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OCTAGON  作者: 海内裏


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序章:四億円のコロシアム

暗転した両国国技館。地響きのような大歓声が、巨大な天井を激しく揺らしていた。

地上一メートルの八角形高台ステージ——オクタゴン。照射された強烈なスポットライトの中心で、世界配信のカメラが2人のファイトスタイルを鮮烈に捉える。

圧倒的な手数で相手を切り刻む『二刀流』、間合いの支配権を奪い合う変幻自在の『長刀』。それら多彩な武器と技術の融合が、最高の視覚的エンターテインメントを創り出していた。

何より人々を熱狂させるのは、肉体の制限を超えたジャイアント・キリングのリアリティだ。「刀」という道具を使うからこそ、大男のパワーを非力な女性が洗練された技術でねじ伏せ、若きスピードスターの猛攻をシニアの達人が先読みで仕留める。年齢、性別、体格、そのすべてを超越した多様なサムライたちが、それぞれの思想と生き様を懸けて刃を交えるのだ。

「シャキィィィン!!!!」

鼓膜を引き裂くような、高音の美しい電子音が炸裂する。漆黒の最新サイバー防具を纏ったトップ選手が、腰の鞘から神速で刀を引き抜いた瞬間だった。完璧な刃筋の一致。対戦相手の胸元へ吸い込まれた一撃をセンサーが感知し、防具のLEDがチェリーレッドの鮮烈な光を放って激しく明滅する。

【有効打突。一本——即死判定】

勝負はわずか一瞬。敗者が床へ頽れるのと同時に、巨額の配信インセンティブが勝者へキックバックされる。頂点に立つトップ選手の年間推定収入は、4億円。

かつて伝統芸能だったそれは、今や世界中が熱狂し、一獲千金の夢を掴み取るための、人類最強の「技術」を決める新時代の格闘武道『BUSHIDO FIGHT』へと変貌を遂げていた。

プロへ繋がる登竜門、インターハイ予選の開幕を目前に控え、全国の高校サムライ部がエリートを揃えて牙を研ぐ、そんな激流の最中。創部3年目、全員高校スタート、公式戦の一回戦すら一度も勝ったことがない弱小校があった。

——星ヶ丘高校サムライ部。凸凹な10人のサムライたちの、無謀で熱い戦いの幕が、今ここに上がろうとしていた。

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