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第十八話 王都に到着!

亀に乗っているのではないかと錯覚するほどの遅さで進むこと、一週間弱。

私たちは遂に、ガリア王国王都ガリアベルに着いた。


「ようやく、着きましたね」


「これでも、お嬢様が色々と魔法を使ったおかげで、早く着いた方なのですが」


いや、これよりも遅いのは勘弁してほしい。

帰りも魔法で加速するか。

にしても。


「大きな城壁と大規模な結界ですね。見たところ無属性と神聖属性の複合結界ですか?大量の魔石と聖堂で発生している祈りの籠った魔力で維持されていますね」


出来れば、魔法陣を解析してみたいのだが、無理だよな。

国家機密だよな。


「一目でそこまでわかるとは、成長しましたね」


「ありがとうございます。ところで師匠、先程から馬車が止まったままなのですが?」


「検問です。旦那様と奥様の荷物が多かったのでしょう」


「私の荷物なんて魔法袋(マジックバック)の中に入っている物ぐらいしかないのですが」


「貴族は見栄えの為に行列を作ったり、派手な装いをしたりします。ここだけの話、旦那様は特にそういう事に固執する方なので」


その事なら知っている。

大分、昔から知っている。


「私のように質素堅実を心掛けて欲しいですね」


「お嬢様が例外なのです。もう少し、可愛らしい服を着てもいいのですよ」


無理!

絶対に無理!

今ですら、見栄えのためにこれぞ貴族令嬢の服というかんじの服を着せられているのに。


「今、着ている服が許容範囲ギリギリアウトです」


「その内、慣れますよ」


「はぁ、ところで、いつ国王陛下に謁見するのですか?」


「まずは王都のアシュトン伯爵家の屋敷に行きます。そこで、王城からの使いを待ちます。そして、その使いの方に告げられた時間に王城へ赴きます。その後、謁見します。今回は非公式の謁見ですが、くれぐれも失礼が無いようにお願いしますよ」


非公式の謁見なのは、デビュタント前の私と、武器である魔法銃に対する配慮なのだろう。


「わかっていますよ」


「もしかしたら王宮魔法使い見習いとして勧誘されるかもしれませんね。その歳でそこまで魔法を修めている魔法使いはなかなかいませんから」


王宮魔法使いとはこの国で特に魔法が優れているとされた者のみが任命される名誉ある職であり、魔法使いなら誰しもが一度は夢見る地位である。

まあ、何事にも例外があるが。


「私が興味があるのは王宮魔法使いではありません。王宮魔法使いの権限がないと入れない禁書庫にです」


「その発言を私以外にしたら問題になりますからね」


「わかっていますよ」


禁書に興味がある。

つまり、禁忌に興味がある。

危険思想だ!

となるのである。


「なんとか、王宮魔法使いとお近づきになって同伴という形で入れればいいのですが」


「できなくはないでしょうが、王宮魔法使い見習いになるのが条件になるでしょうね」


「それだと、国からの命令が出るではありませんか?私は好き勝手に研究がしたいのです」


「それも問題発言ですからね?」


国からの命令に喜び勇んで従うのが貴族の鑑だとされているのである。

貴族が有事の際、最前線で戦うのは分かるが、イエスマンなのは如何なものか?


「わかってはいますよ。でも、これが私の嘘偽りの無い本音ですから」


そうだ!

褒美がもらえたら、禁書庫の鍵を強請ろう。




◆◇◆◇


十分程して、ようやく検問が終わった。

そして、馬車が王都を囲う超巨大城壁の西門を通過した。


「結界に触れましたね」


「これで出入りの人数を管理しているのです」


これほどの結界を誤魔化す事の出来る魔法使いなんてこの世界中で数人いるかいないかだろう。

あれ?不正入国(正確には不正入都)の難しさだけなら現代日本すらも上回っているではないか!

