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18歳までを綴る

 私はできちゃった結婚で生まれた。

 まあよくあることだ。

 男と女が出会いすぐ子供ができ結婚なんてものは。

 ただ、後先考えず私を産みやがったからこそ起きる茨の道。

 私の26年間の人生を書いていく。


 これから起き

 る出来事は全てノンフィクション。

 ※プライバシーに関わることのみフィクションとなります。



  小さい頃のことはあまりおぼえていないが、私には2歳下の弟がいた。

 弟が可愛くて守りたくていつも一緒だったことだけは覚えている。


 お父さんは実家の自営業をお父さんのお兄さんと二人でしていた。

 お母さんは、私と弟の面倒を見ていた。

 この頃のお父さんの工場は羽振りが良く、家には沢山のおもちゃがあった。


  だが、結婚前からろくに仕事をせずギャンブルや酒に溺れていたお父さんは段々仕事にいかなくなっていき、ついに仕事を辞めた。

 お母さんは、愛想をつかし、私と弟を連れて団地をでたことがあったそうだ。


 すぐにお父さんがお母さんの実家にきて働きますとおじいちゃんに宣言したらしい。

 おじいちゃんもよく許したなあと今更ながら思う。


 それからはお母さんの実家の近くの借家をおじいちゃんが借りてくれた。

 お父さんも新しい仕事を見つけて働きはじめた。


  そこにしばらく住み、お母さんの実家によくお世話になっていた。

 野菜を貰ったり、灯油を入れてくれたり、しまいにはお父さんのために礼服を二着プレゼントしたりしてくれた。

 本当にいいおじいちゃんだった。

 そんなおじいちゃんもその後すぐに病気で亡くなった。


 しかし、お父さんはお礼も言わず文句ばかり言っていたらしい。

 そんな物よりもっと金くれ。仕事場まで遠いから交通費出せ。と言っていたそうな。


 困ったお母さんは、結婚退社した仕事のツテで新しい会社に入り、お母さんの実家に私と弟を預けて少しづつ仕事をしていた。


 それからは、お父さんの会社の社長さんの勧めもあって、お父さんの仕事場の近くに家を建てることになった。


 お母さんは、家を建てればもっと仕事を頑張ってくれるはず。と思い承諾したらしい。

 私が5歳。弟が3歳の時の出来事だ。


  田舎の村に引っ越すことになった。

 お金がないので、軽トラを知人に借りて引っ越しをした。


 家を建てる頭金もなく、お父さんの会社の社長さんが保証人になってくれたらしい。


 私と弟は幼稚園に通い、たまにお母さんが仕事に行くときは親戚や知人の家に預けられた。


 私が小学二年生になったころ、お父さんが仕事を辞めてきた。それからはギャンブルとお酒に溺れていた。

 お母さんは仕事を掛け持ちして働きはじめてほとんど家にいなくなった。

 この頃から、誕生日やクリスマスプレゼントは貰ったことはない。

 お年玉も全てお母さんに預けられた。


 お父さんはお母さんから貰った食費などの生活費を全てギャンブルとお酒に使ってしまい、私と弟はいつもお腹を空かせていた。

 村には、親切な方が沢山いたので、たまにご飯をご馳走になったり、お父さんがギャンブルで買った時のお小遣いを食費に当てていた。


 その頃はゲーム機やリカちゃん人形が流行っていた。どうしても欲しいと思った私と弟はいらなくなったという友人からいただいたりしていた。


 とにかくお腹が空いていたので、給食はたらふく食べた。たまに内緒で持って帰ったりもした。


 私も弟も青白いかなりガリガリの身体になっていた。

 とにかく二人で協力して生きていた。


 こんな出来事もあった。

 お父さんが日曜日にどこかに連れて行ってくれると言ってくれた日があった。

 私と弟はご馳走を期待して着いていった。行き先はパチンコ屋だった。


 私と弟は締め切った車で待ってろと言われた。その時は真夏だった。

 最初は待っていて二人で遊んでいたが、どんどん弟の様子がおかしくなっていった。

 ぐったりしだした弟を見て、私はお父さんを探しにいくことにした。


 中々見つからず、パチンコ屋の店員さんに一緒に探して貰った。

 お父さんは飲み物を弟に飲ませて一言。


 勝っていたのに邪魔をするな。

 やっぱり連れてくんじゃなかった。


 と言いました。

 私はその頃、お父さんやお母さんが言うことが正しいことだと思っていたので、ごめんなさいと謝ったのを覚えている。


  小学生のころは、私も弟も家が貧乏なんだなっていう意識しかなくて、お父さんが仕事をしてないことも知らなかったし、両親のいうことは全て信じていた。


 お父さんは、毎日出掛けていた。

 お母さんが家に帰ってくると家事もきちんとしろと叱っているのをよく見た。

 お母さんは、私によく八つ当たりしていた。

 あなたが家事をしないから、お母さんが叱られるのよ。もっと家のことをやって頂戴。


 や、仕事場であった出来事などを永遠と話していた。


 だから、私が話したいことは何も話せなかった。子供なりの悩みもあったから聞いて欲しかったが、途中で諦めた。

 どんどん自分の中に溜め込むようになっていった。


 お父さんはよくこう言っていた。

 お母さんは結婚前借金もしていたし、浮気相手もいた。俺が借金を返済して、浮気相手と別れさせたんだ。


 ここは俺の家だから、嫌なら出ていけよ。

 それがお父さんの口癖だった。


