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Demon's Remnant ― 悪魔の残滓  作者: 虚空小白
第三章:過去と未来の狭間で
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第二十話 外の世界の歩き方

 夕食を取った後、ロゼンはカイレンに、シャワーやトイレ、ハーブスティックの使い方を教えた。

 カイレンは熱心に聞いていたが、ハーブスティックを誤って食べてしまう。


 ロゼンはやむを得ず、自身でハーブスティックの枝先を噛み、ブラシ状にした。

 カイレンの口を開けさせ、それで歯を磨く。


 カイレンはベッドで眠りにつき、ロゼンはランプの灯かりを頼りに手紙を書いていた。


 *


 父さんへ


 今、俺は守護の鏡ルミナルディアにいます。

 マーニが命を落としました。


 俺は、マーニに夢を託された。

 だから、旅を続けます。


 この手紙が最期になるかもしれません。

 父さんの言う通りだった。


 ごめん。


 ソル・アルヘイナ


 *


 手紙には、インクが滲み出た箇所があった。


 ロゼンはペンを置き、拳を握り締める。

 手紙の前で静かに謝罪した。


「父さん、ごめん……」


 手紙を宛先を書いた封筒に入れ、ロゼンは肩を落とす。

 靴を脱ぎ、ベッドで横になった。


 目を閉じると、意識が遠のいていく。


 *


 ——翌日の午前七時頃。


 ロゼンが目を開けると、物静かだった。

 上半身を起こし、部屋の中を見渡すと、床の上でカイレンが身を低くし、ロゼンの風袋を見つめている。


 片目を閉じ、風袋にそっと触れ、恐る恐る目を開ける。


 ロゼンは息を吐いた。


「カイレン、何をしてるんだ?」


 カイレンは肩をビクッと震わせ、上半身を起こす。


「フク、ブジカ?」


 ロゼンはベッドから降り、風袋からカイレンの毛皮を取り出した。

 カイレンはロゼンの手から毛皮を奪い取る。


 ロゼンの風袋に目を向けた。


「ソレ、ください」


「銀貨七十ルミナで売ってやる」


「ギンカ?」


「金のことだ。外の世界では金が必要になる」


 カイレンは肩を落とした。


「あんたの服も買ってやる。だから、その毛皮を渡せ」


 カイレンは渋々頷き、ロゼンに毛皮を渡す。

 ロゼンは風袋に毛皮を入れ、腰に身に着けた。


 朝の支度を済ませ、朝食が運ばれるまで、カイレンにお金とその価値を覚えさせる。


 ドアがノックされ、ロゼンが対応する。


「おはようございます。朝食をお持ちしました」


 係員が朝食を運び、テーブルに並べる。


 ロゼンは係員に尋ねた。


「俺たちは、ハウンド管理局の試験が再開されるまでの間、滞在する予定だ。それまで、この部屋を使わせてもらいたい」


 係員は微笑んだ。


「はい。受付にお声がけください」


 会釈し、その場を後にする。


 カイレンのお腹の虫が鳴いた。

 朝食を見つめ、涎を垂らしている。


 ロゼンは肩を竦め、イスに腰かけた。

 カイレンはロゼンに倣う。


 ロゼンはカイレンに料理のことを教えながら食事を取った。


 *


 ——食事を済ませ、ロゼンはカイレンに雨具を着用させた。


 身支度をし、部屋を出る。

 受付に十日分の宿泊代を前金で支払い、鍵を返却する。


 馬車に乗り、二人は服飾店へ向かった。


 服飾店に到着し、ロゼンは男物の旅装束を五着、皮のブーツを一足手に取る。


 高齢の男性店員は目を細めて、二人を見た。


「試着しなくていいのか?」


 ロゼンは肩を竦める。


「靴は連れが履くが、足が汚れている。服は土産用だ。それとも、試着しないと買えないのか?」


「銀貨十七ルミナ」


 ロゼンは笑顔を作り、値下げ交渉を始めた。


「銀貨十三ルミナ」


「銀貨十六ルミナ」


「銀貨十四ルミナ。嫌なら他の店で買う」


 店員は息を吐いた。


