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冷やしクッキーと金型 ─ すれ違いの続き

 私は教室を出て、階段を降り、ロッカーで靴を履き替え、校舎と体育館を繋げる渡り廊下を突っ切り、学校の門を飛び出していた。


もしかしたら、学校のどこかにいるのかもしれないけど、1日目から女子トイレでシクシク泣いていたり、封鎖されてる屋上に登って黄昏ているようなことはしない、と思う。


だから、最初に出会った公園。

河川敷の横にある公園へと自然と走り出していた。



 ゼェゼェ・・・

朝昼で2回もこの公園に来ることになるとは思わなかった。公園の入り口の前で足を止めて公園を見渡す。


いるとしたら、富士山の遊具か?

左奥にある富士山の遊具を見てみるけど、しおりは・・・いない。


「やっぱりそう簡単には見つからないか〜〜」

大きなため息がつい出てしまう。

家にでも帰ったのかな。

それだったら明日学校に来た時に謝ろ・・・う?


入り口へ身体を向けようとした時。

公園の奥にあるブランコに見慣れた制服と印象的な髪が見えた。


あの特徴的な髪は間違いなくしおりだ。

しおりは私から見て同じ方向を見てブランコに乗っている。顔は確認出来ないけど、多分しおりだ。


教室にいた時は鮎饅頭のようにピシャリとした背筋だったのに、ブランコに乗ってるしおりの背中はとても小さく見えた。


なんでそっち見てブランコに乗ってるんだろう・・・。


私はゆっくりブランコに近づいて「しおり・・・?」とその小さな背中に声をかけた。


「私のことはほっといてくれませんこと!」


有無を言わさぬ拒絶に、一瞬ビクッと身体が震える。それでも、久々に会えたしおりと喧嘩をするのは嫌だから。クリームが切れそうな絞り袋を絞り出すように何とか言葉を絞り出す。


「泣かしちゃった理由は分からないけど、今日は渡したいものが、返したいものがあったんだよ」

「また、崩れたリストリエのお菓子ですか?」


しおりは顔も合わせず嫌味たっぷりに言い放ってくる。違う。アレは本当に私のミスで!


「崩れたお菓子を渡しちゃったのはごめん!」

本当に返したかったのはハートの金型。

ポケットにしまってあったヒンヤリとした金属質のハートの金型を取り出して、しおりの少し冷たい手に包み込む。


「だからお菓子はもう」

少し引き攣った声をしおりが呟いた。


━刹那


触り心地に覚えがあるものなのか。

見なくても分かったように「あ・・・」と小さく呟いた。


「これ、どこで見つけてくださったの?」


腫れている顔をようやくこちらに向けた。


「富士山の麓で今日の朝見つけたんだよ」

「私、昨日からこれをずっと探していて」


さっきまで泣いて怒っていた手前、バツが悪そうに感謝の言葉を投げられた。


「家にはなくて。帰った頃には遅かったから、家の者から外出を控えるようにと言われていて。気が気じゃなくて」


ポツポツと、そしてまたちょっとうるうるとし始めるしおり。

わたわたする私。


・・・そんなに金型は大切なものだったんだ。

返せてよかったと一安心する私。


「じゃ、じゃあ、間違えて渡しちゃった事は許してくれる?」


なんで泣いてたかは分からないけど。

妹を冷やしクッキーで買収した時みたいに。

我ながら打算的一手。


また、昔みたいに遊びたいしさ。


そしたらしおりはすっかり怒り?が収まったのか

「クッキーの型を見つけてくださった事には感謝こそしていますが、リストリエの溶けたクッキーを渡した事は話が別です」と言い放ってきた!


えーーーー。

まさかの許されず。


じゃあどうすれば良いんだと呆然としている私に、しおりは続けてこう言った。


「今度の土曜日、私の家においでなさい」


私が怒らせた理由も、最初に会った時に逃げられた理由も聞けぬまま、何故か家に誘われた。


もちろん、怒らせた私には選択肢などなく、土曜日にしおりと遊ぶ事になった。

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