黒いヴィラン
月明かりが照らす 暗い路地を
男が1人 走って行く
後ろを気にしつつ 必死に逃げて行く
「なんだよ お前 俺と同類のくせに なんで俺を追うんだ!?」
男は走りながら 背後の暗闇に向かい叫ぶ
“それ”の気配は感じるのに
目で確認する事が出来ない
“それ”の噂は聞いていた 有名な話だ
“その男”に遭って 無事に済んだ者は少ない
噂によると“その男”は
何よりも“己の正義”を重視し
ヴィランで有りながら
“己の正義”に反する者は
同じヴィランでさえ狩る男で
複数の能力を持ち
狙った獲物は絶対に逃さない
地球上 最も強いヴィランと言う話だ
「そんな男に 捕まってたまるか 俺は生きて星に帰る」
俺は帰らなければならない
この星のヒーローや警察
ましてや ヴィランなどに
捕まるわけにはいかない
「帰らなければ……!」
男は 必死に走った
ついに 乗ってきた宇宙船が見える所まで来た
もう帰れる そう思った
なのに
“その男”は宇宙船の前に立っていた
後ろから追ってきていたはずだ
だが “その男”は目の前に立っている
「お お前……!何者だ……!?」
「黒き翼は ジャンキー・ジャンクス 盗む能力を持つ者なり 我が姫の平穏を乱す者よ 我が手により闇に帰るが良い」
ジャンキー・ジャンクスと名乗る“その男”は
烏を模した黒いスーツを身にまとい
それは一見ヒーローのスーツの様に見えた
白と黒のマントを二重に羽織り
鳥形のアイマスクで顔を隠し
濃い焦げ茶の長い髪は 太ももに達する長さで
暗闇の中 月明かりで 怪しく光っている
「くそ……っ!」
もう一歩だった もう少しで 星に帰れた
こんな所で こんな男に 遭わなければ
いや 噂では 生き延びた者も居る
地球最強 とは言え 絶対では無い
俺だって やってやる この男を越えて星に帰る
男は 意を決して
ファイティングポーズをとった が
もう既に 遅かった 気付いたら天を仰いでいた
既に 地面に叩きつけられた後だった
嘘だろ……? ダメだ 起きろ 起きるんだ……!
男は 必死に起きようとする が
起き上がる事が出来ない
地面から伸びた蔓が 男の体を縛っていた
ジャンキー・ジャンクスと名乗る“その男”は
噂通り 地球上で最も強いヴィラン だった
男は 自分がいつ倒されたのかも解らず
捕縛され 地面に横たわっていると
背の高い男が1人 宇宙船の影から現れた
「流石だ J2」
背の高い男は ジャンキー・ジャンクスを
“ジェイ・ツー”と呼び たばこを吹かしながら
縛られた男の隣までやってきて
警察手帳を見せ
“魔法犯罪対策室”の荒木だ と名乗った
「お前……ヴィランのくせに……警察と手を組んで……!」
「ジャンキー・ジャンクスを動かせるのは警察では無い 我が姫だけだ」
そう言うと J2は暗闇の中に消えていった
「すまんな アレは 面倒な奴なんだ」
荒木警部は J2の消えていった方を見ながら
頭を搔き まあ 役には立つんだが と言い
男に 手錠を見せた
「お前が 魔法省に送られるまで 長い付き合いだ よろしくな」
そう言って 警部は 男を引っ張っていった




