プロローグ
小説初心者の投稿です。
拙い部分もあるかと思いますが、温かい目で見てもらえたら嬉しいです。
千年前。魔王ティーバが延命魔法を思いついた時、すでに不老不死の研究は水面下で進められていた。
五百年前には学問として確立されていたが、その憧憬が募るあまり研究が急がれ、よからぬ副産物を生み出してしまった。それが悪魔召喚である。
最初に召喚された悪魔は髪が赤かったと伝えられている。その悪魔はエストピア王国を蹂躙した後、勇者によって倒されたが、以後もエストピア王国では赤髪は不吉な存在として忌避されるようになった。
時は下り現在。魔国・エストピア王国の北部にある小高い丘の上に、一軒の二階建て小屋が建っていた。一階が食堂で二階が住居である。自然に囲まれたその小屋は、もはや廃屋のようにも思えるが、れっきとした食堂である。丘に咲くきれいな花々は、小屋の廃屋感を一層引き立たせる役割を担っている。
ここに、一人の少女が住んでいた。毎日のように料理技術を磨くその少女は、食堂の看板娘である。これは、この少女の冒険物語である。
――――
ああ、楽しい。
こんな感情を出せるようになったのは、いつからだろう。少なくとも私がフレンチレストランの見習いシェフだった前世、彼と同棲している頃はこんな感情は無かった。彼とカップルI Tuberチャンネルをしていたときでさえ、表向きは私生活充実してます感を出していたけど、カメラをオフった直後から冷めきった空気が漂っていた。
一言で言えば、私はこの世界をエンジョイしていた。もともと中二病ぎみだった私にとって、この世界を受け入れるのに時間はかからなかった。
私の名前はサーレ。苗字が無いのは庶民の証だ。
実家は食堂を営んでいる。エストピア王国では人気の食堂なのだが、住居兼食堂の建物のボロさにはママも頭を悩ませている。かといってウチには建物を建て替えるお金などあるはずもなく、今日もボロいままの食堂は、営業準備に追われる。
ただ、食堂のボロさはそこはかとなく風情を感じるらしく、常連さんには評判が良かった。
私は魔族に転生した。前世で事故に遭い、目が覚めるとベッドの上で泣いていた。実家が食堂だと聞いたときには奇跡だと思った。前世の知識が活かせる。
魔族の見た目は(小さな角が生えていることを除けば)人間と変わらない。だから、違和感なくこの体にも慣れることができた。
「サーレ。今日も魔法の訓練をするぞ!」
「はーい」
私は営業準備もそこそこに、パパの言葉に促され、杖を手に取り庭へ駆け出す。風に靡く自分の赤いショートカットが目を刺す度に、掻き上げるのも慣れてきた。
この世界には魔法があり、杖を使う。私の身の丈程もある杖は、先端上部に魔石が埋め込まれているせいかずっしりと重い。その重さは、魔法を使うぞ!という私の気持ちを引き締める。
「サーレ。訓練の前に復習だ。魔法にはどんなレベルがある?」
パパの突然の質問にドギマギしたが、冷静を装い答える。
「はい。魔法には、日常で使う初級魔法、攻撃などを行う中級魔法、さらに高度な高等魔法があります」
「そうだ」
頷くパパの顔を見て私はほっとする。
「だが、さらに上の魔法がある。究極魔法だ」
「究極魔法?」
聞きなれない言葉に首を傾げる私をよそに、パパは続ける。
「究極魔法は、かなり強力な魔法だ。実践してみせるから、よく見ておけ!」
そう言うと、パパは杖を巨大な岩に向けた。
「【地獄の業火】」
パパの詠唱と同時に、大きな岩が黒い炎に包まれ、爆発した。その爆風は、私が今まで経験したこともないような威力だった。私は、吹き飛ばされないように近くにあった小岩に掴まる。
やがて爆風が収まると、そこにあったはずの大きな岩が無くなり、代わりに地面にどでかい穴が開いていた。
呆然としている私をよそにパパは得意げに言う。
「どうだ、サーレ。すごいだろ!」
フンッと鼻を鳴らすパパに、私は問いかける。
「パパは何でこんなすごい魔法が使えるの?」
「それはだな……」
パパが私の質問に答えようとしたその時。
「あなた、サーレにどんな魔法を教えているのですか!?」
食堂から細身の女性が顔を出す。ママだ。
「エルシィ、これはな……」
「言い訳は結構です!サーレはまだ六つですよ?そんな危険な魔法を教えないでください!!」
パパは反省の色を見せているが、ママは怒り心頭だ。こういう時は、そっとしておく方が良い。触らぬ神に祟りなしだ。
私はそっと、食堂へ戻ろうとする。
「サーレ!あなたも明日から学園でしょう?準備は出来たの?」
とばっちりを食らった。
「はい。今すぐに!」
私は、ママの小言を背中に浴びながらそそくさと自室へと足を進めた。
明日から学園生活が始まる。
魔国では、六歳になると学園に通い、生活に必要な読み書きや計算、魔法などを習いながら六年かけて将来の職業への適性を見出すのだ。
学園では寮生活になるので、しばらく両親に会えなくなる。
私は、明日からの学園生活を楽しみにしながら、一抹の不安を抱えていた。それは、私が受けてきた世間の風当たりに理由がある。