「ちょっと待ってくれ。銀貨十五ルミナだ。うちとしてもこれが限界だ」


 ロゼンは代金を支払い、カイレンの足元にブーツを置く。


 カイレンはロゼンの顔色を伺い、それからブーツに足を入れた。


「ロゼン、ありがとう」


「気にするな」


 ロゼンは旅装束を風袋に入れ、店を出る。

 カイレンは飛び跳ねながら、ロゼンの後に続いた。


「カイレン、一度宿に戻る。服の着方を教えてやる」


 カイレンは頷いた。


 馬車に乗って、二人は宿に戻る。


 宿に入り、受付で鍵を受け取り、部屋に入る。

 施錠し、風袋から購入した旅装束を床に置いた。


「カイレン、そいつを脱いでくれるか」


 カイレンは剣と雨具を脱ぎ捨てる。


 ロゼンは顎にそっと手を当てた。


「胴巻きが邪魔だな」


 ため息をつく。


「失念していた。肌着も必要か。あいつのものを借りるか」


 ロゼンはマーニの肌着を取り出す。


 しばしの沈黙。


 カイレンは胴巻きを脱ぎ捨て、全裸になった。


 ロゼンはなるべく視線を逸らしながら、カイレンのブーツを脱がせ、肌着を着せ、大きく息を吐く。


 ロゼンは剣と風袋を外して床に置いた。

 旅装束とブーツを脱ぎ、カイレンに言う。


「今から服を着る。同じようにしろ」


 カイレンは頷き、旅装束を持ち上げた。


 旅装束は、上衣とズボンがひと続きになった服で、腰のあたりがわずかに絞られている。袖は長く、裾は足首まで覆っていた。前身頃には胸元から腰までボタンが並び、それを外せば一枚の服を上下まとめて脱げる作りになっている。


 ロゼンは説明しながら旅装束を着て、ブーツを履く。

 カイレンは苦戦しながらも旅装束に袖を通し、同様にブーツを履いた。

 さらに、雨具にも袖を通す。


 ロゼンはカイレンに尋ねた。


「それはもう必要ないだろう?」


「コレ、ください」


「何かを羽織ってないと落ち着かないのか」


 カイレンはロゼンから渡された物なので、肌身離さず身につけておきたかった。


 たとえ雨具でも、カイレンにとっては掛け替えのない思い出の一つだった。


 カイレンは笑みを浮かべて頷く。


「まあ、いいか」


 ロゼンは剣と風袋を身に着ける。

 カイレンも腰に剣を下げた。


「よし、ハウンド管理局に行くか」


 カイレンは右手を振り上げる。


「おう」


 *


 ——だが、昨日と同様に門前払いを受けた。


 カイレンのお腹の虫が鳴く。


「昼飯にするか」


 カイレンは笑みを浮かべた。


 馬車に乗り、二人は御者オススメの喫茶店へ向かう。


 そこは、白豚のフライサンドが名物だった。

 二人は店に入り、ロゼンがマスターに料理と飲み物を注文する。


 *


 ——待つこと数分。


 マスターが白豚のフライサンドとハーブティを並べる。

 二人は白豚のフライサンドに大口でかぶりついた。


「ヴァルトクローネでしか味わえないと思っていたが、美味いな」


 カイレンが頷いた。


「美味い」


 ロゼンはハーブティに蜂蜜を入れ、スプーンでかき混ぜる。

 ハーブティを口に運ぶと、マーニとの思い出が脳裏を過った。


 ロゼンは息を吐く。


 あいつのことを忘れたりなんかしない——ロゼンは内心でつぶやいた。


 カイレンはロゼンの横顔を見つめている。


「ロゼン、具合、ワルイカ」


 ロゼンは首を横に振った。


「少し感傷に浸ってしまっただけだ」


 カイレンはハーブティを口に含み、すぐに蜂蜜を入れる。

 ロゼンは横目でカイレンを見た。


「カイレン、この後、口入屋で依頼を受けて滞在費を稼ぐ。いいな?」


「ワカッタ」


 *


 ——二人は食事を済ませ、代金を支払い、店を出た。


 馬車に乗り、二人は口入屋へ向かう。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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