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第一話 過去と旅立ち

 翌日。私が荷造りをしていると、庭の方から聞き慣れた声がした。


「サーレちゃーん。」

「ちょっと待ってー。」


 私は自室の窓から顔を出し、返事をした。庭にいたのは、美しい金髪の少女である。


 彼女の名前は、セレナ。天真爛漫な性格で、誰とでも親しく話ができる、私の唯一の親友である。しかもこう見えてエストピア魔王の娘でもある。

 そんな彼女と出会ったのは、今から三年前のことだ。


 ****


 当時三歳の私は自室に引きこもっていた。というのも、生まれ持ったこの髪色のせいだ。


 この世界では、赤髪は呪いの象徴とされ、忌避される。そんな私は、物心ついた時から村人に嫌われ、幾度となく酷い言葉を投げかけられてきた。エンジョイしていた私の心に水を差された気分だった。


 両親は私を慮り、村からエストピア王国の外れまで引っ越した。だが、裕福ではないウチの引っ越し先は、ボロい小屋しか見つからなかった。


 それでも両親は、少しでも私を元気付けようと魔法を教えてくれた。これは、両親からの必死の励ましだったことは、三歳の私でも理解できた。しかし当時の私は、毎日のように、村人から投げかけられた酷い言葉が頭の中を駆け巡り、どうしても元気を出すことはできなかった。



 ある日、ベッドにうずくまっていた私の耳に、聞き覚えのない声が響いた。


「サーレちゃん。あーそーぼ」


 誰だろう。私には友達もいないし、ましてやこんな『呪われた子』に会いに来るような物好きな人はいない。


 私は幻聴が聞こえたのだろうと無視していると、


「サーレちゃん。あーそーぼ」


 また聞こえた。しつこい幻聴だ。私は耳を塞いで聞こえないようにした。しかし、


「サーレちゃん。いる?」


 耳を塞いでいたはずなのに、その幻聴は私の手をすり抜けて響いてきた。


「うるさい!」


 私は咄嗟に叫んだ。


 しばらくすると、ドタドタと足音が聞こえ、バタンと扉が開く音がした。


「なんだー、いるじゃない」


 顔を上げるとそこにいたのは、金髪の少女である。年は私と変わらないように見えるその少女は、優雅な服装にスカートを穿いている。しかも、服の所々にヒラヒラが付いているのだ。いかにも貴族の娘という感じだった。


「行くよ、サーレちゃん!」


 少女はそう言うと、私の腕を引っ張り、庭へ連れ出した。


「何するの?あなた誰?何で勝手に家に入ってくるのよ?」

「そんなにいっぺんに聞かないでよ!」


 質問攻めにする私を制止し、少女は答える。


「あたしはセレナ。エストピア魔王の娘だよ」


 私は耳を疑った。魔王? の娘?

 そんな人が何で私を知っているのか。何で私を外に連れ出したのか。

 疑問が次々と湧いてくる。


「あー、サーレちゃん。何で私を知ってるのかって思ってるでしょ?」


 私の思考を見透かしたかのようにセレナは言う。


「あたしは魔王の娘だよ? この国のことなら何でも知ってるよ」

「『呪いの子』のことも?」


 睨みながら問う私に、セレナはにこやかな顔で答えた。


「もちろん!」


 その答えを聞いて、怒りが湧いてきた。


「なら、何でここに来たの? 私をバカにしに来たの?」

「そうじゃないよ!」


 セレナは首を横に振りながら叫んだ。


「サーレちゃんと友達になりに来たの」


 私と友達に?

 それこそ私をバカにしている。


「嘘を言わないで! 誰がこんな赤髪と友達になるっていうのよ!」


 怒り任せに叫ぶ私を制止して、セレナが言う。


「あたしがサーレちゃんと友達になるよ」


 そう言うと、セレナは杖を召喚した。


「【髪色変化(ヘアカラー・アラーギ)】」


 詠唱と共に、セレナの髪色が赤く変化した。


「何してるのよ、あなた!?」


 私は度肝を抜かれた。


「見てー、サーレちゃんとお揃いだね!」

「やっぱりあなた、私をバカにしてる!!」


 怒り心頭の私を見て、セレナは悲しい顔をした。


「そうじゃないよ」


 セレナは私に抱き着く。


「ごめんね、サーレちゃん。怒らせてしまったんなら謝るよ。でもね、あたしはサーレちゃんと友達になりたいの。あたしもずっと友達がいなかったから、こんな方法しか思い付かなかったんだ」


 セレナの涙が私の背中を伝う。その涙は、怒りを鎮めていった。


「本当に私と友達になりたいの?」

「うん!」


 間髪入れずに答えるセレナの言葉に、私も自然と涙が溢れてきた。


「分かったよ、セレナちゃん。いや、セレナ様」

「セレナと呼んで、サーレちゃん」


 私とセレナは、お互いに強く抱きしめ合った。


「ありがとう、セレナ。これからよろしくね」

「うん、よろしくね」

「でも、髪色は元に戻してね。セレナまで嫌われるのは私も嫌だから」

「分かったよ」


 こうして、私とセレナは、友達となったのだ。


 それから週三日の頻度で、セレナが訪ねてくるようになり、一緒に魔法の訓練や会話を楽しんだ。


 これまで友達のいなかった私としては、セレナとの時間はとても楽しいものだった。


 ****


 両親と別れを告げ、私達は学園のある王都へと歩き出した。


 その道中、魔物が現れたりしたが、二人で倒した。現れた魔物が脅威度一のスライムだったから良かったが、脅威度が二ならば危なかった。


 脅威度というのは、世界ギルド協会が定めた魔物のレベルのことである。脅威度が一から五までなら、一般人にも討伐可能なのだが、脅威度が六以上ともなると、冒険者に討伐を依頼するのが通常だ。


「そういえばサーレちゃん、将来の夢は何?」


 セレナは唐突に尋ねる。


「そうね。世界最高の料理人マリア様みたいになることかな」

「あー、あたしも聞いたことあるよ。マリア様の料理は絶品で、口がトロけるようだって噂だよ」


 マリア様は、料理人ならば誰でも目指したくなる存在だ。


「セレナは何になるの?」

「あたしはやっぱり魔王かな。お父様みたいな魔王になるのが夢なの」


 まぁ、それも必然か。しかし、セレナならば良い魔王になるような気がする。


「そろそろ王都だよ」


 セレナの言葉に、私はフードを被る。


 これから、長い学園生活が始まる。

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