 小学校低学年のころ、お父さんのお兄さんが亡くなった。

 当時、理由はわからなかったが首吊りによる自殺だったそうだ。

 自営業がうまく行かなくなったことを苦にしての自殺だったそうだ。

 最初に発見したのはいとこだった。

 お店の中での自殺で、遺書も見つかったそうだ。

 残った家族は、病気のおじいちゃん、認知症のおばあちゃん、そしてお兄さんの嫁さんの梅おばちゃんと、まだ中学生くらいのいとこだった。


 お父さんは、梅おばちゃんにお前のせいで兄貴は自殺したんだ、とひどく責め立て、喪主は俺がする。と言い張ったそうだ。

 そのことでお父さんは親戚と揉め、絶縁状態となった。


 梅おばちゃんといとこは懸命に家事や介護をした。

 お母さんは何度も謝罪し、梅おばちゃんに会いに行っていた。

 いとこは介護を手伝わない私たちを何度も責めるようになった。そのたびに頭を下げるお母さんを見るのがつらかった。


 お父さんにはお姉さんがいたが、カルト宗教にはまり、おばあちゃんにお金をせびる時以外は来なかったそうだ。

 同じくお父さんもおばあちゃんにお金をもらいに行っていたらしい。




  私は小学生の頃から近所のみかちゃんと仲が良かった。

 みかちゃんは真面目で何をやっても優秀な才色兼備な女の子だった。

 みかちゃんはお話をするのが大好きで、よく私に恋の相談をしていた。

 好きな男の子ひろくんと両思いでお付き合いをはじめたらしい。小学校高学年の出来事だった。

 私は好きな男の子ができなかったので、

 大人だなあと当時は思っていた。


 ある時みかちゃんがこう言った。


 あなたはみかの物だから、他の子と仲良くしないで。他の子の前で笑顔でいるの見てたらムカつく。あの子の方が好きなの?みかだけと仲良くして。


 私はその時のみかちゃんの怒り方が怖くて他に友だちを作ることはなかった。

  それから中学校二年生までみかちゃん以外のお友達は作れなかった。

 みかちゃんがいないときはいつも一人で時間を潰して過ごした。


 中学校のころ、初潮が来た。お母さんは仕事でめったに家にいることはなかったので、学校の保健室で生理用品を貰い使っていた。

 生理の周期はバラバラでいつ来るか分からないのも怖かった。よく下着を汚してしまい。

 汚れた下着を家で隠れて洗っていた。

 ある日、洗面所で汚れた下着を洗っていたら、洗面所の扉が開いた。そこにいたのはお父さんだった。お母さんより先にお父さんに生理がバレてしまったことが恥ずかしかった。

 私を見たお父さんはこう言った。

 そんな汚物捨てろ。おまえもお母さんみたいな浮気女になるんだぞ。この汚物女。


 私はその時汚物の意味がわからなかったが、凄く悲しかった。弟にも言えるはずもなく一人で泣いた。


 このころから一人で泣くことが増えた。

 お母さんの仕事はどんどん忙しさを増し家に帰ってくることもほとんどなくなり、お父さんはいつもパチンコに出掛けてお金を無くして帰ってくる。

 私は自炊をするようになり、弟となんとか餓えを凌げた。でも中学校になればさすがにこの家はおかしいということには気づく。


 とにかく部屋に籠もって泣いた。

 そして、たまに帰ってきたお母さんの仕事の話を聞いたり家事のことで叱られたりするたびにうでを引っ掻く癖が付いた。


 二の腕は猫が引っ掻いたような跡でいっぱいだった。私は常に長袖を着てごまかしていた。


 中学校二年生のころ、ようやく紗耶香という、みかちゃん以外の友達ができた。とても気の強い自分というものを持っている子だった。

 隣のクラスにいた紗耶香は気の強さから中々深い友達を作れない様子だった。

 ある時紗耶香から話しかけられた。

 あんた何でいつも一人なの?あたしと友達になろうよ。と言われた。

 私はみかちゃんのことが頭によぎったが、みかちゃんとは登下校以外話すこともなくなり、みかちゃんは他の友達といることがほとんどだったので紗耶香と友達になった。


 紗耶香は私に沢山の世界を教えてくれる子だった。

 紗耶香は携帯電話を持っていたので、他の中学校の子達と連絡を取り合っていた。

 そして、私も仲間に入れてもらい他の中学校の子達と遊ぶことも増えた。

 紗耶香に県で一番のショッピングモールにも連れて行ってもらった。

 私は行ったことがなかったので、新しい世界を知りとても楽しかった。

 みるみる私と紗耶香は仲が良くなっていった。

 それに対してみかちゃんが何かをいうことはなかった。

 多分気の強い紗耶香の反撃が怖くて、紗耶香と仲良くしないでとは言えなかったんだと思う。


 紗耶香は私の家の事情を知らなかった。

 もちろん他の誰にも伝えてないけれど、紗耶香にも言えなかった。


 だから、紗耶香にどうしてお金ないの?遊べないじゃん。と言われるたび苦しかった。

 たまに食費を削って紗耶香と出掛けるのが精一杯だった。

 ショッピングモールでも服は買えなかった。

 紗耶香に要らない服ないかな?と聞いて紗耶香から洋服を貰ってオシャレを楽しんだ。


 私の中学校生活は遊びだけではなく、とにかく勉学に励んでいた。部活は一番お金の掛からない美術部に入って、部活中も勉強をしていた。

 家でも家事が終われば勉強をして過ごした。

 おかげで成績はかなり優秀だった。


 担任の先生にはかなりレベルの高い高校でも受かると言われていた。私は英語が特に好きで海外で働きたいという夢があったので、英文科のある学校に進学したいと思いさらに勉強をした。


