003 いざ村へ
襲いかかってくる火の粉を全て打ち倒すのが明の流儀だ。ようするに売られた喧嘩は買うのだ。明はエレナに連れられて目的の村へと来ていた。そこに立ち塞がっていたのが件のディープ・ストーカーズという連中だ。全身を黒い服に身を包んで、如何にも悪の組織ですとアピールをしているようだった。さすがの明と言えど、無駄な戦闘行為は避けたかったので温情に話しを進めようとしていた。恐らく無意味に終わる可能性が高い。しかしそれでもチャレンジするのが必要だった。村に入るための入り口に立っているのは二人。確かに尋常ならざる気配をしている。これではエレナがコテンパンにされるのも容易に想像できた。
「そこの兄ちゃん。ちょっとこの村のボスに用があるんだけど、通してもらえないかな?」
そう言うと、門番の二人は怪訝な表情を浮かべていた。どう見ても不機嫌そうで会話が通じそうでは無い。とっとと道を通せと本心では言いたかったが、ここは我慢する必要があった。なるべく年頃の女性の前で血を見せるのは避けたいからだ。無意味な戦闘行為は人によって精神を悪くする可能性がある。それを知っているから、戦いはなるべく避けたかった。しかし目の前の二人は杖を持って近づき、明の額にピタリと杖をつけてきたではないか。まるで銃口を突きつけられたような感覚である。というか、この世界では中の代わりが杖なのだろう。明は咄嗟にそう判断していた。
「何言ってんだてめえ。この村を通るために必要なのは金だぜ。ベラベラ喋る前に通行料を払ってもらおうか」
「生憎だが金は持っていない」
「だったら消えろよ。この世界からな」
「ああそうだな。出来ればそうしたいところだ。でも出来ないから困ってるのさ」
胸を張って答えた。本心でそう思っているからだ。しかし、目の前の二人に明の言い分が伝わる筈も無く、杖の先端部分が光っていた。森林破壊が着実に進んでいる明の頭皮に光を照らされるのは屈辱と同じだった。
「だったらオレ達が引導を渡してやるぜ」
その瞬間、杖は一段と光を増したが結局何も起こらなかった。見かけ倒しにも程があるので明は思わず溜め息をついていた。門番の二人を見ると、先程のエレナと同じように困惑している様子だ。今の状況を彼らに説明しても良かったが、どうせいつもと同じ答えが返ってくるだけだと判断して、作戦を強行突破に変更していた。彼らの杖を両手で掴んだと思うと、先端部分を力強く握り潰す。木の破片がそこら中に拡散していて、後ろにいるエレナにも飛び散りそうな勢いだ。
「話が通じないのなら。拳で語り合うしかないようだ」
「て、てめえ。どんな魔法を使いやがった!」
これまたありきたりな反応である。此の世で明が最も嫌うのはテンプレの回答だったので、ますます闘争心は高まっていく。
「君のような下っ端風情には説明しない」
明は門番二人の頭を掴んだと思うと、力を込めて思いっきり頭と頭をぶつけ合わせた。ガツンという鈍い音が響き渡り、これにより門番は頭上に星を浮かべてピヨピヨと気絶していた。何も魔法など使わなくても戦いには勝てるのだ。
「す、凄い。一撃で仕留めるなんて」
物陰に隠れているエレナが飛び出してきた。しかし明は称賛には慣れているので彼女の言葉には応じずに堂々と村に入っていた。この後はエレナに道案内をしてもらう予定である。そもそも明はこの村どころかこの世界そのものを理解していないので、何の準備も無く進むのは危険に満ち溢れている。そんな目に見えた危険を犯す程の無知にはなりたくもないとトコトン願う。
「褒め言葉はいいから。ひとまずこの村を案内してくれ」
こうして、気絶している門番に蹴りを入れているエレナを手招きしていた。彼女はどうも可愛らしい見た目とは違って心の中に獣を蓄えているようだ。それが悪いとは言わないが、せめて女性らしい気品な態度をしてもらいたい。




