『入学編②』おかしな友達?
一気に王都へ進行します!
「ガーハッハッハ! すまんなぁ! 遅れたせいで驚かしたみたいで!!」
「…………」
「…………」
嵐のように、というか自身が嵐を体現するかのように現れた少年は目の前で豪快に笑っている。
「…………」
「……(コクッ)」
「……はぁ」
アイコンタクトを交わしてみると、どうやら何故か僕が交渉をするみたいだ。
この場合はコイーンさんがすべきだと思うが……、まあおそらく同い年?だろう僕に白羽の矢が刺さった感じなのだろうね。
「……初めまして。僕はリムニルだ。君が王立学院に入学する予定に間違いはない?」
あー、駄目だ。普段は無意識で出来てるけど、いざ子供っぽさを意識すると難しい。
「おうっ! オレこそがヘラク!! ギフト『怪力』の持ち主にして最強の男よ!」
……うん。そんなとこまで聞いてないし、というかいきなりそんなこと言われても「はっ?」としかならないからね?
「『怪力』かぁ……。便利そうだね」
大丈夫かな? なんか不自然に顔が引きつっているような気がするんだけど……。
ちらりと視線を移せばそこには荒れ果てた森が広がっている。
どうやらここに来るために邪魔な木々をちぎっては投げしてきたようだ。便利は便利だが、迷惑なスキルを持っている。
第一印象を悪くしないためにも褒めたけど、使いどころを誤ると大変そうだ。なのに、こいつがこんな力を持っていていいのだろうかという疑問が拭えない。
「そうだろ? オレの力を使えばこんなジャングル一日で更地にしてやるぜ!!」
あっ、どうやらヘラクはバカよりらしい。
兄さんとはまた別方向みたいだけど……。う~ん、フレイあたりとは気が合いそうだね。
――ぶえっくしょい!!
遠くから誰かがくしゃみしたような音が聞こえた気がするが、まあ置いておこう。
「よろしくヘラク。僕はリムニル。僕もギフトを授かった者だよ」
「ほお~。お前がかっ! いやぁ~、世の中にはオレの想像できないことがたくさんあると聞いていたが、まさかお前みたいなひ弱な奴がギフト保持者とはな!」
「……ひ弱?」
「ああ。お前なんてオレの力ならちょちょいのチョイだからな!」
……なんなのこいつ?
そりゃあ、ね? 僕もヘラクと戦って勝てるなんて世迷言を言うつもりはないよ?
あの力見た後だもん。
だって、片手で大木を放り投げるんだよ? 切り落とされた枝とかじゃなくて、根元から数メートルいや、10メートルに近いような高さの木をだよ?
無理だって。
僕の身体能力はこの世界の7歳児なんだから。
「それは聞き捨てならないね」
(まっ、だからって負けを認めるつもりもないけどね!)
「君に何が出来て僕に何が出来るか。それを知りもしないうちからちょちょいのチョイ? 比べる土俵にすら立っていないって?」
言いたいことを言われっ放しなのはどうも性に合わないんだよ。
「僕に言わせれば、君の力はただの暴力だ。力というのはそれに見合って理性と感情のバランスがなければ人を傷つけるだけで終わるということを理解していないようだね?」
「難しいことはいいんだよ! オレの力は人を助ける! お前の力よりも遥かにな!!」
「その定義が間違っているって言ってるんだよ。君の力が助けるのはどういう人なのか、ちゃんと考えないといけないんだ。……それに、僕の力だって人を助ける力だ」
これだけは引けない。
僕は現世も前世も人を助けるためにこの力を使っているんだから。
「このっ――」
「――はい。ストーーップ!」
殴られる。
そう直感した時、それまで沈黙を貫いていたコイーンさんが間に入っていた。
正確には殴りかかられた僕の身体を持ち上げたわけだけど。
「二人とも落ち着こうか? 二人がどういう風に力を使うか、それをハッキリさせるために僕たち大人がいて、王立学院があるんだから」
諭すように語るコイーンさんはいつもよりも真剣度が増しているような気がする。
「――いいかい? ギフトは強力な力だ。かつてヘラク君のような超人的な力を持っていた人がいた。その人は利用されて、最終的には破壊の限りを尽くして死んだ」
ヘラクがショックを受けたように俯いてしまう。