 もちろん恋もした。中学校三年生のときだった。可愛い女の子にも、大人しい女の子にも態度が全く変わらず接している彼を見て恋に落ちた。


 他の男の子は可愛い女の子にばかり話しかけたり優しくしたりしていて、それが凄く嫌だったから。


 紗耶香はとても活発で可愛い顔をしていたので、しょっちゅう告白されたりデートに誘われたりしていた。

 みかちゃんも相変わらずひろくんとのお付き合いは続いていて、幸せそうだった。


 私の顔は正直普通だと思う。その頃はブスだブスだと自分を責めて鏡を見るのも嫌だった。

 モテモテで美人な友達と自分を比べ、自分の容姿がコンプレックスとなっていっていた。 


 そのため、誰に対しても区別しない彼のことがどんどん好きになっていった。彼とは時々話したり漫画を借りたりする程度で、とても告白なんてできなかった。

 それが私の初恋だった。


 中学校三年生の秋、進路を決める時期がきた。

 三者面談などもあり、忙しいお母さんにもなんとか休みをとってもらった。

 三者面談の前日お母さんと初めて進路について話をした。


 お母さんは、あなたを高校に行かせるのは難しいかもしれない。行けても家から一番近い交通費の掛からない高校しかダメと言われた。


 家から一番近い高校は偏差値が県で一番低くて、ヤンチャな人がたくさんいる高校だと噂で聞いていた。


 頭の中で色んな感情が駆け巡った。

 本当に私の家は貧乏なんだと改めて実感したこと。私の夢が壊れてしまうこと。

 人生で最初の大きな挫折だった。

 その日はうでが引きちぎれるくらい引っ掻いて泣いた。一睡もできなかった。


 私は結局、家から一番近い高校に通うことになった。試験結果は見に行かなかった。

 名前さえ書けば受かる高校と言われていたので落ちることはないと思っていた。

 案の定受かっていたらしい。


 制服の採寸や学校からの説明会など、親と参加しないといけない行事はいけなかった。

 お母さんの仕事が忙しくて、入学ギリギリに制服を買った。

 ちなみにみかちゃんも紗耶香もかなりレベルの高い高校にそれぞれ進学していた。

 私は紗耶香に中学校生活の最後の頃、私と同じ高校に通うことになる友達を紹介してもらった。


 紗耶香の携帯電話からやり取りをして中学校を卒業してから、その子と遊んだりした。

 とてもほんわかした雰囲気の優しい子だった。

 名前も風花。

 名前通りの性格だった。


 紗耶香は友達を作るのが下手な私が安心して高校に通えるように、考えてくれてたんだなあと今更ながら思う。


 風花とは高校でクラスが離れてしまい、私はクラスに友達を作ることができなかった。

 風花は優しい性格なので、摩耶という親友がすぐにできていて、うらましかった。摩耶もほんわかしていて優しい子だった。

 風花も摩耶も見た目はとてもギャル系だったので三人でいると私はかなり浮いていた笑

 その頃から、二人にメイクなどを教えてもらい化粧道具のお下がりをもらい、さらにオシャレが楽しくなった。


 私は高校に入ってからも一人で行動し一人で勉強をしていた。クラスのほとんどがドラマに出てくるようなヤンキーやギャル系、その残りが不登校だったりなにか訳ありの大人しいタイプだった。


 授業中もほとんどの生徒が、携帯電話で誰かと電話していたり、席を移動していたり、お菓子を食べていたりとムチャクチャだった。


 基本的に授業は私と先生が1対1でするようになっていたので勉強は捗った。


 高校生になってから、もう勉強を頑張るのをやめようかなと思ったりもした。いっそ学校をやめて働いた方が家計が助かるのでは?とも思ったりもした。


 でも、学ぶことがとにかく好きだった私は、大学は諦めるけど高校までは甘えよう。学校にいかせてもらって勉強させて貰っていることが幸せだと思い。相変わらず成績は上位をキープした。


