『初体験⑤』将来決定
今回はガリレオ回です。ガッカリ王子ならぬ、ちゃっかり王子として活躍するのでお楽しみに。
サブタイトル「将来的にはねずみさん?」から変更しました。ねずみ算的に増えると言いたかったのですが、ストーリーが合わなかったので・・・
《貯金者が20名を超えました。それにより、預かり限度を人数制にして50名に。各人口座の限度額を2000万とします》
久しぶりに聞いた天の声。
意味が分からないと思っていると、頭の中にイメージとして伝わってくる。
《なお、一人だけVIPとして限度額2500万の口座を作ることが出来ます》
「…………」
「どうかなさいましたか?」
「……いや、う~ん」
突然考え込んだ僕を心配したニンフィーニアが声をかけてくれるが、情報を整理する必要がある。
これを伝えるのはいいけど、どう伝えるべきか……。
そもそも、貯金者が20名を超えたって……そんなにいないと思うんだよね。
今は基本的にガッカリ王子の策略で限度額を増やすことを目標にしてるから、ガッカリ王子の分がほとんどを占めてる。
一旦出して、また入れてだけど他の人の分を入れる余裕はほとんどない。
ただ、タイミングとして気になるのはついさっきニンフィーニアと彼女の祖父オーディンさんにスキルの説明として『貯金』を体験してもらったこと。
このタイミングを考えれば、二人を合わせたことで20名を超えたと考えるべきだと思う。
だけど、結局ガッカリ王子の分が多すぎるからほとんど貯金していない。
となると、今までの合計人数なのかもしれない。
今までに僕の『貯金』を利用したことがある人は結構いる。
それこそ、20人じゃ足らないと思う。だけど、そうじゃない。その人たちは貯金をしたわけじゃなくて両替をしたんだ。
だったら、本当に僕にしばらくの間預けていた人を中心に数えてみよう。
まず、父さんと母さん、それに兄さんにリスティ姉さんの家族4人。
次にゼウスおじさんとその孫の3人。
あとは学院に行ってからのメンバーとして、ガッカリ王子ことガリレオにヘラク、カミア、ロール、そしてヘンウェン。それにガリレオとロールの従者のドルーマンさんとメイドさんを合わせて7人とルリスさんとコイーンさん。
最後にニンフィーニアとオーディンさん。
ええっと、これで19人? あれ? 20人に足りなくない?
他に誰かいたかな?
「ねえ、学院で僕のギフトを知ってる人っていうか利用したことある人って誰がいたっけ?」
「なんだいきなり?」
「いいから、答えてよ」
「……ったく、この場にいる人間を除けばロールとその侍女。あとは教師ルリスぐらいじゃないか? 学院もギフト保持者の不興を買うつもりはないから、知ってはいても積極的に関わっては来ないはずだからな」
知らないところで会ってない限りはそのはずと言われたけど、基本的に寮から出ない生活をしてたからなぁ。
「で? どうしたというのだ?」
ずいっと顔を近づけてくるガリレオ。本当にこういう時だけは勘が鋭い。
「実は……」
ここで誤魔化しても謎は謎のまま。とりあえず正直に話すことにしよう。
「――そういうことか。だが、お前は肝心な人物を忘れている」
「えっ? 誰?」
ショック!! ガッカリレオが僕よりも先に真相に辿り着いたなんて……!
「それはお前自身だ!」
「えっ……? あ、ああああああっ!!」
そうだよ! 僕だって利用してるじゃんか!
なんで気付かなかったかなぁ……。
◇◆◇◆◇
「あのっ!」
「ん? どうかした?」
ショックを受けていると、ニンフィーニアが期待の篭もった目で見つめているよ。
なんていうか、この子は犬みたい。
散歩に行く前の状態はこんな感じなのかもしれない。
そう言えば、ドリーもよくこんな目をして遊んでほしそうにしてたな。
「先程からのお話、勝手ながら聞かせていただきました」
うん、それは別にいいよ。
元々、隠すつもりもそんなにない話だったから。言うべきかどうかは迷ったけど。
「察するに、リムニル様のギフトが進化したということですか?」
「あぁ、うん。そうなるかな?」
成長の方が近いような……そもそもなんでこんなに前のめりなんだろう?
