深淵に響く紅蓮の咆哮
高難易度依頼に出発する朝。
澪はいつもより早く起きて、装備の点検をしている。雫は既に準備を終えており、弓の弦を確かめながら澪を待っていた。
澪は雫に「今日は絶対に置いていかれないからね!」と宣言する。
しかし雫は少し首を傾げて、
「……置いていくつもり、ないよ?」
と何気なく返す。
澪はその言葉に照れながらも、改めて雫と並んで歩くことを決意する。
二人が到着したダンジョンは、以前の大規模氾濫の影響で魔力の流れが大きく変化していた。
通常なら低階層にいる魔物が上層に現れ、逆に深層の魔物の気配が薄くなっている。
雫は周囲を観察しながら、普段とは違う違和感を覚える。
「……変だね。魔物の気配が、逃げてる」
その直後、壁の奥から巨大な魔物が出現する。
雫はすぐに弓を構えるが、あえて矢を放たない。
澪に視線を向け、
「……澪。お願い」
とだけ告げる。
澪は一瞬驚くものの、すぐに剣を構える。
以前なら雫の援護を待っていた場面。しかし今の澪は、自分の判断で魔物の攻撃を見切り、紅蓮の闘志を発動させる。
雫はその戦いを静かに見守る。
澪は苦戦しながらも、自分の力で魔物を撃破する。
戦闘後、澪は息を切らしながら雫に尋ねる。
「どうだった? 私、少しは強くなれた?」
雫は少し考えた後、
「……うん。前より、ずっと強い」
と答える。
そして続けて、
「でも、まだ強くなれると思う」
澪は笑って、
「もちろん! 雫の隣に立つんだから!」
と返す。
雫はその言葉を聞いて、ほんの少しだけ嬉しそうに目を細める。
そのとき、ダンジョンの奥から奇妙な音が響く。
魔物の咆哮ではない。まるで誰かが二人を呼んでいるような、不思議な声だった。
雫は弓を構え、澪も剣を握り直す。
「……澪。まだ、終わってないみたい」
「うん。今度は二人で行こう!」
二人が深層へ進んだ先には、今までの魔物とは明らかに異なる存在の痕跡が残されていた。
そして、その痕跡には雫の血魔法とよく似た魔力が宿っていた――。
最後まで見てくださりありがとうございます
よかったら評価くれると嬉しいです