 この頃はもう生理は止まってしまっていた。

 さらに、精神的なものなのか何を食べても下痢をしたり、吐いたりして学校を早退することもしばしばあった。


 お母さんはサボリ病と私をからかい、特に怒ったりされはしなかった。


 私はクラスで私の他に一人でいる女の子を見つけた。とても美人で清楚系の子だった。

 名前は玲奈。

 私は紗耶香が話しかけてくれた時のことを思い出して、勇気をだして玲奈に話しかけてみることにした。


 これが私の人生を更に転落させるものだとは思いもしなかった。


 玲奈は女友達はいなかったが、男友達はたくさんいた。紗耶香の彼氏も同じ高校で同じクラスだったので、玲奈と紗耶香の彼氏の拓也が話しているのもよく見た。


 玲奈に話しかけると、玲奈は甘ったるい声で私に甘えてくれた。

 それが原因で女の子に嫌われちゃうのと玲奈は泣いていた。

 私は玲奈に友達を作ってあげようと思い、風花などがいるグループに玲奈を招き入れた。

 みんな優しい子ばっかりだったので、玲奈はすぐに馴染んだ。

 私は玲奈に紹介してもらい、同じファミレスでアルバイトをはじめた。お給料は学校の昼食代に使い、残りはお母さんに渡していた。

 玲奈の家にもしょっちゅう泊まった。

 玲奈の母は32歳とかなり若い綺麗な人だった。

 気さくで、いつでも泊まりきてねといつも笑顔で言ってくれた。

 玲奈の父はなんと20代で、血のつながりのない父親らしいが、とても優しい人だった。

 玲奈には妹と弟がいて、弟はまだ2歳だった。

 一緒に遊ぶととても喜んでくれてとても嬉しかった。

 夕飯を玲奈の家でご馳走になったとき、普通のアットホームな家庭を初めて見た。

 ドラマに出てくるような幸せな家庭を見た私はとても感動したとともに、玲奈の家からどんどん離れられなくなっていった。




 高校一年生のころは、四六時中玲奈と過ごしたと思う。

 玲奈は拓也ととても仲が良かった。私は紗耶香のことが心配になり、二人の関係を聞いてみたことがある。

 玲奈は、普通の友達だよー。まあ冗談でH誘われたりしたけどね。

 そういえば拓也って中学生の頃、4人の女の子の処女奪ったって言ってたよー。紗耶香ちゃんとつき合ってる時も美優ちゃんって子とHしたっていってたよー。と言われた。

 私はショックで開いた口が塞がらなかった。

 紗耶香と拓也の交際は続いていた。

 しかも美優は紗耶香ととても仲が良かった。

 これを紗耶香に伝えるべきなのかと散々迷ったが、これは過去のことだから今更蒸し返して揉めることで紗耶香を傷つけてしまうと思い、紗耶香には黙っておくことにした。

 それから、私は色んな女の子に話し掛ける拓也と散々ケンカして口を聞かなくなった。



 玲奈は、色々な先輩と仲が良かったので、たくさん夜遊びもした。

 その頃から私はタバコを吸うようになった。

 人生初めて悪いことをしている気持ちになった。でも、夜遊びやタバコが私の唯一のストレス発散になっていった。

 その時間だけは、家族のことを忘れられたから。


 高校一年生の秋、好きな人ができた。

 アルバイト先の同じ年の男の子だった。

 名前は海。当時としてはとても変わった名前だったので第一印象から少し気になる存在だった。

 海はとにかく皆に優しくて、純粋な男の子だった。


 私のアルバイト先にリストカット癖のある先輩がいた。とても綺麗な人で仕事もでき、みんなに慕われている女性だった。


 海は、とにかくその人のリストカット癖を直そうと必死に相談に乗ったり、遊びに行ったりしていた。

 海はその先輩が好きなんだと思い込んでいた私は海の恋を応援しようと思い、恋心は胸に秘めていた。


 ある時、先輩が仕事の休憩中に私の前で、死んでやる!と叫びながら思いっきり手首をカッターで切った。ドクドクと赤いものが流れ出ていた。


 私は大きな声を出し、とにかく社員さんを呼びにいった。

 その時間は暇な時間帯だったので、社員さんがカッターを取り上げて、止血をし、病院へと連れて行った。

 その間パニック状態で泣いてばかりいた私の背中をさすり続けていてくれたのが海だった。


 私は海に先輩のところへ行かなくていいの?と聞いた。海は先輩は心配だけど、俺は君の方が心配だよ。と言ってくれた。


 それから、私と海は付き合うことになった。

 初めての彼氏だった。

 海はとても純粋で、一緒に歩いていてもお互いに照れてしまって手を繋ぐこともできなかった。



 そんな私がこの後、あんな目に遭うなんて思いもしなかった。



 それは、雪が降り積もる季節だった。

 私はいつも通り玲奈と先輩達のアパートに行くことになっていた。

 先輩は同じ高校の留年している先輩や、学校を辞めてしまった先輩や全く接点のない二十歳を超えた先輩などがいた。

 先輩達は同じアパートでルームシェアをしていた。


 私と玲奈は先輩に迎えに来てもらい雪がふる中、先輩たちのアパートに到着した。

 そして、いつも通りタバコを吸ったりお酒を飲んだりしながら楽しい時間を過ごしていた。

 一人の先輩がみんなから離れたところで何度も電話していた。私は気にならなかったが、玲奈は何度か様子をこっそり見に行ったらしい。

 電話の内容は?と聞くとわかんない。と玲奈は笑った。 


 それから二時間ほどたって夜中の3時を過ぎていた。私はお酒が強くいつもと変わらなかったが、不思議だと思ったのが、いつもベロベロに酔って寝てしまう玲奈がお酒に手を付けていなかったことだった。


 その時、ひとりの先輩が言った。

 今から男の子三人来るから、今日は二人共そこに泊まってくれる?今日これから友達何人か来るから寝るところないんだよねー。


 !!?


 私は男の人の来る集まりは初めてだったので、とても不安な気持ちになった。

 隣にいた玲奈が、わかりましたあー。大丈夫でーす。と笑顔で答えた。


 私はとても不安だったのと、海に申し訳ないと思い、辞めておこうよ。帰ろうよ。と玲奈にメールした。


 玲奈から、大丈夫だよ。今から来る男の先輩たちって女の先輩たちに逆らえないんだってー。

 一人の女の先輩の彼氏が、ヤクザなんだってー。


 てかさ、今日名前逆にして自己紹介しない?

 玲奈はあなたの名前名乗るから、あなたは玲奈の名前名乗って!


 という返信がきた。


 何度もメールでやり取りをしているうちに、男の先輩たちが車で迎えに来た。

 玲奈が私の手を引っ張るようにして、無理矢理車に乗った。


 女の先輩たちは玄関まで見送って部屋に戻っていった。


 玲奈は嬉しそうに男の先輩たちと話していた。

 玲奈が、自己紹介で私の名前を語ったので、私は玲奈と名乗った。


 すぐ、先輩のアパートに着いた。

 それからは一時間ほど、トランプをしたりゲームをしたりしていた。

 その頃には私の緊張も解けてきていた。

 海には明日言って謝ろう。そう思った。


 一人の男が私の名前を呼んだ。思わず返事しそうになったが、玲奈が、なんですかー?と先に返事した。

 そうか、名前が逆になってるんだった。


 コンビニに買い出しいこーぜ。とその後男は付け加えた。

 玲奈は行く行くーと答えた。


 私は玲奈が、いなくなってしまうのが怖くて玲奈に行かないでよーと言った。

 玲奈は大丈夫だよ!すぐ帰ってくるからね。

 と言いすぐさまコンビニに行ってしまった。


 玄関が閉まった瞬間、残った男二人が急に私に馬乗りになってきた。

 必死に抵抗したが、力ではかなわず何発も身体を殴られた。そのまま震えて固まってしまった私を男たちは何度も何度も蹴った。


 私はとにかく怖くて怖くてガタガタ震えていた。

 痛さより恐怖が勝り尿を漏らしてしまっていた。


 大声を出そうとする私の首を絞めて殺すぞと男は脅した。私は声もでなくなった。身体も動かなかった。


 男が私のズボンと下着を脱がしレイプされた。

 何度も何度もその行為は繰り返された。


 それをもうひとりの男が携帯電話で写していた。

 陰部のみを何度も撮られた。


 そのうち私は意識を失ってしまっていた。


 目が覚めると、隣に玲奈が眠っていた。

 玲奈の部屋だった。

 服も着ていた。

 私はなんださっきのは夢か。と思い起き上がろうとしたら体中に激痛が走った。

 腕を捲ってみると痣だらけだった。

 昨日の記憶が駆け巡って私は過呼吸になった。


 それに気づいて目が覚めた様子の玲奈が、一生懸命背中をさすってくれた。落ち着いた私は昨日は?と聞いた。

 玲奈は、大丈夫?コンビニから帰ってきたら三人で仲良く眠ってたけどなんかあった?

