第十九話 オークの集落にもサプライズプレゼント!
少しだけいつもよりも長めです。
その翌日、私は王都郊外の初心者御用達の森で魔物を殺し回っていた。
魔法銃を片手に持ち、もう片方の手に魔石爆弾を持ち、稀に第三の手で魔力回復薬を飲み、常時『感知魔法』で魔物を索敵し、討伐証明になる部位と魔石以外の素材を全て無視し、ただひたすらに魔物を狩っていた。
初心者の狩場を荒らす形にはなってしまったが、全ての狩場を潰している訳では無いから、初心者たちが困る事にはならないだろう。
多分(?)おそらく(?)
「にしても『感知魔法』は便利だな。魔物の位置が簡単にそして正確に分かるな」
そんな独り言を言いながら、『身体強化魔法』で少女とは思えない速度で森を駆け抜けていた。
もちろん、射線上に魔物が入った瞬間、発砲する事を忘れずに。
「『念力』と『風刃』の組み合わせなんて、この為にあるのかと思ってしまうほど便利だな」
そう呟きながら、胸に風穴が空いたオークから討伐証明の部位である耳と魔石を『風刃』で切り出し、『念力』で引き寄せ、魔法袋に収納した。
「まあ、これのせいで魔法銃の射程が活かせられないのだけど」
そう、この素材引き寄せができるのは精々、半径二十五mぐらいの範囲なのだ。
しかも、私が高速移動しているせいで、操作が難しいのである。
更に言えば、『感知魔法』にも注意を向けないと木に激突してしまうから、引き寄せに集中できないのだ。
「まあ、これもいい修行になりそうだけど」
私はぶつぶつと独り言を言いながら『感知魔法』に引っ掛かったオークの集団に魔石爆弾を『加速魔法』で投擲した。
数秒遅れて、着弾時点の魔力場が乱れる。
「オークが相手なら仕留め損ねる事はないだろうけど、やはり確認が取れないのは欠点だな」
私が今、飛ばしたのは魔石爆弾と言う、つい最近(馬車の中で暇すぎて、作った)開発したばかりの新兵器だ。
拾った魔石に魔法陣を刻み、爆発する前に投げる。
至ってシンプルだ。
投げ遅れると自爆するから注意が必要である。
この武器の最大の利点は魔力を節約できる事である。
いくら相手が魔法銃の一撃で死ぬ相手であったとしても、魔力は減る。
だがしかし、この武器は投擲と刻む分の魔力しか消費しないのだ。
まあ、魔石が材料なので、相手が集団でないと収支があまりよろしくないのだが。
それにゴブリンごときの魔石でやると、ゴブリンの集団三匹すらも倒せないのだ。
オークの魔石がどんどん減っていく。
「そろそろ、ここも終わりかな。反応がなくなってきたからな」
どうやら、また一つ初心者の狩場を潰してしまったようだ。
まあ、私もビギナーと言えなくもないから許して欲しいものだ。
「さて、そろそろ奥の方に行きますか」
私はそう呟きながら、自分自身に『加速魔法』をかけて吹っ飛んだ。
私は空を飛びながら、『感知魔法』で森の奥の方を探った。
すると直ぐに、強めの魔力反応が大量にいる場所を発見した。
「おっ!狩り場、発見!」
『感知魔法』で発見した魔物の集落らしき場所へと『飛行魔法』と『加速魔法』を併用し、吹っ飛んだ。
