表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/79

破壊するもの-14

学園長から聞いた理事長のこと――死の魔法に関する記憶処理の頓服薬を飲み下しながら、都合の良い……いや、悪いことは忘れる。


イデアは「何だっけ」と首を捻りながら、鏡を見た。そこに映し出された顔……目元は堰が切れたように泣きじゃくった所為で、すっかり目元が腫れていた。


「はー、これからみんなをナイトレイブンガレッジに移送して……それから学園の内部調査をした方が良さそうかも」


理事長に関する成果が出るとは限らないが。


イデアはこれから忙しくなる事実に重苦しい溜息を出しながらも、気分はどこか晴れやかであった。弟――本物の弟、オルトの「移送の準備ができたよ!」との声を受けながら、ヘリポートが設置された屋上に移動する。


「ふなー! 子分、俺様はあんなことやそんなことをされたんだゾ!」


「…………」


「うん、どうした子分。なんだか元気がないんだゾ。お前も何か拷問か何かを受けたんじゃ……」


イデアが屋上に到着するや否や、グリムは同居人と感動的な再会を果たしていた。あんなことやそんなことをされたと云うが、スティークスは精密検査をしただけで何も乱暴なことはしていない。それは監督生に学園長、ルークやエペル、そして人為的にオーバーブロットした被験者も同様であった。


「それじゃみんなさっさと乗って。早く学園に帰りたいでしょ」


「イデア、あんたはこれからどうするのよ」


「僕は、事後処理。何せ破壊するものが冥府の門から出ようとしたんだ。それにケルベロスシステムも六割しか復帰していない。システムの創造者として色々やらなきゃいないことがある。数日遅れて、学園に戻ることになると思う」


それとみんな、このことは内密にして欲しいのだが――と前置きをして、イデアは云った。


「僕がスティークスの代表であることは、他言無用で。騒がれるのは嫌いなんで」


「イデアさんがあのスティークスの代表だと、誰も信じないと思いますがね。まあどうしてもと云うなら、ここに契約を――」


「馬鹿なこと云ってねえで、早くヘリに乗るぞタコ野郎」


レオナは呆れたような表情で、どこか守銭奴な性格を見せるアズールを引っ張りながらヘリに乗った。


冥界下り……戦線離脱によりリタイアした者がいながらも、スティークスの精神的負担を軽減させる薬剤の効果があったのか、皆の様子はいつものように元気である。


皆が次々と移送用のヘリに乗っていく。その様子を最後まで見届けた後、真横にいるオルトの姿を見て、少しだけ微笑んだ。


対してヘリは一直線に学園に向けて飛んでいく。早く皆を休ませようと……などといった優しい心意気ではなく、スティークスはケルベロスシステムの復旧に逸早く取り掛からなくてはならない。その為に可能な限り迅速な対応が為されただけであった。


やがて……と云う間もなく、半日ほどの時間をかけて皆は学園に戻ることが出来た。ヘリがナイトレイブンカレッジに接近し、裏庭に降りようとした矢先、学園長は一部分だけ結界魔法の穴をあけて、ヘリの侵入を許可する。


皆が外に出た後、その飛行体は休む暇もなく飛び上がり、雲をかき分けながらすぐさまいなくなってしまった。学園長が一部分開けた結界を閉ざしていると、ヘリの騒音を聞きつけたのか、エースとデュースが駆けつけて来る。


「監督生!」


「お前、大丈夫か!?」


「…………みんな……マイディア……!」


それほど長い時間離れていないが、気分的には久しく見る級友の姿。勢いよく走り二人に抱き着きながら、泣き声をかみ殺して静かに涙を流すのである。その様子に「何をされたんだ!」と怒りを見せる二人であったが、とうとうこらえきれず思いの丈をぶちまけるのである。


「大変なこと、しちゃった……自分が、自分は――みんなに大迷惑を……」


「子分……」


グリムが二本脚で棒立ちにする中、突如泣き出した事実に皆がぎょっとする中、なりふり構わず、イデアが学園長に尋ねた理事長のこと……傍から無言で聞いていたのだが、記憶の補完……にわかに思い出したことを胸に秘めながら、叫ぶのであった。


「こんなことになるぐらいなら、自分は……自分は、いつかそうしていたように、ずっとずっと眠りについていたい――!」


次章、「エリスの妖精(前編)」

五月更新予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