『ヘラク』変なところ?
10月上旬に風邪を引いてしまいまして、投稿が遅くなりました。他にも事情はあるのですが、とりあえず今回はヘラクの故郷の話です。
「「「ギャアアアアア!!」」」
「…………!?」
「ハッ!? リムニル様ーーヘンウェンさんがーー」
……あれ? なんかおかしいな?
オレ様の名はヘラク。
今は長期休暇を利用して、寮の仲間を連れて来卿に里帰りをしている……のだが、みんなして逃げ惑っている。
だって、逃げてるのはただの牛だぜ?
そんなにビビることじゃねえだろ?
そりゃあ、リムニルの村で見たのと比べるとデカいけど、あれは仔牛だぜ?
あぁ、でもヘンウェンはヤバいかも。仲間内で一番女らしく、華奢。精神的にも弱そうだからな。
そういう意味ではくっつきそうなリムニルは肝が据わってると思ってたんだが……羊を飼ってるくせに牛は苦手か?
あと、普段はガリレオをバカにしているように見えるドルーマンっておっさんも今はガリレオを抱えて逃げてる。意外と大切にしてたのか? ……と思ったら、ついこの間合流したニンフィーニアの悲鳴を聞きつけてヘンウェンを抱えに行っちまった。ガリレオを放り投げて。
「ったく、しょうがねえな」
いい加減に家に案内しときたいからな。
「ほらほら、止まれ」
「ヴぉ?」
「どうどう」
馬じゃないけどなー。しばらく撫でてたら落ち着いてきたのか大人しく柵の中に戻って行く。本当に何で牛なんかが怖いんだろう?
◇◆◇◆◇
「おー、ヘラク帰ってたのか!」
「よう、アトラス! 久しぶりだな」
話しかけて来たのはオレ様の2歳上な友人アトラス。オレ様と違って学院には通っていない。というよりも辺鄙なところにあり過ぎてここではよほどのことがない限り、外界との交流がない。
たまに旅の商人が来たりするぐらい。
オレ様もギフトが見つからなければ学院に通うことなく、のんびりと過ごしていたに違いない。
学院は楽しくないわけじゃないが、面倒臭い。リムニルとは初めケンカ腰になったが、今は仲が悪くない。ただ、頭を使うのはあまり好きじゃない。
昔の人の話とか必要か? いや、それよりも偉い人と話す時の作法って何よ? 王族とだってちゃんと話せてるんだぜ? えっ、ガリレオは別枠?
先生役を手伝っているロールは本物の先生であるルリスよりも厳しい。同い年なのにな。
「あれ? ヘラク、少し細くなったか?」
「……そうか?」
言われてみればそうかもしれない。ここと違って、王都では力仕事をする機会が減ったから筋肉が減ったのかも。最強の男を目指すオレ様としては問題だ。そう、由々しきってやつだ。
「由々しき問題だな」
「……由々しき? 変な言葉だな。まあいいや、帰って来たなら少し手伝ってくれよ。お前がいるとすぐに終わるから楽なんだよ」
「いいぜ!」
どうせリムニルたちはしばらく起きないだろうからな。
「ヘラクじゃねえか!」
「帰って来てたのか!!」
「おうよ! おっちゃんたち、オレ様に任せておきなっ!!」
オレ様の育って場所は木を切ったり、動物を狩ったりして生活しているんだって前に長が言ってた。あと、オレ様を学院に誘った偉い人が言ってたと思う。
なんでもこの辺りの木々は燃えにくいから家具とかにいいんだってさ。
燃えにくい木ってなんだろうな? 火を点ければ燃えるじゃねえか。
「いっくぞー!」
オレ様は木に巻き付けた鎖を力いっぱい引っ張る。するとズズゥンと大きな音を立てて木が倒れてくる。この時に大切なのは切り目を入れておくこと。そうすればそのうちにまた木が伸びて来るらしい。
「キャァッチ!!」
普通だったら大人10人ぐらいでようやく受け止められる大きさもオレ様の【怪力】があれば楽勝だぜ!
「「「お~」」」
「……やっぱり、あいつがいると楽だな」
「なあ、早く卒業して戻って来てほしいぜ」
「コリャアアアアア!!」
皆が褒めてくれるのは嬉しい……そう思っていたら、怒鳴り声を上げて爺さんがやって来た。まあ、この村の村長なんだけどな?
「じっちゃん!」
「バッカモ~ン!!」
嬉しくなって駆け寄って行けば、いきなり頭を叩かれた。
老人とは思えない力にオレ様の頭がぐわんぐわんと揺れる。
「いってぇえええええ!?」
「ヘラクッ! お客人を放置してこんなところにおるとは何を考えておるかあああ!!」
「痛えよ、じっちゃん!」
それにうるせえ!
この人、本当に爺さんか? 見た目は学院長と同い年ぐらいなのに、元気が全然違えよ!
「お前たちもお前たちじゃ! ヘラクのギフトにばかり頼るなとあれほど言っておったというのに……!」
「いや、でも便利だし」
「楽だし」
「たっわけがぁああああ!!」
なぜか昔からじっちゃんはオレ様のギフトに頼ることを良しとしないところがある。
オレ様は頼られて嬉しいんだけどな?
どうも、子どもを大人以上に働かせるのがおかしいってことなんだけど、オレ様に言わせれば出来る奴がやる方がいいんじゃねって思うだけどな?
「ヘラク、お主はさっさともてなしに行け~い!」
「……はいはい」
しょうがないなぁ。
◇◆◇◆◇
「まったく、揃いも揃って情けない!」
村でも幼いヘラクに頼り切るとは……。こやつらには誇りというモノがないのじゃろうか?
「いやぁ~、でも村長やっぱりヘラクの力は便利じゃないですか?」
「そうそう。オレ達が必死こいてやる作業をあいつなら一人だけで出来るんですよ?」
「かぁ~~情けない!」
大人が子どもに仕事を押し付けるなど……。
「よいか? この村は、かつて偉大な戦士たちが切り開いた土地じゃぞ? 儂らもその血を引く者として誇り高い生き方をせねばならんのじゃ!」
「わかってるけど、年々村のもんの力も弱くなってるしなあ」
「……それはそうじゃの」
どうやら、偉大なる血はほどよく薄れておるらしい。
そんな中に生まれた偉大なギフトの持ち主であるヘラク、頼りたい気持ちが芽生えるのはわかる。わかるのじゃが、それでも働き手になる歳でもない子どもに大人の仕事を押し付けるのは間違っておると儂は思う。
「ところで村長、ヘラクだけに客人の相手をさせてもいいのかい?」
「おっと、そうじゃった!」
いかんいかん。外の世界の者とここの環境で育った者は常識が違うのじゃった。
接客する時は誰かが傍におらねば。ヘラクでは頼りないからの。
「今日のところはこれぐらいで済ませておくが、滞在中はあまり頼るではないぞ? ヘラクも外の友人を連れて来ておるんじゃ、ゆっくりさせてやれ」
「はいはい」
「外から滞在する客人は久し振りだからな! 盛大にもてなそうじゃないか!!」
「「「オ~!」」」
「うむうむ。儂も楽しみじゃ」
この村は良い所じゃが、外は刺激に溢れておるらしいからの~。
どんな土産があるのか。ふぉっふぉっふぉ。
この村の秘密は、後々。あまり長々と続ける話ではないので長くても3話でヘラクの村は出て行かせます。 ブヒッ!




