第二十話 魔法少女との遭遇
別視点です。
俺たち、冒険者の朝は早い。
日が上り始める頃には冒険者ギルドへ行き、扉が開くと共に中へ押し入る。
そして、我先にと言わんばかりに依頼の掲示板に群がり、良い依頼を争奪する。
なんとか依頼を勝ち取ると、その依頼を受注し、依頼を達成するべく出かけて、日が暮れる頃に戻ってくる。
これが冒険者の日常だ。
それは俺たちAランク冒険者であっても、この王都の冒険者ギルドでは例外ではない。
地方のギルドならAランク冒険者が希少な為、争奪戦をする必要がないが、ここではそうはいかない。
今は遠征で居ないが、普段はSランクすらもいるのだ。
俺たちの他にもAランクパーティーはたくさんある。
そんな訳で、今日も俺たちはパーティーメンバーと共に手分けして依頼を勝ち取ろうとしていると、アナウンスが鳴った。
「Aランクパーティー『風の翼』の皆様は応接間までお越しください」
呼び出しを食らってしまった。
稀にあるのだ。
何かが起こると、調査の為に俺たちのような真面目な冒険者がこうやって呼び出されて、指名依頼を受けさせられるのだ。
人材が豊富な王都のギルドとは言え、冒険者のギルドだ。
俺たちのような真面目なやつはなかなかいない。
まあ、報酬はいいから助かるのだが。
「おい、カイ。お前、なんかやらかしたのか?」
「そんな訳ないだろ。バルド、お前こそ何かしたんじゃないのか?」
こいつはバルド、俺たち『風の翼』のタンクであるドワーフの重戦士だ。
魔物からの攻撃を一手に引き受け、攻撃の隙を作ってくれる。
「どうせ、またなんかの調査でしょ」
こいつはエルナ、水属性と風属性を操る魔法使いだ。
パーティーの攻撃力の主力だ。
「前回のような面倒なやつはやめてほしいですね」
こいつはエルフのセリーナ。
弓で遠距離から援護してくれ、多少の神聖属性魔法が使えて、弓使い兼ヒーラーのような存在でもある。
これが俺たち『風の翼』のパーティーメンバーだ。
俺はそんな仲間と共にギルドの奥にある応接間に入った。
中には王都の冒険者ギルドマスター、エルドがいた。
「お、ギルマスじゃねぇか。今日はどんな強制依頼なんだ?」
「バルド、相手はギルドマスターだから敬語を使って」
セリーナが注意している。
だが、バルドに何を言っても無駄だと思う。
「我々は冒険者に対して礼儀正しさは求めていないから気にしなくていいぞ。何故なら、求めても無駄だからな!」
敬語を使えるほど良い教育を受けた者はもっとまともな職に就くため、必然的に冒険者は荒くれ者ばかりの集団になるのである。
まあ、俺のような敬語の使える真面目な冒険者もいるがな!
「それで、マスター。今日はどのような依頼ですか?」
「実はな、魔の森の様子がおかしいんだ」
「魔の森ですか?」
魔の森とは王都周辺の森の中では比較的弱い魔物が出てくる為、弱い冒険者の狩場になっている森だ。
浅い所の魔物は弱いが、奥に行くと強い魔物が結構出てくる為、調子に乗った冒険者の墓場とも言われている。
そんな森でいったい、何が起きているんだ?
「観測所から報告が来てな。今日の明け方の頃から低級の魔物を軒並み倒して回っているやつがいるそうだ」
「迷惑なやつですね」
ただの狩場潰しかよ!
つまり、今回の指名依頼は補導かよ!
いや、冒険者ではなく、魔物の可能性もあるか。
低級の魔物ばかりを狙っていたとなると、実力は低いのか?
「待て、早合点するな。そいつは長時間、戦闘していた。つまり、とんでもなく魔力量が高い癖に魔力消費の少ない魔法を好み、尚且つ魔力操作能力が凄まじく良い訳だ。戦闘時間と消えた魔物の反応の数からして、実力はAランク相当だと想定されているが、それ以上かもしれん」
「それ、人ではなく、突然変異した魔物ではないのですか?」
「その可能性もある。なんなら禁忌を犯した魔法使いかもしれん。要するに、正体に関しては何も分からん。だが、放っておくと弱い冒険者が危険に晒されるかもしれん。と言う訳で調査をしてきてくれ」
「はあ、わかりました」
「あぁ、もう一件、依頼がある。魔の森の奥にオークの集落でオークキングが発生した可能性があるようでな。これの調査もして、やれそうなら討伐して欲しい。これは片手間で構わんが、ついでにやって来てくれると助かる」
「片手間でやる事ではないと思いますが、わかりました、最善を尽くして来ます。その分、報酬は期待していますよ」
「勿論だ。適切な報酬を支払う」
つまり、色をつけてくれたりはしてくれないのかよ。
まあ、いつもの事か。
「そうですか。では、行ってきます」
こうして俺たち『風の翼』は魔の森の調査に向かう事になった。
◆◇◆◇
ギルマスからの依頼を受けてから三十分後、俺たちは魔の森の奥に向かって進んでいた。
「にしても、本当に魔物が全然いないな。駆け出し冒険者どもの財布が悲しい事になりそうだな」
「まあ、それでもたまに遭遇するけどな」
「流石に全部は殺せなかったんでしょ」
「エリナ、本当に魔物を殺して回っていたやつはこっちに進んだのか?」
「そのはずよ。巧妙に魔法の痕跡が隠されているけどね。頑張って探れば分かるのよ。まあ、隠しているのか、単純に魔力の節約の為なのかは分からないけど」
「すごいわね。私にはわからないわ」
「そんな簡単に分られたら、私の仕事がなくなるよ。なっ!」
ドカン!ドカン!ドカン!
