『入学編3』いざ、王立学院?
宣言通りの新キャラ登場(ただし、名前はまだ明かされていません)。
年内に残り3話。いけるかどうか怪しくなってきましたが頑張ります!
「うわぁ……」
ようやく辿り着いた王立学院。
その荘厳な佇まいに思わず、感嘆の声が漏れる。
前世では基本的に動くことがなかったから、立派な建物を見るというのは僕にとっては生涯で初めての経験だった。
それは、ジャングルの奥地で生息していたと思われるヘラクも同様だった。
「ひゃー! なんかよくわかんねえけど、すっげーな!!」
表現の仕方がどことなく馬鹿っぽいなと思いつつ、言いたいことは伝わってくる。というよりも実は僕も同じような感想を抱いていた。
ただ、それを認めるのはちょっと癪なので、僕は余裕があるフリをしつつ背後を振り返る。
「……でも、王宮に比べるとどうしても見劣りしてしまいますね」
背後にそびえ立つこの国の中心。
僕などとは身分が生まれながらにして異なる王族が住まう場所。
そこと比べるとまさに月とすっぽんといえよう。
遠目からではわからない格の違いがある。
「ははっ、そう思うだろう?」
しかし、僕のそんな感想は同行していたコイーンさんの笑い声で霧散する。
「……どういうことですか?」
今の言い方では違うと言われているような気がする。
「田舎の小さな商会とはいえ、僕だって商売人の息子です。これでも自分の眼には少しばかり自信があるんですけど?」
なんとなしに侮られた気分になって言い方がキツくなってしまった。
だが、これは曲げてはいけない矜持だと思う。
「オレもそう思うぜ? いや、オレはそいつみたいに商人の息子だからってことはねえんだけど……なんとなく凄さが違うって感じがする」
「……ヘラク」
思わぬ援護射撃に僕は目を見開いてヘラクを見つめた。
ヘラクは気恥ずかしいの目を合わせようとはしなかったが、嘘は言っていないと思われる。
「おっ、意外と仲がいいじゃないか。これならこれからの学院生活も安心だね!」
コイーンさんは僕の質問よりも僕たち二人の関係性の方に注目しているようだ。
そんなに仲が悪く見えたのだろうか?
それとも、貴重なギフト保持者が反目しあう関係を改善しようとしているとか?
初めて会ってから時間は経ったが、接した時間が短すぎていまいちこの人のことを掴みきれない。
「――さて、そろそろ答え合わせをしようか」
散々勿体付けておいたわりに、あっさりとコイーンさんはネタばらしをすることにしたようだ。
「あー、あー」
「「…………?」」
「よっし。いくぞ! ――開け世界の扉!!」
「うっわわわわっ!」
「うぎょえぇぇぇ~~!!」
なんだ!? なんだ!?
すっごい気持ち悪いっ!!
「お~い、大丈夫かい?」
「……う、うぅ」
「おえぇ……」
「ありゃりゃ。ヘラクには思いのほか効いたようだ……」
「コ、コイーンさん、一体何を……ってなんじゃこりゃああ!!」
周囲の風景が一変している。
さっきまでたしかに学院の前にいたはずなのにっ!
「――ようこそ。王立学院へ!」
◇◆◇◆◇
「いやぁ~、驚かせて悪かったね」
落ち着いたところでコイーンさんの先導についていく僕たち。
しかし、一体全体どういうことなのかさっぱりわからない。
「ほら、見てごらん。あの奥の方に小さく見えるのがさっきまで見ていた学院だよ」
「えっ!? 嘘……。あんなに小さい」
コイーンさんが指さした先にはたしかに先程まで目の前にあった建物が見える。
だが、それは小さかった。
――いや、小さく見えた。
それは単純に距離が開いたからというのもあるが、それ以上にその背後に見える建物が大きすぎるからだ。
「おいおい……。どうなってんだ?」
気持ちはわかるよヘラク。僕も同じ気持ちだ。
「驚いただろう? この学院にはあるギフトがかけられているのさ」
「……ギフト?」
その馴染み深いはずの言葉が、今は疑問へと誘うワードになっている。
「そう。その名も『圧縮』。効果は文字通りの空間を圧縮する力だよ」
……いや、ドヤ顔で言われてもピンときません。
「ん~難し過ぎてわからん!」
(おおっ! お前のそういうところは美点だよ!)