 と聞いてきた。


 私は玲奈に昨日のことは言いたくなかった。

 軽蔑されると思ったのと、海にバレたくもなかったから。


 昨日飲みすぎたからかな。と答えてその足で家に帰った。

 なんだか体が痛くて少しだるさがあった。


 家には弟しかいなかった。

 弟といつも通りの会話をした。

 冷静に会話できる自分に驚いた。

 その後、シャワーを浴びながら思いっきり泣いた。

 体中痣だらけだったせいか熱がでた。パンツとズボンは捨てた。弟に冷えピタを頼んで買ってきてもらいそのまま寝て過ごした。

 その日お母さんが帰ってきた。

 お母さんには相談しようと思った。

 冷静に考えると妊娠や病気を移されたりしていたらどうしようと心配になったのと、とても辛かった怖かった気持ちをとにかく伝えたかった。


 私が高校生になってから、お母さんは一階の居間で寝ていたのが、二階の私の部屋で寝るようになっていた。タバコを吸っているのもバレて、家事には注意してとだけ言われていた。


 部屋に入ってきたお母さんが、風邪ひいたんでしょ。ゆっくり寝なさいよ。

 と言った。


 私が次に言葉を発しようとしたら、お母さんに止められてお母さんの仕事の話を永遠と聞かされた。なんども間に入って自分の話をしようとしても遮られてしまい結局言えなかった。


 その後、玲奈は学校を休みがちになり、他校に友達を作って遊びに行くようになった。


 私がクラスでひとりでいるようになると、玲奈と中学校が一緒だった子が話し掛けてきた。


 玲奈と関わるの辞めなよ。学校来てない今がチャンスだよ。


 と言った。


 え?どうして?と聞くと


 玲奈は中学校の頃、友達や周りの女の子の彼氏を寝取るのが趣味で友達がいなくなっていったそう。経験人数も三桁超えているし、実際その子が仲良くしていたときも、彼氏を寝取られたあげくその子の前でキスを見せつけたりしたそうだった。


 私は混乱してしまったが、とにかく玲奈を信じようと思った。昼食は風花たちと食べていたし、寂しいこともあったが、とにかく玲奈が学校に来やすくなるようにメールを送ったりした。


 海との交際は続いていた。大きな秘密を残したまま手も繋げない恥ずかしさを残したまま。

 海は高校を卒業するまでHはしないと言っていた。責任を持てる年になってからきちんとしたいし、大切にしたい。と言っていた。

 そんな純粋な海に感動したとともに罪悪感もあった。


 玲奈はアルバイトにもこなくなった。心配した店長が玲奈の自宅に電話すると、玲奈のお母さんが、玲奈…行方が分からないんです。私も必死に探してるんです。と言っていたそう。


 私も心配になった。その時玲奈のお母さんから電話があった。


 要件は玲奈の失踪についてだった。私も何も分からなかったので、ただただ心配した。

 玲奈のお母さんは、また男作って男の家居座ってるんだと思うんだけどね。変な男に引っかかってないか心配。と言っていた。


 玲奈のお母さんは続けて衝撃的な一言を言った。


 息子を置いて遊びまわるなんて…


 私は耳を疑った。 


 息子ってどうゆうことですか?

 と聞くと


 玲奈の弟は玲奈が二年前に出産した子供だった

 ことを伝えられた。

 基本的には弟で通していて誰も知らないことだということも言っていた。


 私はますます玲奈が分からなくなった。

 どれが本当の玲奈?

 私と仲良くして妹のように甘えてくれた玲奈は本当の玲奈じゃないの?


 とにかく混乱した。

 それから玲奈は家には帰ってきたらしいが、学校には行かずアルバイトも辞めて遊び回っている様子だった。



 その頃は家庭の状況もどんどん酷くなっていった。お母さんはお父さんにお金を渡さなくなったことでお父さんが家にいることが増えた。

 お父さんはお酒を飲んでは暴れてお皿などを破壊したり、タバコを吸っては畳にねじ付けたりしていた。

 その後、お父さんの借金が発覚した。ギャンブルでの借金でとてもじゃないが返せる額ではなかった。


 高校生一年生の春休み。私はアルバイトに励みながらも、家にいた。

 もう、玲奈の家には泊まれなくなったので家に帰るしかなかった。

 弟は社交的で優しかったので友達がたくさんいた。部活をしたり、友達に誘われて遊びに行く弟。


 家には私とお父さんふたりきりになることが増えた。お父さん以外は一階にはほとんど行かなかった。

 恐る恐る様子を見ながら、トイレやキッチン、お風呂を使っていた。

 いつも通りトイレを使おうと一階に降りたところにお父さんがいた。

 顔を会わせたのは久しぶりで、何て言葉を発していいのか分からなかった。

 とにかくお父さんは酔っ払っている様子で、訳の分からないことを言いながらキッチンへと去っていった。

 私がトイレから出ると、お父さんは包丁を持っていた。

 私に向けられた包丁。 

 お父さんは死んでくれ。と怒鳴った。

 私は訳が分からず、なんで?なんで?と言いながらお父さんをなだめようとしていた。

 お父さんは一家心中だ。俺は終わった。と言い包丁片手に私に迫ってきた。

 私は必死に振り払った。

 追いかけるお父さんと泣きながら逃げる私。

 それがしばらく続き二人共息が上がった頃、弟が玄関を開けた。

 弟は私とお父さんの光景を見て一言


 殺すなら、家以外にしなよー。やっぱ一家心中は首吊りが一番だよっ。


 と冷静に笑った。


 お父さんは腰が抜けた様子で包丁を落とした。

 それをすぐさま弟は取り上げて、部屋に戻っていった。


 私もすぐに弟の部屋に行った。 

 なんで外に逃げないの?と弟に聞いた。

 弟いわくお父さんは脅すことで言うこと聞かせようとしてるだけだよ。 

 殺すことはできないよ。


 と普通に笑いながらゲームを始めた。

 私の腕には切り傷があった。自分では気づかなかったが抵抗している内についた傷のようだった。弟はバンドエイド貼って落ちつきなよ。

 といい漫画を置いていった。


 私はとにかく自分に落ち着け落ち着けと言い聞かせて自分の部屋で弟が置いていった漫画を読んだ。


 その後、私は眠ることができなくなった。

 それに伴い元々あった下痢や嘔吐の症状も激しさを増していった。


 お母さんに伝えようとしても、いつもの調子で言えなかった。弟もお母さんに伝えることはしなかった。


 私の体重はみるみる減っていき36キロまで落ちた。痩せていく私を見て海や風花たちは心配してくれた。アルバイト先のみんなもとても心配してくれた。しかし、両親は私の体の変化に一切気づかなかった。

 唯一弟が、食べ物をしょっちゅう買ってくるようになった。それが弟なりの心配の形だった。


 高校二年生にあがる頃、先輩たちは留年して学校を全員辞めることになっていた。

 先輩が私服で学校に来ていて、私に話し掛けてきた。

 私は、あの時の悪夢を思い出し、先輩たちとは関わらないように過ごしていた。


 先輩は、玲奈のことなんだけど…と切り出した。

 私は玲奈が心配だったので、話を聞く事にした。


 玲奈さー、冬の集まりの後の様子どうだった?