「――そして、リムニル君のように誰かの役に立てる力を持っていた人がいた。その人は自分の力があるから成果が出ているのだと主張して、最終的には孤立してしまった」
今度は僕が俯く番だった。
実際、僕の力は誰かがいなければ意味がない。
独りでは使えない力なのだ。
「過去の人たちは本来なら称賛され、英雄や賢人などと呼ばれる人だった。だが、力に振り回されてしまった。君たちから見れば、強制的に学院に通わせる僕たち王国の人間は過去にギフトを悪用した人たちと同じように見えるかもしれない」
「そんなことは――」
「――実際、そういう面があることは否定しない」
僕が何か言う前にコイーンさんは自分を悪に見立てている。
向かい合うような位置でヘラクが手にぐっと力を入れているのがわかる。先程までならすでに殴りかかっている状況だ。
それを必死に堪えている。
――これは成長だ。
短い間に彼は成長をしようとしている。
過去の失敗を聞き、そこから学ぼうとしている。
負けてはいられない。
「王立学院があるのは王都だ。王都にはこの国を統べる御方がおられる。そして、そういう場所は少なからず政――つまり、政治の影響を受けている。おそらく、在学中に様々な思惑を持った人が君たちに接触して来るだろう」
「「…………(ごくり)」」
知らず知らずのうちに、僕たちの喉から緊張を示す音が聞こえてきた。
「それを見極めてほしい。子どもにはきついかもしれないが、それこそが学院を設立した先人たちの願いだから」
◇◆◇◆◇
「――さっきは驚いたよ」
コイーンさんの話が終わってから、しばらく車中では誰も口を開かなかった。
言われた内容について真剣に考えていたから都合がよかった。それはヘラクも同じだったのだろう。
そして、僕が落ち着いたと見たのかコイーンさんが話しかけてきた。
「……驚いたって、何にですか?」
僕としては正直な気持ちだったのだが、コイーンさんは一瞬きょとんとした後、吹き出した。
「……ぷっ! あはっはははっ!! ご、ごめんよ。悪気はないんだ」
「……そうは見えませんけど?」
「いやぁ~、歳に似合わぬ弁論を見せた君が今度は年相応の態度を見せることがちょっと気になっただけだよ」
ああ。なるほど。
さっきの態度に違和感があったというわけか。
「あの時は感情的になっていただけです」
たしかにあの時は感情に任せていたので、子ども相手に理攻めをするという態度に出てしまった。これは反省しよう。
「……まあ、そうなんだろうね。君は賢い子だから。僕が見てきた中でも王立学院に通う前にそれぐらいの態度を見せるのは珍しいけどね?」
「へぇ? ゼロではないんですね?」
これには少し驚いた。
僕が落ち着いているというか、不相応な態度なのはあくまで前世があるからだ。だから、ただの子どもが同じくらい老成していることは意外だ。
「――そうさ。なんせ、王立学院は未来の国政を担う者が多い。国を背負って立つ人間っていうのは、ほとんどが幼き頃よりその使命を背負っている。理解しているか、知らず知らずのうちかはわかれるけどね」
「……わかりました。学院ではそこも学びますよ」
つまり、自分を特別だと思うなってことが言いたいわけか……。
「コイーンさんって意外と年寄り臭いんですね」
「ぐはぁっ!?」
小言が多いのは美徳じゃないよ。
辛辣な僕の一言は先程まで得意気だった彼の心を抉るのに十分すぎる威力があったようだ。
◇◆◇◆◇
「見えてきましたよ。あれが、王都です!」
あれから数日後。
ようやく新天地へと到着した。
「すっげえ……」
ヘラクは馬車窓から顔を出して王都に夢中だ。
かくいう僕も初めての都会にちょっと緊張……。
「そして、あそこが君たちが通う王立学院です!」
コイーンさんが指さしたその先。
王都の街中か少し離れた小山。そこにそびえ立つ建物。
遠目からでは光り輝くようにしか見えない場所に心躍ろる感動を抑えきれなかった。
目指せ年内に5話!
ということでちょっと物語的に駆け足でいきますね?予定では残り4話で学校の説明やクラスメートとの交流を入れていきます。
新キャラ(王子含む)が各1話ごとに出て来るようにできたらいいなって思ってます。 ブヒッ!




