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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
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004  時間は有限


 明は常に孤独を抱えていた。幼少の頃から玖雅家の長男として生まれてきた彼には特別な才能など無かった。むしろ弟達の方が優秀だったので世間からの疎外感から逃れる日は来なかった。なんなら今もそうである。こうして異世界に迷い込んでしまった自分は世界から隔離されているようだ。結局はいくら名声と大金を得ようとも、こうした形で異世界に飛ばされる可能性もあるのだから人生何があるか分からない。普通、異世界に転移なり転生する時には人生の一発逆転を狙った者ばかりだ。ところが今回、明は人として成功した後に異世界へと転移してしまった。既に元いた世界では無双の限りを尽くし、最強の祓魔師エクソシストとして君臨していた彼がだ。しかし、明はこの状況にも希望の活路を見出していた。まだ元いた世界に戻るチャンスはあるので、今は目の前の現状を打破していくだけである。


 こうして明とエレナは現村長の元へと歩み寄っていた。ここに到達するまでに幾度となくディープストーカーズの連中に襲われてきたが、全て返り討ちにしてきた。全員が口を揃えて『どんな魔法を使ってやがる!』と言ってきた。しかしそれは検討違いである。魔法を打ち消す魔法などありはしない。嫌、そもそも魔法が本当に存在しているのか誰も証明できない。だからこそ明には魔法は効かないのだ。魔法の存在自体に疑問を抱くようになってから明は魔法によるダメージを一切受け付けなくなった。だから人間は気持ち次第だと言いたい。気持ち一つで困難な状況も打破出来るのだと。


 そして目の前にいる男は、明の考え方には賛同しない雰囲気を漂わせていた。如何にも宗教をやっているようなマントを被っている彼は、麻薬と思しき煙を鼻から吸い込んでいる。闘争本能剥き出しの明を目の前にしてこの余裕な態度。強者の素質は十分にあったので、どうやら彼がこの村の新しい村長のようだ。それを証拠に、エレナは今まで以上に体を震わせていた。本当はこの場所に連れて来たくは無かったが、どうしても目の前の男が村長である証拠が欲しかった。


「こいつだ……こいつが私の両親を殺した張本人だ」


 彼女は震えた声を出していた。よっぽど怖い目にあったのだろう。なので明はエレナに離れるように伝えていた。既にこの村は制圧しているも同然だから、何処に隠れようが心配は無い。後は目の前の男に裁きを下すだけだった。


「成程。お前が悪の手先か」

「悪の手先だと? それは笑える冗談だな。俺は自分自身が悪だと思ったのは一度たりともないさ。本当に悪なのは身勝手な常識を作りだした先人達じゃねえか? だからぶっ壊してやりたいのよ。規則って奴を」

「そこらにいた部下は全て片づけた。残っているのはお前だけだぞ。さあ罪を償って貰おう」


 無抵抗の人間を虐殺して、村を支配した罪は赦しがたい。なので明は最初から全力で行くつもりだった。こういう悪徳な人間に、貴重な時間を掛けるのも惜しい。なので喋り終わったと同時に、拳を前に突き出していた。



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