 泣いてた?落ち込んでた?

 と聞かれた。


 私は何かなんだか分からず、とりあえず玲奈はコンビニに行ってそのまま帰ってきたら私たちが寝てたと言ってました。起きない私をおんぶして玲奈のお父さんが玲奈の家まで連れて行ってくれたそうです。

 泣いたりはしてなかったですよ?何かありました?


 それを告げたあとの先輩の表情が一気に変わった。申告そうな顔になり、私に謝った。


 本当にごめん。まさかあなたが玲奈の代わりに報復を受けるなんて思いもしなかった。

 本当にごめん。後片付けはさせてもらうから、辛かったよね。


 と言いながらも先輩はなぜ、玲奈ではなく私が暴行されたのか分からないと言った様子だった。


 私もまだ状況が掴めず、混乱していた。


 玲奈と名前を交換していたんです。玲奈からそう言われたので…。と伝えると、先輩は少し考え込んでいた。


 玲奈、あたしの電話の内容聞いてないよね?


 私たちさ、玲奈に彼氏を寝取られた子数人いてさ、凄い玲奈にムカついてたんだよね。

 それで、仕返しに玲奈殴ってでもレイプして、画像をインターネットの掲示板に貼り付けろってあいつらに命令したの。


 私は、全てを理解した。

 電話している先輩の会話を聞いて自分の危機を私になすりつけたんだと。

 名前の交換もそのためだったんだと。


 先輩は、掲示板は消させるし、私たちなりに謝罪はさせてもらうから、ちょっと待っててと言い去っていった。


 その後、掲示板を見ると私の性器の画像は消されていた。それでも、誰かが見たんだと思うととても辛かった。


 先輩はその後、玲奈と私を間違えた男たちをボコボコにして、一人5万づつ巻き上げてきた。

 そして女の先輩たちから謝罪の手紙とプラス5万円が入っていた。


 私は、そのお金をすべて破って捨てた。

 今考えると貧乏な家のために使うべきだったんだと思う。

 でもその時は手紙を見る気力もなく、そんな理由のお金もいらなかった。


 男たちや女の先輩たちを恨むより、玲奈に裏切られたことが一番辛かった。

 はじめて人に対して怒りというものが芽生えた瞬間だった。


 高校二年生になったころ風花たちも玲奈も同じクラスになった。

 玲奈は少しづつ学校へ来るようになってきていた。

 心なしか玲奈は私を避けていた。

 私も玲奈を避けた。


 ただ私たちのグループに玲奈は居座り続けていた。

 玲奈はその時できた彼氏の自慢や、水商売をはじめて羽振りのいい話をとにかく私たちに嬉しそうに話していた。

 そして、私たちを支配して、命令していくようになった。

 学校行くのダルい。迎えに来て。

 お昼ご飯買ってきて。

 もう学校帰るから玄関まで送って。

 などなどいつもの甘い声で言うようになった。


 私のグループはみんな優しい子ばかりで、それに対して悪口を言う子はおらず、みんな玲奈の言うことを聞いていた。

 私だけが、玲奈と微妙な距離感があり、ずっと黙っていた。


 そのままの状態が続き、ついに修学旅行の日が訪れた。


 玲奈は風花と空港に来た。知らない男もいた。

 前に紹介された玲奈の彼氏でもなく、風花の彼氏でもなかった。

 風花の顔色が少し悪かったので、大丈夫?この人誰?

 と聞いた。


 風花は摩耶の…彼氏。空港まで送ってもらったの。

 と言いながら私にもたれかかった。


 玲奈はその男と腕を組みながら、イチャイチャしていた。


 玲奈、摩耶の彼氏を寝取ったの?と小声で聞いた。風花はコクンと頷いて少し涙ぐんだ。


 摩耶はそのあと家族に送ってもらい空港へと来た。玲奈と自分の彼氏が腕を組んでいる姿を見た摩耶は、一瞬ショックな表情を見せた。

 でも、そのあとはいつも通りの摩耶で、玲奈やその男に何も問い詰めたりしなかった。


 その後の自由行動も玲奈は男のところへ行った。

 その時やっと摩耶の本音を聞いた。

 玲奈に彼氏を紹介したら、彼氏とどんどん連絡が取れなくなって…気付いたら今日みたいなことになってたんだ…。

 と言いながら摩耶は泣いた。

 風花は摩耶を抱きしめて辛かったね。辛かったね。と言いながら摩耶を慰めていた。


 私たちグループは六人で私、玲奈、風花、摩耶と法子、麻美というとても優しい子がいるグループだった。部屋割りは3人、3人となっていた。当初の予定では、玲奈、風花、摩耶の三人。そして私、法子、麻美の三人となっていた。

 私たちは話し合いをして、私と玲奈の部屋を入れ替えることにした。


 その夜、私は後ろを歩く風花と摩耶の前を歩いていた。法子と麻美が部屋の前に立っていた。


 あれ、どうしたの?部屋に入らないの?

 と聞いた。


 すると、麻美がこの部屋には玲奈とあの男の人がいて、先生にばれないように見張り頼まれたの。


 断れなくてごめん。

 法子と麻美も凄くバツが悪そうな顔をしていた。


 私は、怒りが最大に達した。

 俗にいうキレるというものだんだと思う。

 私が傷つけられたことよりも、摩耶や友達を傷つけたことの方が許せなかった。


 玲奈、先生来たよとメールを送り、男を外に出したあと、風花たちを隣の部屋に移し玲奈と1対1になった。


 私は玲奈の前に立ち玲奈を真っ直ぐ見つめた。

 玲奈は、無言で私から目をそらしていた。


 私は玲奈に思いっきりビンタをした。

 玲奈は頬を抑えてうずくまった。唇から血が出ていた。

 玲奈は何するの?と怒りを示した。


 私はもう一発ビンタをした。


 そして怒鳴った。


 甘ったれんじゃねえ!世の中は全てお前の思い通りになるんじゃねぇんだよ!

 お前何様だ?王様か?

 そんなもんうちらにはいらねぇ!