心の内で喝采しつつ、僕もわからないという表情を作ってコイーンさんを見つめる。
「……ん~、説明は難しいな」
ただ、先程までと違いコイーンさんは渋い顔だった。
「そもそもギフトは使用者にしか正確な効果がわからないっていうのもあるけど、僕は部外者で門外漢だから……」
どうしたものか……そんな雰囲気が漂い始めた時、彼を救う声がかけられた。
「――ようこそ王立学院へ。歓迎しますよ」
声をかけて来たのは女性だった。
眼鏡をかけていて、母さんほどではないが、スタイルもいい。
歳はコイーンさんと同じくらいかな?
「ルリ!? どうして君がここに?」
驚いたどうやらコイーンさんの知り合いだったようだ。
「お知り合いですか?」
「……ああ。僕の婚約者だ」
「えええええええええっ!?」
おっどろいたー。
ただの知り合いじゃなくて、婚約者だって!
「……婚約者? 一体何じゃそりゃ?」
「ちょっ、ヘラク知らないのか!?」
嘘だろっ! 信じられないよ!!
「当たり前だろ? だって、ウチの村にはいなかったし」
「いや、僕の村にもいなかったけど……」
お互い田舎だからなっ!
「……はぁ。いいかい? 婚約者っていうのは、将来結婚する相手のことだよ」
「あぁ、つまり許婚とかみたいなもんか……」
うわっ、ヘラクのくせに頭が良さそうな回答をっ!?
だ、だけど、甘いようだね。その程度の認識だとは……。
「やれやれ。ヘラク、そうじゃないよ」
しょうがない親切な僕が間違いを正してあげることにしよう。
「婚約者っていうのは誰かに取ったり、取られたり。さらには浮気や愛人を作っては刺したり、刺されたり。色々あって死ぬことが多い間柄のことだよっ!!」
ふふん前世で培った僕の知識を思い知るがいい!
よくこんな話がテレビから流れて来てたからね。僕にはこの程度の回答朝飯前だよ。
「「いや、違う(います)から!!」」
(……あっれ~?)
なにやら慌てた様子のコイーンさんとその婚約者さんに否定されてしまった。
おっかしいなぁ~僕のテレビの情報が間違っているとは思えないんだけど……。
◇◆◇◆◇
「いや、違うから!!」
僕はリムニル君の言葉を大慌てで否定する。
彼の今までの行動や態度から利発な子だと思っていたのに、まさかこんなことを言いだすなんて……!
近くでは同じように否定の声を上げたルリがいる。
彼女は箱入りの令嬢らしく、頬を染めている。
やっぱり、彼の言い方が恥ずかしかったのか……それとももしかして僕がそういうことをしていると想像されたんじゃないだろうね!?
だとしたら大変だよ!
「リ、リムニル君っ! 一体どこでそんな変な知識を身に付けたんだいっ?」
これは即座に否定して無実を証明しなくては!
「えっ!? え、えぇっと……ほ、本とか?」
「……リムニル君。嘘はやめるんだ」
君、そんなにわかりやすい子じゃなかっただろう!?
目を逸らさないでくれっ!
まるで僕がそんなことを言っていたかのように取られかねない!!
「……コイーンさん」
ほらあああ!
見ろ、彼女の悲しそうな目をっ!
「頼むよリムニル君! よく思い出してくれぇええええ!!」
こうなったら、無実を証明するために僕は断固として戦う覚悟を決めたよっ!
仕事の都合上紹介された婚約者とはいえ、僕は彼女を愛しているんだ! 失いたくなんてないっ!
それから僕は必死で彼から情報を聞き出そうとし、逆にルリから疑惑を向けられることになるのだがそんなことには気付かなかった。
そして、リムニル君も何故か今回に限っては口を固く閉ざして教えてくれなかったのでしばらくの間、婚約者がありながら浮気をしているのではという目で見られることになるのだった。
それもこれも地方勤務になったせいだ!
初めはちょっとからかうだけのつもりだったのに、余計なことをして説明に手間取っているからこんなことになるのだ。
僕は余計なことをするのはやめようとこの日、心に誓った。
今回はちょっとおとぼけリムニル君でした。
元ぶたさん貯金箱の彼の知識は結構偏ってます。今までは自分の得意分野だったのでそれが見えてこなかっただけですというのが今回は言いたかったのです。
あと、コイーンさんの婚約者は愛称が「ルリ」であって前書きのとおり正式な名前ではありません。次回にはコイーンさんから紹介されるのでお待ちください。 ブヒッ!




