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ハチのいっしょう  作者: 亀丸物産


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1/12

第1話:羽化・本日の配属は「トイレ掃除」です

日常生活でたまに会う蜂。

実は面白いコミュニティを形成しているのです。

そんな彼女たちの生活を覗き見てみましょう!


って感じの物語が書きたくて、小説にしてみました。

12話くらいと読みやすい長さかと思いますので、

是非お立ち寄りください!

「――よし、同期のみんな! 我が巣の偉大なる母様(女王バチ)のために、今日も働こう!」


 六角形の壁に囲まれた薄暗い空間で、ひときわ呑気な声が響いた。

 ここは、とある巨大なミツバチの巣の地下。その一角にある保育室で、いままさに何匹もの新米働きバチたちが、モゾモゾとサナギの殻を破って産声をあげていた。

 その中の一匹、ハチ子は、自分の頭上を覆っていた薄皮をパッカーンと突き破り、勢いよく顔を出した。


「こんにちは、あなたの名前はハチ子よ、よろしくね」


 目の前には先輩ハチがおり、簡単な挨拶をした後、別の生まれたハチの元に向かって行った。


挿絵(By みてみん)


「ふぁぁ……」


 ハチ子は伸びをしようとして、いきなり隣の壁に頭を激しくぶつけた。


「いてっ!」

「おいおい、生まれた早々威勢がいいな、隣の君」


 声をかけてきたのは、すぐ隣の巣房から気だるげに這い出てきた同期のハチだった。

まだ羽が濡れていて、いかにも「起きたて」といった様子で触角をピクピクさせている。


「あ、すみません……私、ハチ子と言います。今日から同期ですね!」

「へえ、ハチ子ね。よろしく。私はブン美。見てのとおり、まだ眠気が抜けきらない絶賛二度寝モードの女だ」


挿絵(By みてみん)


 ひょろっとした体つきのブン美は、そう言いながらもどこか飄々とした空気を纏っていた。

この時はまだ、ハチ子も「同期のしっかりした(あるいは普通の)子かな?」くらいにしか思っていなかったのである。

 ハチ子は胸元の毛並みをピシッと整え、気合十分で触角をピンと立てた。

 彼女たちの手元には、先輩から配られた『新米ハチのための必携マニュアル・初級編』が握りしめられている。

そこにはこう書かれていた。


――『羽化後一日目。すべての始まりは、自らの巣房の清掃にあり。完璧に磨き上げ、次世代のゆりかごを作れ』


「ふふん、掃除ですね。お任せください! 私、綺麗好きの真面目ちゃんですから!」


 ハチ子は意気揚々と、自分がついさっきまで入っていた巣房に向き合った。

 しかし、ここからが「ドジっ子・ハチ子」の真骨頂だった。


「ええと……マニュアル第1条、『ゴミや排泄物は完璧に取り除き、プロポリスで殺菌すべし』……っと」


 ハチ子は持ってきた粘着質の樹脂をブラシ代わりに、すごい勢いで壁をゴシゴシと擦り始めた。あまりの熱意に、彼女の羽がものすごい高速回転を始める。


「おっ、ハチ子、なかなかいい仕事っぷりじゃん。……私はちょっと、そこの柱の陰で羽を乾かして(サボって)るわ」


 ブン美はそう言い残すと、すたすたと日の当たらない巣の隅っこへ移動し、丸まって目を閉じてしまった。


(――あれ? ブン美さん、もう休憩ですか? いや、新人は休まず働くってマニュアルに……)

とハチ子が首を傾げた瞬間、悲劇は起きた。

 作業に熱中するあまり、ハチ子の足が自分の吐き出した蜜のカスにチュルリと滑ったのだ。


「あ、ぎゃっ……!?」


 バランスを崩したハチ子は、ボウリング球の勢いで自分がさっきまでいた巣房に突っ込み、さらにその勢いのまま、隣の列の巣房へダイブした。

 メキメキメキッ! と、ハチたちが何日もかけて丁寧に作り上げた六角形の壁が、まるでドミノ倒しのように次々と崩壊していく。


「――わあああああっ! 私の初仕事がぁぁぁ!!」


 静まり返っていた保育室に、ハチ子の絶叫と、壁が崩れる盛大な音が響き渡った。

 崩れた瓦礫の中から、ハチ子が頭にハチミツをベッタリとつけた状態で、プルプルと震えながら這い出てくる。

 遠くの方から、「おい、あっちでなんかすごい音がしなかったか?」「新人の仕業か?」という先輩バチたちの怒号が聞こえてくる。


「ひっ、怒られるっ!」


 ハチ子はパニックになり、崩れた壁の破片を慌てて自分の体に隠そうとしたが、余計に状況を悪化させるだけだった。


「おいおい、すげえ音だったな。全蜂が泣いたぞ」


 振り返ると、いつの間にか現場から一歩も動かず、安全地帯で優雅に毛づくろいをしていたブン美が、他人事のようにヒラヒラと手を振っていた。


(……あれ? ブン美さん、この人、もしかして……働く前からめちゃくちゃサボる天才では……!?)


「ま、待ってくださいブン美さん! 私を手伝ってください、マニュアル違反です!」

「いやいや、私は省エネでいきたいの。じゃ、お先にとっつかまってきな!」

「待てーーっ!!」


――働きバチとしての人生初日。

巣の平和を守る(はずの)真面目なハチ子は、早くも前途多難すぎるトラブルに巻き込まれながら、ドタバタと走り出したのだった。

お読みいただきありがとうございます。


作者のモチベーションになりますので、

少しでもご興味を持っていただきましたら、

フォロー、ブクマ、リアクション等頂けますと嬉しいです!

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