に方言を教えてもらって、少しずつ覚えているみたいだ。


覚えたての方言を、唄子さん相手に使ってる。


「肩が痛ーて、きゃあ」


「ほんにーな(本当にね)」


拾った梨を、シャツで拭いて食べてみた。


「美味しーい」


「うん」


鳥取の20世紀梨は、瑞々しくて美味しい。


お袋が子供の頃、関金の大伯母が送ってくれた梨をオヤツに持って遊びに出かけた、って言ってたな。


お転婆で、いつも男子と野球をして泥だらけになって遊んでいたらしい。


【響の宿舎】


梨をたくさん頂いて帰った。


シロが興味津々で見てる。


あ、猫パンチ。


〈シロがじゃれて梨が転がる〉


「こらこら、それはおもちゃじゃないぞ」


「ウニャー#%☆」


梨にじゃれる姿は可愛いけど、食べ物だからな。


しかし、台風が来たのが週末で良かったな。


あれじゃ学校行けないもんな。


さて、明日からまた学校が始まるぞ。



【職員室】


「来月は体育祭だなあ」


「一本木先生張り切ってるわね、さすが体育科の先生だわ」


「この学校の生徒だけでは人数が少ないので、奥山町の町対抗運動会になってるんですよ」


上町、中町、下町の戦いで、中町学園は中町に有るので生徒達は中町。


いつもこの学校の運動場を使うそうだ。


どうりで立派な運動場だと思っていたら、そういう事だったのか。


「高梨先生。俺頑張るけ、見とってくれよ」


「わー、楽しみね」


一本木先生は、璃子に良いとこ見せたいみたいだぞ。


頑張れよ~


「鐘城先生も出るんですよ」


「えっ?」


【運動場】


「これからリレーの練習をする。第1走者は柿崎玄。第2走者は鐘城響先生…あれ?鐘城先生は?あ、早く!」


ハイハイ。


何故か僕もリレーに出る事に…


いつの間に決まったんだろう…?


まっ、良いっか。


「第3走者は荻野寛太で、アンカーが俺だ。良いな!」


「はい!」


おお!


皆んなやる気満々だな。


陸上は、あんまり得意じゃないけど、頑張るぞ。


体育会系音楽教師の底力をお見せしましょう。


「次は、ダッシュ10本!よーい、Go!」


「やってるわねー。皆んな頑張れー」


うわっ、一本木先生早っ。


「ほら皆んなー、一本木先生に負けるなー!」


〈笑顔で応援する璃子〉


【響の宿舎】


はあ、久々に良く走った。


タンパク質を摂取しよう。


えーと、プロテインは…


あ…切らしてる。


買いに行くか?


隣町までか…電車が中々来ないよな。


でもまあ、シロの缶詰めも買いたいし、行ってみるか。


【ドラックストア】


プロテイン有ったぞ。


アミノ酸も買った。


【下町の階段】


一本木先生だ。


階段を駆け上がってトレーニングしてるみたいだぞ。


邪魔をしないでそっとしておこう。


【響の宿舎】


冷蔵庫の中に肉が有ったな。


プロテインは後にして、ご飯にするか。


茹で卵と肉でタンパク質を摂取して、今日鍛えた筋肉を強くするぞ。


「ちゃんと、野菜も食べなさいよ」


璃子のヤツ、いつの間にか来てるし。


〈肉を焼きながら野菜を切る響〉


新鮮な野菜、美味しいよな。


良い匂いがして来たな。


親父が肉が好きだから、僕の家では肉料理が多いんだ。


「何か焦げ臭いわよ」


「おっと、わっち、熱ち」


はあ…見事に焦げてる…


「響、手!」


璃子が僕の手を引っ張って流水で冷やしている。



「火傷して、ピアノが弾けなくなったらどうするのよ」


「大げさだな、このぐらいで」


「このぐらいで済んだから良いけど、ピアノ弾けないと授業困るでしょう」


「まあ、そうだけど」


「こんな事なら、私がお料理すれば良かった。いつも、理科の実験とか言われるから手を出さなかったんだけど」


怒られてしまった。


高梨先生、滅多に怒らないけど、怒らせたら怖いぞ。


【朝の空】


気持ち良く晴れたな。


良い天気で良かった。


生徒達がキラキラしてる。


さあ、僕も頑張るぞ!


【運動場】


いよいよ奥山町秋の大運動会だ。


地方の子は、遠くの山から通って来たりするがら、それだけでも体力がついているよな。


皆んな中々の運動能力だ。


運動会中盤まで、上町、中町、下町共に譲らず。


勝敗は、最後の対抗リレーで決まるようだな。


リレーは、各町から2組ずつ出場する。


中町学園チームの第1走者は、3年生の柿崎玄だ。


スタートした!


柿崎玄がトップを走ってるぞ!


しかしあまり差は無い。


何とかトップのままバトンを受け取ったけど、他の1人と並んで走っている感じだ。


「響先生頑張ってー」


「響頑張れ!」


くっ、敵もしぶといな。


そのまま第3走者の荻野寛太にバトンを渡した。


おっと、抜かれた!


くそう、僕が引き離せなかったから…


荻野寛太は2番手でアンカーの一本木先生にバトンを渡した。


結構離されてるな。


「一本木先生ファイト!」


生徒達と必至に応援する。


「頑張れ!」


「一本木先生、頑張ってー」


あれ?


璃子の応援でギヤチェンジしたみたいだぞ。


「そうよ!もう少し!」


「くっ」


怒涛の追い込みを決めた!


「やったー!」


「素敵だったわよ」


「はあ、いやあ…」


〈璃子に素敵と言われ、赤くなる一本木竜太〉


「中町優勝ですよ!」


「わー!!」


【響の宿舎】


今日は運動会の振り替え休日だ。


天気が良いから布団を干すぞ。


「あら、偉いじゃない。ちゃんとお布団干してる」


「誰もやってくれないからな」


「ねえ覚えてる?」


「何?」


「大きくなったら、お嫁さんにしてくれる約束」


「覚えてますよ。幼稚園の時の約束ね」


お昼寝の時オネショして、一緒に片付けてくれて「良いお母さんになるね」って言ったんだよな。


そしたら「お母さんになる前にお嫁さんでしょう」って…


そして「大きくなったら、響のお嫁さんにしてね」って言われて…


「良いよ」って言ったんだ。


「幼稚園の時ね、幼・稚・園」



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