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5話・冒険者ギルド

 

 翌朝、俺は早速町へ向かいオークを買い取ってもらった。

 合計金貨二枚、破格の稼ぎだ。

 オーク一体でこれだけ稼げるのなら、もっと強い魔物はどれだけ金が貰えるのか。


 期待に胸を膨らませながら、冒険者ギルドへ向かう。


 途中、住民がチラチラと俺を見ていた。

 昨日の今日だ、仕方ない。

 無視して歩く。


 約三十分後。

 冒険者ギルドに到着した。


 外観は巨大な洋風の屋敷、だろうか。

 三階建てでとにかく立派だ。

 しかし、入口から既に喧騒が聞こえてくる。


 噂通り、荒くれ者の巣窟らしい。

 怖い……いや、怖がるな。

 オークを単独で倒したんだ、そこら辺のチンピラ冒険者に負けるもんか。


 この程度でビビっていたら、俺の覇道の名が廃る。


「……いくぞ!」


 気合い充分、勢いよく扉を開けた。


 ……一斉に睨まれる。

 俺は平謝りしながら、そそくさと受付へ。

 ああ、どうしよう。

 いきなりやらかしてしまった……


「あの……冒険者ギルドに、登録したいんですけど」

「登録ですか? はい、少々お待ちください」


 受付の職員は綺麗な女性だった。

 青髪の長髪でスタイルも良い。

 こういう人と結婚までいくのが、夢の一つだ。


「……はい、では登録についてご説明させていただきます」


 お姉さん(心の中でそう呼ぶ事にした)は青い水晶玉みたいな物を持ってきたから説明を始めた。


 冒険者は基本的に自己責任であり、依頼中に死亡したとしてもギルド側は一切責任を負わない。

 ただし、一応保険というか、自分が死んだ時にその財産の引き渡し人を決める事は出来る。


 ギルドに登録すると『ギルドカード』が貰える。

 これは身分証明書の代わりにもなるそうだ。

 ギルドカードにはその本人の冒険者ランクによって色が変わるらしく、最初は最下位の白色。


 そこからランクを上げていくと色が変わる。

 ランクを上げるには難易度の高い依頼を多く引き受けるのが一番だが、しっかりと自分の実力に見合った依頼にしないとあっさり死んでしまう。


 冒険者は基本自由だが、守るべき最低限のルールはある。


 ・一般人への攻撃を禁じる

 ・冒険者同士の争いを禁じる

 ・どうしても争いが収まらない場合は、ギルドに申請して決闘扱いにする事

 ・ギルドの名を貶める事を禁じる


 これらを破った場合、罰則が発生する。

 罰則にも種類はあるが、一番重いとギルドの永久追放及び労働施設への強制送還、更に罰金として金貨三十枚と、もう普通の生活には戻れないレベルである。


 そしてこの重い罰則、一年に一人は発生するらしい。冒険者の気性の荒さが目に見えて分かる。

 まあでも、人間としてのモラルを守ってれば普通は罰則なんて発生しない。


 それから冒険者には緊急依頼が偶に発生する。

 これは断る事が出来ない、冒険者としての義務だ。

 強引に断った場合、最悪ギルド除名処分となる。


 お姉さんの話しは纏めるとこんな感じだった。


「よろしければ、こちらにサインをお願いします」

「はい」


 読み書きだけは気合いで覚えた。

 成り上がる為にも必須だからだ。


「はい、ありがとうございます。では、こちらに手をかざしてください」


 言われた通り、水晶玉に手をかざす。

 水晶玉が輝き、ギルドカードが水晶玉の下にある魔道具から生み出された。


 これが俺の、ギルドカードか。

 まだ真っ白だけど、ここから始まるんだ。


「スペードさんの今後のご活躍を、ギルド職員一同ご期待しております」


 最後にお姉さんがそう言って登録は終わった。

 さて、これからどうしようか。

 依頼の用紙を見に言ってもいいし、装備を買い揃える為に町の店を回るのもいい。


 その前にギルド内を散策するか。

 酒場へ行ってみよう……その時だ。


「おいおい、こんな雑魚が冒険者だって?」


 汚い声音が耳に入る。

 振り向くと、ニヤついた男が俺を見ていた。

 スキンヘッドの頭が輝いている。


「まあ、そうですね」

「はっ、やめろやめろ、お前みたいなのが冒険者やってもすぐ死ぬだけさ」


 ドッと他の冒険者達が笑う。

 ギルドの職業達は青ざめた表情だったり、暗い顔で俯いていたりと様々だ。


 ……成る程、ここはこういうところなのか。


 郷に入っては郷に従え。

 俺もこの世界の基準に従った挨拶を返した。


「ご忠告は感謝します、でもーー」

「あん?」

「貴方よりも、長く生きれる自信はあります」


 一瞬の静寂が訪れる。

 そしてピシリと、空気が割れた。

 勿論、冒険者達の笑い声によって。


「ぶははははっ! マックスお前舐められてるぞ!」

「やるじゃねーか新入り!」

「朝から笑わせんじゃねーよ! ははははっ!」


 冒険者はみーんな笑っていた。

 俺の前に立つ、ただ一人を除いて。

 その冒険者、マックスは怒りで身を震わせながら言った。


「……ガキ、今この場で殺してやるよおおおおおおっ!」


 マックスは激昂しながら殴りかかってくる。

 自分から吹っかけてきた癖に、沸点が低い。

 俺の一番嫌いなタイプだ。


 冒険者同士の争いは禁止事項とさっき教えられたばかりだが仕方ない、この場合は正当防衛だ。


 俺はマックスの拳をサッと避け、横に回り込んで彼自身の勢いを利用した蹴りを打ち込む。


「ぐふうっ⁉︎」


 マックスは崩れ落ちた。

 またしても、シーンと静まり返る。

 だが、さっきとは静寂の質が違う。


 それは、驚愕。

 新人冒険者が、絡んできた冒険者を撃退したという衝撃。

 冒険者も、職員も、ポカンと口を開けていた。


「「「……お、おおおおおおおおおっ⁉︎」」」


 ギルド内がこれでもかと騒つく。

 近所迷惑にならないか心配だ。


「すげーぞ! 新入りがマックスに勝ちやがった!」

「マックスの奴、あれでもCランクなんだぞ⁉︎」

「おいおい、こりゃあ期待出来る新人だなあ!」


 え、このおっさんCランクなのか?

 冒険者のCランクと言ったら中堅レベルだ。

 俺は能力看破でマックスのステータスを見る。



 名前:マックス

 レベル:2

 性別:男

 年齢:31

 職業:冒険者(Cランク)

 スキル:【腕力強化】【大剣術】【ベットメイク】



 本当だ、確かにCランクだ。

 それにスキルも中々良い。

 ベットメイクだけは似合わないが。


「お姉さん、今のは仕方ないですよね?」

「はっはい、も、勿論です……!」


 お姉さんから言質をとる。

 さてと、邪魔者はいなくなった。

 ゆっくりギルドを散策しよう。


 と、思ったのだが。


「おい新人! ほら飲めよ、俺の奢りだ!」


 こんな感じでずっと酒を飲まされた。

 俺はついこの前まで僅かな食べ物と水で生きてきた、そんな俺からすればギルドの酒場から提供される酒も料理もご馳走に他ならない。


 形だけ遠慮しつつ、好きに飲んで食べて豪遊した。


 冒険者の仕事?

 ああー、多分、明日から頑張るよ。

 今は酒だ、酒!




 ーーその日、俺は夜まで飲んでぶっ潰れた。

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