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第十二話 料理祭

 隣国、キューピット王国は食材の宝庫として有名な国である。魔力が含まれるこの土地には、とりわけ高級食材が集まっているのだ。だからキューピット王国は食材の生産と輸出で経済が成り立っている。

 たまにこの国には世界樹(ユグドラシル)が生えていると主張する者もいるが、あながち間違ってはいないのかもしれない。


 私達五人は、キューピット王国の王都を訪れた。王都は賑やかで、所々に飾り付けが施されている。

 先程からしている食欲をそそる匂いは屋台からのようだ。

 祭りでも開かれているのだろうか。


 馬車を降りた直後から屋台の匂いに連られてヨダレを垂らしているセレナをたしなめながら、私達はギルドへと向かう。


「いらっしゃい、あら見ない顔ね」


 スレンダーで美人の受付嬢に迎えられ、私達はギルドへ足を踏み入れる。辺りを見渡すと冒険者どころか人っ子ひとりいない。私は率直に尋ねる。


「今日はお祭りなんですか?」

「そうなの。今日は五年に一度の料理祭が開かれる日でね」

「料理祭って何なのです?」


 アリスが問う。


「料理祭は、その名の通りこの国の食材を料理して皆に振る舞う日なの。この国は他国が食材を買ってくれるおかげで経済が成り立っているでしょ? だから、そのお礼をする日ってわけ」


 丁寧に説明をしてくれている受付嬢は、ハッと気づいたように一枚の紙を取り出す。


「そうそう、今日一番のイベントはコレ。料理王決定戦よ」


 料理王決定戦。どうやら料理人のナンバーワンを決める大会らしい。なんでも世界中から有名な料理人が集まって来るほどの人気イベントだとか。知らなかったけど。


 私にとってはかなり興味がある大会なのだが、出場できないだろうか。もし優勝できれば、マリア様に一歩でも近づくことができる。


「これって今からでも出場できますか?」

「できるわよ。受け付けする?」

「はい」


 ダメ元で聞いてみたが、なんとOKが出た。遠方から来る有名料理人もいるので、試合開始直前まで受け付けをしているという。ラッキーだった。


「サーレちゃん、頑張ってね!」


 仲間からの応援には答えなければならない。早速試合会場である森の入口広場へ向かった。


 森の入口広場には、門がこしらえてある。門の上部には『料理王決定戦』の文字が踊っている。無駄に大きなその文字は習字で書かれていて、迫力と同時に懐かしさを覚えた。


 サッカーコートほどもある広場には、すでに出場者が集まっていた。ざっと数えただけでも百人近くいる。そろそろ試合開始時刻なので、これで出場者全員揃っているとみて間違いない。


「さあさあ、やって参りました。五年に一度の料理祭、メインイベントの料理王決定戦の時間だーーー」


 陽気な声が広場中にこだまする。実況者の姿が見えないところをみると、どこか別の場所にいるのだろう。


「第一試合は、食材の調達だ。料理人の皆さんにはこれから森に入って頂き、食材を手に入れてもらいます。第二試合では、調達した食材しか使えませんのでよく考えてくださいね。制限時間は三時間。間に合わなかったり、途中でリタイアした者は敗北となります。それではよーい、スタート!」


 料理人は一斉に森へ駆け出す。しかし、私はまだ広場にいた。第二試合のメニューを考えないとムダに魔物と戦うことになる。必要な食材だけを手に入れ、第二試合の余力を残すのだ。

 広場には、私と同じことを考えていると思しき料理人が何人か残っていた。


 私はポケットから紙とペンを取り出し、メニューと材料を書き連ねる。時間もないから二品くらいにしようかな。

 五分後、メニューと材料を書き終えようやく食材調達のため森に足を踏み入れた。


 まずは野菜だ。都合の良い野菜が見つかるのか不安だったが、森に入ってすぐに見つかった。野菜畑のように様々な野菜が生えている。すでに採った者がいるようで、いくつかの野菜が無かった。しかし、私が欲しかったトマト、玉ねぎ、人参、パプリカ、キャベツ、ズッキーニ、茄子に似た野菜を手に入れることができた。味も前世のものと変わらないので代用になるだろう。


 次は肉だ。魔物と戦わなくてはならない。


「あらー、あなた料理人?」


 魔物を探していると、背後からねっとりした声が聞こえた。振り返ると、妖艶な女性が立っていた。エプロンを着けているところをみると彼女も料理人なのだろう。


「はい。あなたは?」

「わたしはキュナード。料理人よ。この大会に出場しているの。よろしくね」

「よろしくお願いします」


 キュナードさんと握手を交わした。彼女の手は分厚くいかにも職人の手という感じだった。


「出会いのしるしにコレをあげるわ」


 キュナードさんは、懐から白い液体を取り出した。匂いを嗅いでみるとそれは牛乳に近いもののようだった。


「いいんですか?」

「ええ、もちろんよ。うまく使ってね」


 ありがたい。牛乳は汎用性が高い。料理の幅が広がる。


「ありがとうございます」


 私はお礼を言ってキュナードさんと別れた。


 問題は肉だ。どこかに良い魔物はいないかな。と探していると、コカトリスが現れた。


 コカトリスは脅威度八程度の魔物で、倒すのは難しくない。味は鶏肉のように美味しいので、料理にはよく使われる。

 コカトリスは動きが素早く捉えにくいので、通常は氷魔法で動きを止めてから仕留める。私は氷魔法の代わりに魔王の威圧で動きを止めた。


「料理剣技【半切り】」


 コカトリスは断末魔の後、事切れた。コカトリスを手早く捌き、無限収納袋へ収納する。


 あっ、そろそろ時間だ。戻るとしよう。


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