第19話 反省会
僕は皆の顔を1度見回してから話し始めた。
「えっと、僕はまず霧を発生させるシェイクスピア、あとは刀を持ってたオノって名前の人と、シェイクスピアに"リガルディ"って呼ばれてた魔術使いに遭遇したかな。あ、あと泥人形も1、2人見た気がする」
「ソラチームの方はどうでしたか?」
「私達の方には人形を生成出来る前世を持った男が来たわ。私は途中でそっちに向かったからあんまり戦ってはいないけど、ミナトと2対1でも中々攻撃が入らなかった。ミナトは他に誰か見た?」
「俺はソラが離脱した後狙撃された。掠っただけだったが移動している俺にそこまで近づけたのはかなりの命中精度だ」
「狙撃されたってことは、ミナトの索敵外からの狙撃ってことですよね、、。そのスナイパーも前世持ちでしょう。タイタンの方は誰か見ましたか?」
スミハが聞くと、シグは首を横に振った。
「僕達はずっと小屋に居たから誰にも会ってないよ」
「じゃあ、今出た5人が前世持ちってことか。探偵能力で何か分かったりしない?」
「さすがに職種だけとかだと情報が少なすぎて分からないですね。リガルディとかオノならインターネットで調べれば出てきそうですけど」
「そうか、、」
「はい、すみません。他に何か収穫したものがある人はいますか?」
すると、コウスケが手を挙げた。
「オノってやつが言ってた言葉があるんだが、『人形を操るのもまた操り人形』って言葉。聞いたことないか?」
「操り人形、ですか。、、その文章を見聞きしたことは無いですね。人形、ましてネクストの人物が言った言葉ならなおさらでしょうけど、泥人形とそれを生み出す能力者に関係しそうですね。文章には操られる人形と、それを操る人物、さらにそれを人形として操るという、縦方向に3階級に分かれた存在も伺えますね。ってことは、、、、」
スミハはここで考え込み始めた。ここまでの推理でスミハは能力を使ってはいなかった。
「うーん、、。うん、分からないですね」
しばらく会話を中断して考えた結果、出てきた答えがそれだった。
「あ、能力使っても分からないものは分からないですからね」
「そうなの?」
「言いませんでしたっけ?私の能力は情報が3つない場合は使ったとしても、使わないときと同じ推理力にしかなりません。3つあればどんな謎でも解けますけど」
「コウスケから聞いた気がする」
「私だけではなくて、全ての来世に制限があるはずです」
そう言われて僕はソラの方を向いた。
「私は音速を超える速さでは飛べないかな」
そこまで出れば十分だろう。
続いてミナト。
「俺は天気が悪いときは影に入り込めない」
アマセ。
「一戸建てより大きいサイズの空間は創れません」
マナハ。
「5日、、より前、の臭気は、、嗅げない」
ユキ。
「うちは自分の体しか強化出来んよ」
最後にコウスケを見た。コウスケは、使えるようになったばかりの自分の能力にどんな制限がついているのか知らなかっただろうが、それらしい制限を答えた。
「多分、死者蘇生は出来ないんじゃないかな」
そりゃそうだった。
「でもさ、僕とコウスケのことほぼ情報無かったのに初日で全部分かったみたいな言い方をしてたよね?」
僕達の記憶が戻った日、ここで皆の自己紹介を受けたときにスミハは僕達のことを「呪われている」とか言っていた。
「あー、あれですか。あれは適当です」
「え?」
「ああでも言わないとアストレアに入ってくれないかなと思って。呪われてるって言ったって、来世持ってる時点で皆呪われてるようなものですし、アストレアに入った方が安全なことには変わりないので、言ったもん勝ちかなーと」
「でも、ソラも皆も同調してたよね?知ってたの?」
「も、もちろん!、、知ってたよ?」
ソラの目が泳いだ。
結局、皆に騙されてたってことじゃんか。まぁ初対面でそこまで知られてたら逆に怖いが。
こうして皆の能力の制限を聞いてみると、ものによってそれぞれ致命的なものから常識的なものまでその差は結構大きかった。
自分の能力はどんな来世のものなんだろうと考えてみたが、何も思い浮かばなかった。
「話が大分逸れたね。他に何かこれといった情報がある人はいる?」
ソラがぐるりと皆を見回す。
「私も1度元の世界に戻ってもいい?」
マイが聞いた。
「全然大丈夫。というか、私とミナト以外皆外に帰ってるし、何かあったらすぐに来れるなら問題無いよ」
「ありがとう」
「他には、もう無さそうだね。じゃあ今日のところはこれで解散にしましょうか。ヨシナギに体力分けてもらってても、一時的にだから帰ってちゃんと休んでね」
それがヨシナギの能力の制限らしく、当人は「あはは」と苦笑いしていた。
「コウスケ、もう帰る?」
「治した傷が少し心配だから確認してくる」
「分かった。待ってるよ」
ソラは近くに来たコウスケの前で能力を発動させて、綺麗に揃った翼をバサバサと動かしていた。
「ハルキ、ちょっといい?」
名前を呼ばれた方を向くと、マイが立っていた。
「どうしたの?」
「何かあったときのために連絡先交換していい?」
マイは何となく照れている様子だった。
まぁ異性に連絡先聞くのって恥ずかしいよなー、とのんびり考えつつ携帯を取り出した。
「いいよ」
スマホを画面にかざすと、マイのアカウントが表示されたので追加ボタンを押しておいた。
翌日から僕のアプリにはマイの愚痴が大量に送られてくるようになった。
家に帰り、リビングに入ると、陽菜乃に案の定というか、当たり前だが質問をされた。
「おかえり、お兄ちゃん。今朝異常に早く家出たみたいだったけど、何かあったの?」
さて、どう答えたものか。正直に答えるわけには流石にいかないので何かそれらしい理由を見繕わなければいけない。何かなかったかなと首を回してほぐすフリをして部屋を見回した。すると、部屋に貼られたカレンダーが目に入った。
「えーっと、文化祭の準備に行ってた」
「文化祭かー。なるほど、今週末だもんね。見に行くから頑張ってね」
チラッと見ただけだったから分からなかったが、文化祭当日までもう一週間もないみたいだった。これはさすがに少しは準備に顔を出さないといけなさそうだなと、非協力的な思考をしつつ、とりあえず口だけでは前向きに答えておいた。
「頑張るよー」
──熱い文化祭が幕を開ける。