 友達以外いらねぇんだよ!

 私にやった裏切りは忘れてやるよ!

 その代わり、他のみんなのことを傷つけたことはちゃんと謝れ!!!


 玲奈は泣き出した。

 なんで?なんで私が悪いの?

 みんなが私の友達になってくれないのが悪いんじゃない。


 私は馬乗りになって玲奈を抱きしめた。


 友達はな、いつでも助けてくれて、身代わりになってくれるヒーローじゃねーんだよ。

 お前が本当の友達が欲しいっていうんなら絶対裏切るな。信用される努力をしろ。

 人に変わってもらうためには、まずはお前が変われ。


 玲奈は頷きながら号泣した。私を抱きしめる手の力はとても強かった。


 玲奈はその後、学校を辞めた。

 彼女から生まれ変わりたい。玲奈に本当にぶつかってくれたのはあなたがはじめて。ありがとう。とメールが来た。


 風花たちにもそれぞれメールがきていたらしい。

 私はその場でメールを消し、玲奈のアドレスと電話番号を着信拒否にしてから消した。


 それが私なりの玲奈へのエールだった。


 それから玲奈に会うことは二度となかった。




 少し時を遡って紗耶香の話をする。

 高校生になってからも、紗耶香とは何度も遊んだ。そのたび紗耶香は不安定な状態になり泣いていた。原因は彼氏の拓也だった。

 最初は些細なことでの喧嘩だったが、それがどんどんエスカレートしていっている様子だった。


 紗耶香は拓也が浮気していると疑っていた。

 わたしのそのたびに学校ではそんな様子ないよ。とウソをついた。


 実は拓也にはもう一人彼女がいた。

 私と同じ学校の早苗という子だった。

 早苗はみんなから好かれる凄く性格のよい子でいつもニコニコしていた。

 そのため男子にも凄くもてて告白されまくっていたが、全て断っていた。

 早苗には高校に入って以来ずっと片思いしてる男性がいた。

 それが、拓也だった。

 拓也にお弁当を作ってきたり、友達にセッティングしてもらって大勢でカラオケにいったりと健気にアプローチしている早苗を、私は止めることができなかった。


 その代わり、拓也にはきちんと彼女いることを早苗に伝えなさい。と何度も言ったが拓也から伝わることはなかった。


 仕方なく私は拓也と紗耶香が写っているプリクラをみんなに配った。

 もちろん早苗の耳にも入った。


 早苗は、私は好きだから頑張ってアタックすると言い続けていたらしい。


 私にはどうすることもできずただただ悩んだ。

 そして、家庭が荒れていることや、玲奈のことで悩んでいた私は、紗耶香の相談を聞いてあげられない時も沢山あった。


 結局早苗からのバレンタインチョコが拓也の家から発見され、紗耶香と拓也の関係はどんどん泥沼化していった。



 また、私の家庭もさらに荒れていった。

 私は、お母さんにさんざん離婚してとお願いした。お母さんははじめは聞く耳をもたなかったが、お父さんが多額の借金を背負っていることを知り、離婚を決意したと共に自分の借金についても明かした。


 お母さんは私と弟のために知人から数十万の借金をしていると言っていた。


 弟には離婚のことや借金のことは言えなかった。

 弟はまだ中学校三年生。受験を控えた大切な時期だった。

 私より要領のいい弟は遊びにいったりしているにも関わらず好成績をキープしていた。

 だから弟には弟が行きたいと思う高校へ行ってほしいと思った。


 私はアルバイトの出勤日数を更に増やし働いた。


 お母さんが離婚をお父さんに告げたその後、お父さんが失踪した。お母さんは心配になり、仕事を休みお父さんを探しに出掛けていた。


 お父さんは三日後、パチンコ屋で見つかった。

 お父さんの車からは大量の練炭が見つかった。

 どうやら死のうとして海や山へ行ったが死にきれず、パチンコ屋にいたそうだ。



 お父さんは、私とお母さんに土下座をして、

 やり直そう。俺は働く!