「では、より多くの人々が救えるということですね!」
「えっ?」
あっ……!
ニンフィーニアにはさっき方便で貯金の素晴らしさと貯金をすれば貧しい人々が救えるって言っちゃったんだった。
だけどなあ、たしかに貯金が広がれば多くの人が救えるけど、今すぐに同行できるわけじゃないんだよなぁ。
どうやって誤魔化そうか?
「ちょっと待て」
「……なんでございましょうか?」
ニンフィーニアとガッカリ王子はあまり仲が良くないのかな?
国を超えて勢力のある教会と国の中心である王族じゃあ対立してもしょうがないってことかな?
「お前は何か勘違いをしている」
「勘違い? リムニル様は貯金をすれば、貧しい人々を救えるとたしかにそう仰いました! ですよねっ? リムニル様」
「あっ、うん。そうだね」
僕が肯定すると、途端にドヤ顔。
意外だ。こんな風にムキになるんだ。
「たしかに、リムニルが説いた教えはオレも納得する部分がいくつかある」
僕のというよりは、前世のライバルの手法だけどね。
「だが、お前は根本的に間違っている!」
ズビシィ!とニンフィーニアを指差すガッカリ王子。どうでもいいけど、さっきからやけにカッコつけてて鬱陶しいんですけど……。
「そもそも、リムニルはまだ子どもだ!」
「お前もな」
「その子どもが、金を貯めたからといってすぐに人々を救えるわけがなかろう?」
「そんなことはありませんっ! 教会が支援すればすぐにでもリムニル様の温かい思想は人々を救うことでしょう」
「愚か者! 教会が支援をしたからといって、他国の政治に勝手に介入することは出来ん!」
下手しなくても国際問題。最悪の場合は戦争になっちゃうもんね。
「ぐぬぬ……!」
「……おいおい、なんかあの二人やけに盛り上がってるな」
「放っておけばいいと思うよ?」
騒ぎを聞きつけて、ヘラクたちが野次馬にやって来たみたいだ。
「そこで、だ!」
あっ、なんか嫌な予感。
「このオレが直々に国や財務卿などに掛け合って、リムニルのいう貯金とやらを広めてやろうではないか!」
「なんですって!」
なんだってーー!?
「それって大丈夫なんですか? 見ようによっては教会の教えを広めているようにも見えますが」
「まあ、教会の教えを容認したと取られかねませんが、裏を返せばこの政策が上手くいけば一部とはいえ教会の支持を得られるということです。飢えに苦しむ人が少なくなるのなら、良いことでしょう?」
それはもちろんだ。
ただそれを言い出したのがガッカリ王子というところに一抹の不安を覚えるけど。
「そうだな……こやつが学院を卒業するまでには主だった関係者に面通しをさせることを考えれば、成人する頃には制度を普及することが出来るやもしれんな」
具体的に決めてるところ悪いけど、それって僕が面倒な人たちと会うってことじゃない?
貯金は広めたいし、具体的に将来の夢にも繋がるけど……まだそういう面倒事に巻き込まれるのはごめんだなぁ。
「もちろん、教会がどこまで支援するかにもかかっておるだろうがなぁ?」
「わ、私の信仰はあなたなんかに負けませんっ! 主神様をはじめとした神々を信仰する聖なる力を存分にお見せしましょう!!」
あっ、ダメだ。これ、もう決定のパターンだよ。
「ガーハッハッハ、教会の力楽しみしておいてやる!」
「あなたこそ、一度口にしたからには身を粉にして、リムニル様のために働いてもらいますからね! 撤回はさせませんよ!!」
「ふはははっ、口だけの女にオレが負けるとでも?」
「むっきぃ~」
諦めよう 人生なんて こんなもの (リムニル、諦めの一句)
こうして僕の人生は早い段階で大きな流れに乗ることになってしまった。
数えてみたら名前を付けた登場人物たちがいい感じの数だったので、それを利用してみました。まさかここまでガリレオが動き回るとは予想外々過ぎて、今後どうなることやら。
それではまた次回にお会いしましょう。 ブヒッ!