と森の奥から爆発音が聞こえきた。
魔法か?
「聞こえたよな?」
「私も魔力を感じました」
「ええ、私も感じたわよ。奥の方から魔力反応が一瞬で増大したかと思えば、次の瞬間には爆発音とは想定Aランクオーバーは伊達ではないわね」
「俺は魔法の事がさっぱりだが、そんなにすごいのか?」
「魔法陣を出すと、魔力反応が増大するのが普通。つまり、今の反応は魔法使いが無詠唱で魔法を使った証拠。しかも無詠唱であの威力」
「すげぇーな」
「補足すると、感知した爆発地点までの距離と爆炎の大きさからしてもっと反応が大きくてもいいはずなのよ」
「つまり、どう言う事なんだ?」
「魔力の変換効率がとてもいいのよ。感知しにくくなるぐらいにね」
「よくわからんが、どっかに行っちまう前に急ごうぜ!」
「そうだな」
俺たちは全員『身体強化魔法』で、森の奥へ爆炎が見えた方向に走った。
森を駆け抜けること、数分、俺たちは魔物の集落があったと思われる爆発地点に着いた。
死体からして、オークの集落だったのか?
一応、例の魔法使いに気づかれないように魔力は遮断している。
こんな事を出来る相手に効果があるのかは分からないが。
「あいつだな」
俺は空を見上げながらそう言った。
「ええ、そうでしょうね」
「誰がどう見てもあいつだろ」
「だな」
今日は雲一つ無いとは言わないが、それでもよく晴れている。
上空には何故か空を飛んでいるオークキングと真っ黒なローブを見に纏い、奇妙な形の杖を持った小さな人影が戦っていた。
俺は『身体強化魔法』を目に集中して発動し、よく目を凝らした。
「なあ、オークキングって空を飛べるのか?」
「魔力量も操作能力も相当高いだろうから、適性属性が風属性なら飛べるとは思う」
「確かにそうでしょうけど、見た目が凄いわね」
「気持ち悪い」
「いや、気持ち悪くないオークなんていないだろ」
「なあ、そんな事よりも、俺の見間違えじゃなければ、あの戦っているやつは少女だぞ」
「「「は?」」」
「俺も目を疑っている。だが、フードから銀色の長い髪と女の子ぽっい顔立ちぽっかただったから多分そうだと思う。しかも大分若いな」
俺がそう言い切ると、また爆発音がした。
ドカン!ドカン!ドカン!
上空を確認するとオークに魔法が炸裂した。
「なあ、エルナ。あれが何の魔法かわかるか?」
「土属性と火属性を組み合わせた魔法でしょうね。魔法名はわからないわ」
「あいつ、つえーな」
「そもそも、近接職のオークキングが魔法使いに空中戦、挑んだ勝ち目がある訳がないでしょ」
「そりゃそうか」
「ん?」
「どうした?」
「あれ、闇魔法よ」
「「「は!?」」」
「つまり、あいつは禁忌の魔法使いかよ!」
「確か、どこか辺境のど田舎で闇魔法の研究が解禁されたらしいから、確定ではないわよ」
「ああ、聖女様が二人いる街か」
「そうそう」
「おい、お前ら。どうやら決着がついたようだぞ」
上空ではズタボロになったオークキングと一切、怪我していなさそうなローブが浮いていた。
そして、何かを話し合った次の瞬間、オークキングの腹に穴が開き、オークキングが死体となり落下した。
「キングが落ちて行くよ。素材は回収しないのかな?勿体無い」
「おい、ローブのやつも降りてくるぞ!」
「魔力反応が急に増大したわ。大規模な攻撃魔法が来るわよ」
エリナがそう警告した瞬間、既に壊滅的被害を受けている集落に槍が降り注いだ。
その槍は地面に刺さると同時に爆発し、まだ生きていたオークの上位種を絶命させた。
「やっぱり、空爆は素晴らしい。不意打ちだったら、逃げられにくいからな。あっ、でもオーガの集落とかが相手だとこの威力じゃあ、無理か。まあ、その時は初手で切り札使えばいいか」
たった今、Bランクの中でも上位の実力を持っているはずのオークキングを無傷で倒したやつが何かを言っている。
「ところでさ、そこに隠れているやつら。出てきてよ。出てきてくれないなら、攻撃するよ」
バレている!
確かに距離は近いが、魔力をほぼ完全に遮断しているのに何故バレた!?
「おい、リーダーどうする!」
「何もやましい事はないんだ。素直に出ようじゃあないか」
「そうね。それがいいと思う」
「私もそれに賛成」
即座に話し合った。
「三秒数える間に出てこなかったら攻撃するよ」
「待ってくれ!俺たちは冒険者だ!」
俺たちは慌てて姿を現し、そしてフードの中を見た。
そこには絶世の美少女と言っても過言ではないような銀髪の可愛らしい少女がいた。
別視点、書くの楽しい。
ちなみに、こいつらはモブです。
再登場させる予定ですが、いつになるすらも未定のモブです。
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