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Episode:尽きてゆく寿命(お父さん!・・・何とかしてください)

ある日の早朝「ネ申博士、危篤」の知らせが走った、関係者全員は作業を一時中断し博士の元へ集まった。


Teamsメンバーが、知らせの後、集まるのに5分とかからなかった。


そこにはベッドに横たわる父の横で泣いている康美の姿と、その横に忙しく手を動かすウドノの姿、泣いている康美を心配そうに見ているタルトとQクロウがいた。


そして転送して来た私たちを見たウドノが見せたしぐさが、首を横に振る様子だった。


その様子を見た神原が、すぐに反応し「うそよ、嘘でしょ、博士、そんな・・」と、その場でへたり込むと、ウドノが神原に話しかけた。


「今、眠っていますが、状況は思わしくありません」と言うと、神原はウドノに「あんたねぇー、首縦に振れないからって紛らわしい動きすんじゃないわよ、勘違いするじゃない」と言った後「でも、よかった」と小声でつぶやいた。


康美は集まったみんなの顔を見ると、さらに大きな声で鳴きながら訴えた「なんで、私のスキルが時間なの?なんでも病気を直せるスキルなら」と言うと、また父の顔を見て泣き崩れた。


成神がすかさずスタッフに指示を出した。


「政府にも連絡を、最高の医療班をとお願いしてください」そして「治療装置も付けたタイムトラベルPODをすぐに作っておいてくれ」と言うとスタッフは ”どんなに急いでも5時間はかかる” と言うが、成神は「一分一秒でもいいから早く頼む」と頭を下げた。


そしてスキルを使い万能薬と言うキーワードで検索し始めた。


数分すると一つだけ、情報も一言だけの結果が返って来た ”ダークホール” と。


「なんだ、名前だけか」と言い、全メンバーに問いかけた「だっ誰か ”ダークホール” って聞いたことある?どんな情報でもいい、教えてほしい」と全体通信をかけた。


すると3人のメンバーから返信があった。


一人目はビラージ星のサソード王からの情報だった。


「何もない世界ではないのか、もちろん戻ったものはいないが、入った瞬間の通信では ”何もない黒” が最後の通信だったと聞く、だから噂では、死なないと入れない場所というらしい」


二人目はウドノだった。


「私は戻れたものもいたと噂で聞きました、確か ”一筋の光、試練の先に” だったかと」と言うと、神原が「あんた、目の前にいるんだから、真っ先に答えなさいよ、ホント、ボーっとしてんじゃないわよ」とウドノの希望ある情報に安堵した。


三人目はオートニアースの25番体、レイリーからだった。


「私はもともと宇宙船だったと記憶している、私が壊れたのも ”ダークホール” に近づいてしまったのが原因です、精神をたどって航海日誌の記憶を呼び起せば、大まかな座標ならわかるかもしれません」


「みんな、ありがとう。情報をまとめると、何を取ってくるのかは行ってみないとわからないこと、そしてミッションの成功率は限りなく低いこと、内容は修行に近いこと、場所は大まかにしかわからないこと、だね。」


「どうするみんな」と言うと、全員が「私が行こう!」という返答だった。


榊が口を開いた「みんな行こうって言ってくれんのは、ありがてーが、無駄死には無しだ、そもそも、お前らは俺に勝てねーだろうが」と言うと


神原も続いた「榊だけじゃ、心配ね、たぶん目的もわからないんだから、頭のいいメンバーが必要よ、だから私も行くわ」


「なら、僕も行こう、行った先で何か他の情報から検索できるかもしれないし、帰還できるとしたら、調査、分析は必要不可欠だからね」と言い


御神は「私はお役に立つかわからないけど、成神さんについていくって決めているから」と決心していた。


そこへ榊が嬉しそうに「おうおう、なんでーなんでー、初期Teamsメンバーじゃねーか、やっぱそうか、そうだよな、俺たちは最強だからよー」と3人の肩を叩いて回った。


成神は厳しい面持ちで「だけど、最悪も考えないといけないと思う、このミッション失敗すれば、博士も、僕ら4人も命を落とすだろう、できればみんなが、自分の意思を継げるものの名を聞いておきたい。」


「僕はもう決まっている僕の後任はガルムだ」という成神にガルムは「そんな役目はうれしくありません」と目をこすりながら背中を向けた。


「私も決まっているわ、継ぐものはリザレッドよ、それと」片隅に座っている男を指さし、「博士の意思は笹川、あんたが継ぎなさい」と言い、二人は無言で小さく頷くだけだった。


「私も決まっているの、九国と北道を旅した時から、内勤女子が引き継ぐ相手は、タルトとQクロウの二人に頼みたい、お願い聞いてくれる」というとタルトは「いっぱい勉強する」と言って泣きだし、Qクロウは「御神についていく」と無理を言い、ようやく御神がQクロウを説得させた。


「そうか、みんな決まってたんだな、よかったぜ!俺も実は決めてるぜ、気の合うやつさ、ここにはきてないがな ”田中”って奴だ」と言うと一同みんな、頭の上に ”田中、誰?” という文字が浮かぶようだった。


「笹川さんと同じバイオウォッチを渡してるからすくに探せばわかるだろうよ」


とここまで話が進むと、成神が「言われる前に、先に言うと 康美さんは博士を頼む、僕らが戻るまで、なんとしてでも頼んだよ」と厳しい表情で指示をだし、康美は泣きながら、コクリと頷いた。


「それじゃあ、みんな引継ぎを頼むよ、出発は明日だ! 榊は早く ”田中” を連れてきて、説明は丁寧にだよ」と念を押した。


翌朝、集まったのは康美と引き継がれた者たち数名のひっそりとした見送りだった。


康美はまだ泣いていた。


榊は康美に「博士のことは心配すんな、必ず俺たちが助けるさ、そりゃよーこのミッションで全員無事帰還できれば、万々歳だが、誰か一人でも帰れても成功だぜ、俺は死んでも誰かを帰す、だから、嬢ちゃんもう泣くな、それにこっちには神を超える存在の成神様がついてんだ、失敗なんかしないさ」と言う榊の体は、小刻みに震えていた。


そこへウドノが駆け込んできた、「皆さんに渡したいものが」と言って、自分の頭から葉っぱを一枚づつ取って渡した。


「この葉っぱは、私の星では、必ず帰ってくると言うお守りとして渡すんです。だから必ず!」と言いウドノは言葉を詰まらせた。


神原はウドノに向かって「へぇー、こんな気の利くことができるんじゃない」と言いながら渡された葉っぱを眺めた。


御神にはモミジの葉、神原にはイチョウの葉、榊には松の葉、成神にはマルバノキの葉を渡した。


「じゃあ、行ってくる、ミッションスタートだ」と成神達は、4人乗りに改良した白銀に登場し地球を後にした。


しばらくは、みんなから「ご武運を」、「必ずもどって」、「Good luck」などの交信が絶え間なく続いたのだった。


そして最後に康美から「お父さんを、何とかしてください、でも、生きて戻って、皆さん死なないで」と嗚咽交じりに声を絞りだしていた。

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