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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
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002  質疑応答


 山賊の少女と出会った明は彼女の詳しい生い立ちをしるためにも質問を投げかけていた。どんな時にも相手を知るために必要なのは質問であると知っているからだ。基本的に会話は相手に疑問をぶつけて始まるパターンが多い。特に初対面の相手となると質問が無ければ話しにならない。それにより、明は面接官になったように疑問をぶつけていた。まずは彼女の具体的なプロフィールを聞く必要があったので、明は口を開いて質問攻めを行っていた。


「まずは君の名前からだ。教えてもらおうか」

「私はエレナ」

「ではエレナよ。君は何処から来たのかな?」

「ここからすぐ近くの……村です。さっきも言ったけど、悪の手先に支配されて戻れなくなっちゃって」


 彼女の言い分は正しかった。明には元々、人の善悪を見極められる才能があるので彼女はどう見ても嘘をついているようには思えなかった。それに悪の手先が何者かは知らないが、悪と聞くと黙っていられないのが明の性分である。だから向こう側の世界では悪を退治する職業に就いていたのだが、それが理由となって異世界へと迷い込んでしまった。皮肉な話しである。しかし今はどうだっていい。大事なのは目の前で起きた現象だと心に誓って今まで生きてきた。だからこそ彼女には質疑応答を続けなければならない。


「それならば、君が言っている悪の手先とは何者だ?」

「おじさん知らないの? この世界を掌握している人達だよ」

「俺はちょっと記憶が曖昧でな。素直に質問に答えてくれないか」


 さすがに『異世界からやってきた』とは口が裂けても言えなかったので、記憶喪失のフリをしていた。もしも正直に言ってしまえば余計な疑惑を持たれて彼女を案内人にさせる計画が水の泡となってしまうかもしれない。それを思っていると、どうしても真実を言う訳にはいかなかった。嘘をつくのはとても胸が苦しいが、この場合は仕方が無かった。なので明は再度問うていた。


「……ディープ・ストーカーズの連中だよ。あいつら見た事も無い魔法を使ってこの世界を自分達の物にしたんだ。あんな横暴は許せない」


 声を震わせて怒りをあらわにしていた。確かに両親を悪の組織に殺されたのだから怒りを感じても当然だろう。だが、怒ったところで何も解決しないのは目に見えている。だからこそ、本当に重要なのは悪を滅するために行動する事だ。明は正義感だけは幼少の頃から人一倍強かったので、自分を常に鍛えていた。それが悪を倒すための行動である。ところがエレナは強い意志を持っているが、何もしていないようだ。内なる心に怒りを溜めこんでしまえば自然とストレスを感じてしまう。なので気分を晴らすために何かをしなければならない。それが彼女にとっての山賊行為だったのだろう。明はそう判断しながら最後の質問を投げかけようとしていた。この質問に納得する答えが返ってくれば、彼女を救済するつもりだった。明は深く息を吸い込んで、今まで以上に低くゆっくりした声で問うた。


「それでは次で質問はラストだ。これを答えられれば君の安全を約束しよう」

「わ、分かった。質問に答えるから少し息を整えさせてよ。あたし喘息持ちなんだよね」


 だが、明は間髪入れずに質問を投げかけていた。会話には必ず間が存在しているので、途中でワンクッションを入れるかどうかは自分が決める。そうしないと相手のペースに持っていかれる可能性があるからだ。


「最後に、君の人生哲学を教えてくれ」


 明は凛とした声で問うていた。



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