魔力反応の上空に到着し、『障壁魔法』を展開してその上に降り立ち、下を確認する。
すると、そこにはオークの集落があった。
普通のオークが無数におり、上位種もたくさんいた。
こちらの存在に気がついているオークはいなさそうだった。
それを確認した、私は『爆裂槍』を発動し、二十本ほどの槍を生み出した。
今回は威力のみを重視したため、大量に出す事ができたのだ。
そして、作られた槍は重力に従いどんどん加速し落下する。
『爆裂槍』は約十数秒ほどして着弾した。
威力を重視し、不要な機能を全て取っ払っただけの事はあり、魔力消費の割と威力は高かった。
上空から落とした事により運動エネルギーが加わったおかげでもあるのだろう。
だがしかし、オークとはタフで尚且つ再生力が高い事で知られている魔物である。
「生き残りがいるな。耐久力で中堅冒険者を苦戦させる事もあると言われているだけの事はあるな。まあ、通常種は死んだようだけど」
私は空爆により壊滅的被害を受けた集落を『望遠魔法』で眺めながら、そう呟いた。
下をよく確認すると、全身の傷を再生しつつ、こちらを睨んでいるオークや再生しきれない程の重症になりながらも生きているオークが何体もいた。
私は即座に魔法銃に魔石弾を装填し、魔力を込め、引き金を引いた。
数秒もせずに着弾するはずだったその魔石弾は生き残りの中でも特に巨大なオークが持っていた超大型大剣によって粉砕された。
粉砕された魔石弾は爆発したが、オーク達には何のダメージも入らなかった。
「あの偉そうな雰囲気、あの巨体、あのオークはオークキングだな。周りの取り巻きも上位種の中でも強いやつばかりだな。しかも、あいつらは無傷か。手を出す集落を間違えたかな?」
とは言え、いまさら撤退できない。
そんな事をしたら報復にあいつらは付近の人の集落を手当たり次第に襲うだろう。
面倒だが、久々の全力戦闘でもするか。
試したい魔法があるし。
「あいつらの再生能力が厄介だな。高い瞬間火力で一気に葬らないとな」
オークキングを倒す方法は考え付く限り、二つある。
選択肢その一、ここから爆撃を続ける。
魔力が尽きるか、相手の体力が尽きるかの争いになるな。
選択肢その二、地上に降りて近接戦。
魔法使いの近接戦など、馬鹿馬鹿しいと思われがちだが、実際には遠距離よりも近接の方が得意な魔法使いもいる。
師匠とか。
この選択肢のメリットは最大火力で敵を葬れる事だ。
ゼロ距離で魔法を叩き込める。
問題は相手も近接戦が得意だという事だが。
私がそんな事を考えていると地上のオークキングと取り巻きが騒ぎ出した。
そしていきなり、キングとハイウィザードの魔力反応が高まった。
「何をする気だ?」
そう呟きながら、私は魔力を込めた徹甲榴弾を五発、連射した。
ハイウィザードとキングを狙ったのだが、ナイトに全て防がれた。
私はこれ以上射撃しても魔力の無駄だと思い、追撃はしなかった。
三秒ほどして、ウィザードの詠唱とキングの魔力の溜めが終わったのか、急激に魔力反応が高まった。
そして、キングが私に向かって飛んできた。
「は?」
空飛ぶオークキング。
最近のオークキングは飛べるのか?