 と告げた。


 お父さんが号泣しているところをはじめて見た。


 しかし、私は許せなかった。今までされたことが頭に残りお父さんは絶対元に戻れない。と思っていたがお母さんは違った。

 むしろ働くと言ったお父さんに感激している様子だった。

 ひたすら離婚してと言い続けたが、お母さんは離婚を辞めた。

 その後お父さんは職業訓練校に通い資格を取ることになったらしい。


 その後、弟は見事県内でも名のある高校への受験を合格しその高校に通うことになった。

 私は、大好きな弟の夢が破れなくて良かったと心から安心した。

 しかし、家庭の状況もうすうす理解していた弟は心配だったらしく、学校での様子がおかしいと担任の先生から連絡が来ることもしばしばあった。


 私はそのたびに弟に大丈夫だからね。お父さんもお母さんもお姉ちゃんも働いているから、もう平気なんだよ。


 と告げた。弟は複雑そうだったが、将来俺が皆を養うと決意した様子だった。



 私は高校三年生になってからも海との交際は続いていた。

 海は都会の一流大学に通うために猛勉強していた。

 元々凄くレベルの高い高校に通っていた海は頭が良く私もよく勉強を教えてもらっていた。


 そのため海はアルバイトをしばらく休むことになった。


 一方、私は担任の先生に進学を進められていた。

 私も英文科のある大学へ進学したかった。

 高校に入り好成績を残していた私だが、偏差値の低いこの高校の勉強だけでは大学への道は難しかった。

 かなりの勉強が必要だったが、私は先生の勧めを拒否した。


 とにかく早く働きたいんです。

 仕事は家から通えるところなら何でもいいんです。でも勉強もしっかりやります。学ばせてもらうことはありがたいことなので。

 と告げた。


 海と私は二週間に一度のペースでデートをした。

 デートといっても図書館や海の家で勉強することが殆どだった。


 その頃やっと私と海は手を繋いで歩く様になった。お互いに気恥ずかしくて笑いながら色んなことを話した。

 主にお互いの将来のことだった。

 海は海外に行きたいと言っていた。

 私もその夢を応援したいと思った。


 私の誕生日、海は自分で作った歌をギターで弾き語りしてくれた。

 とても感動して私は泣いた。

 そんな私に彼はキスをした。

 一瞬のキスだった。


 そのあと恥ずかしくて海の顔を見ることができなかったのを覚えている。

 とても印象に残るファーストキスだった。


 私のはじめてのセックスは海にあげることはできなかったから、キスをあげれたことが幸せだった。


 ただ、その頃少し気掛かりなことがあった。

 アルバイト先のリストカットの癖がある先輩のことだった。

 先輩はあの後病院へ入院し、退院後再びアルバイトに戻った。

 もうリストカットをすることはなかったし、精神的にも穏やかになっていた。


 その先輩が最近また不安定になってきていたからだ。

 海はそのことをとても心配していた。

 海が心配するたび、私は少し胸がチクッとした。

 変な胸騒ぎとイヤな予感がした。


 それから、海とのデートには必ず先輩が同行するようになった。海が先輩を誘っていたのだ。

 先輩はバイクに乗っていつも海の家に来た。

 そして買い出しに行くときもいつも海と二人でバイクに乗って出掛けていった。

 私はそれがとても嫌だった。

 海はやっぱり私より先輩の方が好きなのでは?と思うようになった。

 それからは海と何度も喧嘩した。

 海のそのたびに、先輩のことは女性として見てないよ!ただ…先輩が不安定だからほっとけないんだ。

 と言っていた。


 海はその後、風邪をこじらせて肺炎で入院することになった。受験を控えた時期だったのでとても心配だった。

 私は海の入院をアルバイト先の店長から聞いた。

 驚いて海にメールを送っても返事はなかった。

 そうか。体調悪いのにメールなんてできないよね。お見舞い行ってみよう。と思いアルバイトが終わったあと店長の車でお見舞いへと向かった。


 お見舞いへ行くとそこには、先輩がいた。

 先輩は風邪を引いていてアルバイトを休んでいたので店長にスイマセンと言っていた。

 その後、先輩はこう続けた。


 海と一緒にバイクで寒い中出掛けたせいで、二人して風邪引いちゃって…私のアパートに泊めたんですけど海の咳や熱がどんどんヤバくなっていって二人で病院行ったら海が入院することになって…と泣き出した。


 店長は空気を察して先輩を連れて喫茶店行ってくると言い去っていった。

 私は海の病室へと向かいマスクをして手を洗った。


 海?というと海は点滴を打っていて眠っていた。

 海の横には携帯電話が置いてあった。

 海の顔を見つめながらしばらく過ごしていたら、海の携帯電話からブーブーとバイブ音がした。着信ではなくメールだった。


 メールは先輩からのものだった。

 題名だけが見えた。

 題名は…

 愛してる

 だった…。


 私はすぐさま海から離れて、店長に電話した。

 店長、今どこにいらっしゃいますか?


 店長はすぐ近くの喫茶店だと言った。

 先輩はさっき帰ったよ。と言っていた。


 喫茶店へ向かい店長と二人で話をした。


 店長は、先輩がアルバイト先の社員さんに恋心をいだいている。それで、不安定になっている。次に皆に迷惑をかけるようなら首にする。と言っていた。


 私は、先輩は海のことが好きなのだと思っていたので、ビックリしたが特に何も語らずに帰った。


 海の退院後、私は別れを告げた。

 直接伝える勇気もなく、最後のデートをしたあとメールで伝えた。


 そのあと、海からは沢山の着信やメールがきた。

 内容は、別れないで。先輩とは何もない。というものだった。




 私は全て無視をした。

 もう先輩の話や顔を見るのも嫌だった。

 もう海のことを信じられなくなった。


 受験に無事受かった海はアルバイトに復帰していた。私はアルバイトを辞めて、家の近くに唯一あるお店でアルバイトをはじめた。

 大好きだった洋服を扱うお店だった。


 家から学校へは自転車で一時間。働いていたファミレスもその近くだった。

 田舎だったので、周りにはコンビニが一軒あるだけで、駅も遠く、バスもほとんどはしっていなかった。


 洋服屋さんは店長とアルバイトが二人というアットホームなお店で、田舎にあるもののお客さんはかなり多かった。

 高校生のアルバイトは募集してなかったが、何度も通いつめる私を見て、卒業後も働くという約束で働くことになった。



 その間も、海からの連絡は途絶えることはなかった。海の行動はどんどんエスカレートしていき、しまいには私の家に毎日手紙を置いていくようになったり、リストカットをした写真を同封してくるようになった。


 私は考えた結果、一度海と話し合うことにした。


 海を電話で呼び出し、喫茶店で待ち合わせすることになった。


 海は着たなり、涙を流していた。


 私は海が落ち着いた頃、こう切り出した。


 私は海と付き合って少したったころ、他の男性とセックスをした。

 でも愛のないセックス。

 海は先輩とセックスした?


 海は凄くショックを受けたようでしばらく黙り込んだ。


 俺は卒業後、都会の大学へ行く。君にも付いて来てほしい。

 先輩とセックスは…した。

 でも、もうけりは付けたんだ。

 先輩は都会まで付いて来るって言ったけど、俺はそれを拒否したんだ。

 俺は君のことがわからない。

 何も相談してくれない。

 いつも笑顔で俺の話を聞いてくれていた君は、俺のこと好きだった?


 とゆっくり海は言った。


 …好きだったよ。でも、もう元には戻れない。

 ごめんなさい。


 と言うと彼はしばらく考え込んだあと、分かったといった。


 彼の手首には無数のリストカットの跡があった。


 私は、いたたまれない気持ちと、今までの海との思い出を思い出し泣きそうになった。


 でも泣かないと決めていたので、ぐっとこらえた。


 海と離れる時、海はまたね。と言った。

 私もまたね。と返した。


 そうして、私と海の交際は終わった。



 高校生活は無事終わり、卒業を迎えることとなった。


 私は洋服屋でアルバイト。

 風花は、彼氏と同棲しながらの就職。

 摩耶は都会でフリーター。

 法子はなんと電撃結婚。妊娠をしていた。

 麻美は年上の彼氏の転勤についていき県外へ。


 皆、それぞれの道を歩むことになった。

 私は彼女たちと友達でいられて本当に良かった。

 心からそう思う。



ここからの私の人生があんなに転落していくなんて思いもしなかった。



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