やはり、魔法技術は凄い。


「この結界、とんでもない性能してますね」


「天級魔法ですからね」


天級魔法とは上級魔法の三段階上の魔法であり、最上位である神級の一段したの魔法だ。

個人で発動した者はいないとされている魔法でもある。


「にしても、アシュトンフォードとは比べ物にならない活気ですね。人の数が凄いですね」


私は窓から外を見ながらそう言った。


「近くに迷宮がいくつかあり、腕に覚えのある冒険者が集まってくるのですよ。それに商人たちもたくさん来ますからね」


「迷宮ですか。行ってみたいですね」


「やめてください。嫁ぎ先がなくなりますよ」


「ならなおさら、行かなくては」


迷宮から採れる資源には魔法の発動を補助する触媒があると本で読んだ事がある。

嫁ぎ先潰し兼資源採取のために、行かなくては。




◆◇◆◇


そんな会話をしばらくして、私たちの馬車は王都の貴族街に入った。


「たくさんの屋敷がありますね」


「王国中の貴族の屋敷がありますからね。奥の王城に近い屋敷ほど、高位の貴族家の屋敷になります。アシュトン伯爵家は真ん中のあたりですね」


確かに進むほど、屋敷が豪華で巨大になって行く。

アシュトン伯爵家の屋敷が真ん中なのは、これと言った特産物もなく、かと言って落ちぶれている訳ではないからなのだろう。

そして、貴族街を進むことしばし、馬車が止まった。


「どうやら着いたようですね」


「そのようですね」


師匠が立ち上がり、扉を開け先に降りた。


「お嬢様、お手を」


「ありがとうございます」


私はエスコートしてもらい、ステップに降りた。

私は地面に降り立ち、屋敷を見上げた。


「アシュトンフォードの屋敷よりも小さいですね」


それでも、十分大き過ぎるのだが。


「王都の土地は貴重ですから」


私は前の馬車に乗っていた父と合流し、屋敷の玄関へと進んだ。

ちなみに、今更過ぎるが、母は領の屋敷で留守番している。

執事さんが扉を開けると、そこにはメイドさんたちと執事さんたちがずらりと並んでいた。


「「「ようこそ、御当主様、お嬢様!!!」」」


出た!

貴族家名物、ずらりと並び出迎え!

これの正式名称とかあるのかな?


「出迎え、ご苦労」


父がそう言うとみんな、仕事に戻って行った。

いくらこの屋敷が大きいとは言え、人数が多すぎる。

見栄えのためなのだろうな。

無駄の極みだな。

私がそんな事を考えていると侍女頭らしき人が出てきて、部屋に案内してくれた。

中に入ると、内装は領の屋敷の自室とあまり違わなかった。

私は扉を閉め、魔法袋(マジックバック)から例の魔法具を取り出し、魔力を流した。

そして、『遮音結界』が張られた。


「やっと着いた。馬車旅なんてもう二度としたくないな。あんなやつよりも『加速魔法』で吹っ飛んだ方が断然速いわ!」


『遮音結界』を愚痴の為に使う。

我ながら、こんな使い方をする魔法使いなんてなかなかいないだろう。


「まあ、それはさておいて、この後の予定はどうしようかな?」


やらなければならない事とやりたい事がある。

前者は謁見の事だ。

だがしかし、これはまだ日程がわからないので考えても仕方がない。

後者は迷宮探索だ。

だが、ギルドの管理している迷宮に入るには最低でも冒険者ランクがCランクはいる。

難易度の高い迷宮はそれ以上だ。

私は登録するだけしておいて、まだ何もしていないからDランクのままなのだ。


「はあ、せめてBランクぐらいには上げたいよな」


冒険者ギルドのランクの上げ方には二種類の方法がある。

依頼の達成と魔物の討伐だ。

依頼は依頼人とのやり取りで時間がかかる場合がある。

つまり、時間がかかる(効率が悪い)


「ちょっと、狩ってくるか」


私はそう呟いて、魔物狩りの準備を始めたのであった。

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