表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この庭の芝生は青い  作者: 心愛
無実行きの切符
PR
85/85

辻褄

「まず最初におかしいと思ったのは、女性のとった行動だ」


 千春は、15度程度上を向いて考えているが、すぐに首を傾げて諦めてしまった。そして苦笑いを浮かべた。


「何かおかしなとこでもあったかな」


「問題があったっていうよりか、そうするしかなかったんだろうが、その状況がおかしいんだ」


「…どういうことだい?」


「女性は『自転車のナンバー』を見て自転車に乗っている生徒が向ケ丘高校の生徒だと分かったわけだろ?つまりそれがなければどこの高校か分からなかったってことだ」


 自転車のナンバーがなければ、この事件は既にお蔵入りだった。でも実際はそうならなかった。


「本来なら、俺らにはもっと分かりやすく向ケ丘高校に通っているという目印がある」

 

 俺は自分の体にまとっているものを掴んで、見せつけるようにして言った。


「制服だ。犯人は、制服を着ていなかったんだろう」


 俺と相川は、帰り際におばさんに話しかけられた。そのおばさんは俺たちが向ケ丘高校に通っていることを知っていた。それをどこでどうやって見分けることができたのか。それは俺たちが制服を着ていたからだ。この近くに住んでいる人なら、向ケ丘高校の制服がどんなものか把握していてもおかしくはない。というかむしろしていないとおかしい。


 でもあの日、被害者の女性は、自転車のナンバーを見ないと犯人の大まかな身元を特定することはできなかった。その理由は犯人が制服を着ていなかったからという1つの結論を導き出す。


 千春は、まだ100%の納得はしていないようで、隙をついてくる。


「1回帰って、着替えて出かけてたっていう可能性は、ないの?」


「もちろんそれもあるだろうが、時間的にそれは不可能だ」


「時間…あ、そうか」


 梶原は、理解したようだ。あの集会の場にいなかった千春よりも、当事者の方が、やはり内容を覚えているものなのだろう。


「そうだ、時刻は4時半。学校が終わるのは4時。掃除当番なら掃除をするからそれよりも遅くなる。木山の家がどこにいるかは知らないが、例え学校から5分程度の場所に家があったとしても、もう1人の到着を待つ必要がある。犯行に使われたのは木山の自転車だから、もう1人は徒歩通学。そいつも家に帰ってから、服を着替え直して家を出て、木山の家で合流してから、外出。どう見積もっても、この行程は25分はかかると思わないか」


 これだけじゃ、少し説得力が弱いような気もする。思った通り、千春は納得しきっていない顔をしている。でもそれだけじゃない。木山が無罪であるという決定的な証拠が1つある。


「第一、木山は犯行のあった木曜日、自転車で学校に来ていない」←傍点


「え?」


「梶原、財布を拾ったのはいつだったか、覚えてるか?」


 梶原は、顎に手を当てて、少しの間眉の形を変えながら、思い出していた。そして、何かに気づいて、目を見開いた。


「えっと……木曜日だ」


「昼に木山と偶然話したんだ。その時言ってた。『この前なんか財布落としちゃって、親切な人が駅に届けてくれたんで助かったんですけど』って。そこであの日財布を落としたのが木山だと確信した」


「でもなぁ、家に帰ってからでも時間は間に合うんとちゃう?」


「4時に終わって、最寄りの駅から出る最速の電車は上りの4時8分か下りの4時4分だが、距離を考えると、それこそ自転車がないときつい、というか無理だ。次にある電車にいつも乗る生徒が多い。普段自転車通学の木山にとってみれば尚更、電車通学の生徒についていくだろうから、次は上りの4時20分、下りの4時17分の電車に乗るだろう」


 これは全部、梶原が調べておいたものだ。そして補足をするように梶原が続けた。


「それで、その駅から最寄りの駅までの電車は上りが4分、下りが6分。時間で見れば、確かに現実的じゃあないね」


 これで木山が犯人じゃないという結論は出た。残る問題は


「せやったら、問題の犯人は誰やねん。この高校の生徒やないんやろ?」


 別に、木山の無罪が証明できればそれで良いのだが、あの時の木山の言ったことは、その犯人につながる大きな手がかりとなっていた。


「木山は、自転車を盗まれていたんだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