悪役令嬢 転生!
私は死んだはずだった。
前世の記憶が蘇った瞬間、頭が真っ白になった。名前はエレノア・フォン・ローゼンベルク。この国の名門・ローゼンベルク公爵家の長女。そして――乙女ゲーム『聖女の恋の魔法学園~Prince of Rose~』の、悪役令嬢その人。
「え……マジで?」
鏡の前に立った私は、銀色の長い髪と、宝石の ように輝く紫の瞳を確認して小さくガッツポーズをした。前世はただの社畜OL・高梨エレナ(28)。残業続きで死んだと思ったら、なんと転生特典付き!しかもゲームクリア済みの知識が全部頭に入ってる神展開!
今日がその運命の日だ。
王立魔法学園の卒業舞踏会。ここで婚約者である第一王子・ライオネル殿下から、私に婚約破棄が宣告される。理由はもちろん、ヒロインである平民の聖女様・ミリアに横恋慕したから。ゲームではここでエレノアは「私を捨てるなんて許さないわ!」と暴れて、国外追放→死亡エンド確定。
でも私は違う。
「やったぁぁぁ! やっと自由になれる!」
心の中で全力で喜びながら、私はドレスを翻して大広間へ向かった。今日の私は完璧に「悪役令嬢モード」。わざと高飛車に笑い、扇子をパチンと鳴らす。
広間は華やかで、魔法の灯りがきらきらと舞っている。中央に立つ金髪の王子ライオネルが、隣に控える栗色の髪の少女――ミリア――を優しく見つめていた。
「エレノア」
王子が私を呼んだ声は、まるで裁判官のようだった。
「貴様の傲慢さと、ミリアへの数々の嫌がらせ……もはや許すことはできん。今日をもって、婚約を破棄する!」
会場がどよめいた。令嬢たちが「まあ……」と息を飲み、貴族たちがざわつく。
私は扇子で口元を隠し、わざとらしく目を細めてみせた。
「ふふっ……そうですか。ようやく言ってくれましたね、殿下」
「……なんだと?」
ライオネルが一瞬、目を丸くする。
私は一歩前に出て、堂々と胸を張った。
「私、エレノア・フォン・ローゼンベルクは、殿下の婚約者など、最初から降りたかったですわ。だって、殿下の好みは地味で気弱な聖女様でしょう?私みたいな華やかな悪役令嬢じゃ、到底お似合いじゃないもの」
会場が凍りついた。
「え……?」
「むしろ感謝します。これで私は自由です。公爵家の後継者として、領地の改革を進められますし、魔法研究にも没頭できます。殿下は、どうぞ聖女様と幸せになってくださいませ」
私は優雅に一礼して、くるりと背を向けた。
「待て、エレノア!」
ライオネルが慌てて呼び止めるが、私は振り返らずに手を振った。
「もう用はありませんわ。失礼いたします」
背中でミリアが「え、えっと……ごめんなさい……」と震える声が聞こえたけど、私は心の中でガッツポーズを三回した。
(やった! フラグ完全回避!これで死亡エンドも国外追放もなし!明日から領地開発と、隠しルートの攻略……じゃなくて、自由研究生活だー!)
大広間を後にする私の足取りは、まるで踊るように軽やかだった。
転生してよかった。本当に、最高の人生が始まる!
――次回予告エレノア、領地で新しい魔法を発明して大儲け!?王子が「やっぱりエレノアが……」と後悔して追いかけてくる!?悪役令嬢、実は最強のやり直しライフ、開幕!