いや、確かに上位の魔物は魔法を使う事もある。
オークキングほどの魔力量なら確かに飛べても不思議ではない。
でも、ビジュアルが凄い。
巨大人型豚が飛んでくるのである。
頭が痛くなる。
私が視覚情報のせいで思考停止しかけているとオークキングが直ぐに接近してきた。
「まあ、いい。魔法使い相手に空中戦を挑んでくるとは、好都合。さて、オークキングとの楽しい空中近接戦といこうじゃないか」
とりあえず牽制目的で三連発する。
当然のように、防がれる。
キングが剣に魔力を込め、剣が光り出した。
魔力伝導率が悪いようだ。
そしてオークキングから飛んでくる三連撃を下に移動して回避した。
そして、お返しと言わんばかりに至近距離で魔力の籠りに籠った魔石弾を打ち込んだ。
空中という慣れない環境で魔法使い相手に勝負を挑んだ勇敢なるオークキングはだいぶ無理な姿勢で魔石弾を砕いた。
だがしかし、その代償としてキングの持っていた巨大剣に罅が入った。
「ナンダ、イマノハ?」
「答える義理はないよ」
今の魔石弾に込められた魔法は闇魔法の『腐敗』だ。
ありとあらゆる物を腐らせる魔法だ。
金属が腐るのはおかしいと思う人もいるかもしれないが、闇魔法は概念魔法だ。なにもおかしな事はない。
「マァ、イイ。シネ!」
オークキングは罅の入った剣を振りかぶり、攻撃してきた。
回避するも、襲いかかってくる衝撃波を風魔法で逸らし、カウンターを入れる。
今度は徹甲弾五連発である。
剣を破壊する事を優先したためだ。
オークキングは全てを剣で弾こうとしたが、三発目を弾いた時に剣が折れた。
そして、四、五発目をもろに食らったが、一瞬で再生した。
だが、オークキングの魔力は削れた。
効果はあるようで何よりである。
追撃しようとすると、風魔法の『風刃』が飛んできたので、回避。
そして、魔石弾を装填し、オークキングに狙いをつけて発射する。
当たってたまるか!と言わんばかりに回避行動をとるオークキングに向かった弾は吸い込まれるように命中した。
『追尾魔法』の効果である。
そして、ワンテンポ遅れて、オークキングの傷口から禍々しい魔力が漏れ出た。
「ナゼ、サイセイシナイ!?」
「『呪い』だよ」
これぞ、私の闇魔法研究の産物、『呪い』だ。
『呪い』はその対象へ憎悪を利用して発動する。
今回は地上に居た攫われた女性の恨みを利用した。死んでも尚も、渦巻く怨みを利用した。
こうする事によって、本来なら代償を支払わなければいけない『呪い』をノーリスクで使えるのだ。
死者を利用して心が傷まないのかというと、傷まない。
この魔法は確かに死者を利用する魔法ではあるが、同時に死者の怨念は晴らし、成仏させる側面もあるからだ。
つまり、この魔法は闇魔法でありながら、光魔法でもあるのだ。
まあ、元々は教会の神聖魔法の仕組み参考に構築した魔法だから、当然と言えば当然だが。
「それで、オークキング、最後に言い残す事はある?」
オークキングは『呪い』の効果で弱りに弱っていた。
今更だが、『呪い』の効果は相手の魂を攻撃すると言うものだ。
ようするに相手の魔力を削れるのだ。
「ナゼナノダ?ナゼワレラヲコウゲキシタ?」
オークキングが拙い言葉で返答してくる。
にしても、「何故?」ときたか。
そんなの決まっているじゃないか。
「共存の意志なき魔物は滅べと言うのが私の理念なの。オークは人間と関わらずにいようとしても繁殖の為に人間の女を攫う必要があるでしょ?」
オークにメスの個体は存在しない。
つまり、異種族のメスを攫ってくるしかないのだ。
滅ぼす以外に選択肢ある?
と言うか、『呪い』の効果がこんなに覿面なのがオークが「悪」である証拠じゃないか。
「ソウシナケレバワレラハホロブ。シカタガナイノダ」
「そうね。確かに攫わないと繁殖できないものね。だから仕方が無いのよね」
「ソウダ」
「そう。だから私も仕方が無くあなた達を殺さないといけないの。それじゃあ、さようなら、オークキング」
私はそう言うと引き金を引いた。
オークキングの腹に大きな風穴が空き、キングの魔力反応が消滅した。
私は素早く、魔法でキングの魔石と頭だけを回収した。
残された遺体は魔法の効果が消え、重力に従い落ちていった。
地上を見ると残されたオークたちが絶望していた。
嘆いているオークもいた。
復讐しようとしているオークもいた。
「仲間からは慕われていたのね。まあ、あいつらもこれから殲滅するのだけれど」
私はそう呟き、集落のオークを一匹残らず殲滅すべく魔法銃を構えた。
書いていて思ったのですが、空飛ぶオークキングって想像すると頭が痛くなります。
Q何でオークキングを風属性にしたの?
Aなんとなく。




