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異世界の落ちこぼれは決心するようです。

GW中にこれともう一部を上げたいと思っています。

「アンタが『計画』を考えたのならその……なんだっけ?『裏』のアンタとやらに任せずにお前が全て実行したらいいじゃないか。後なんで『裏』のアンタは計画を把握しきれていないんだ?ダメだろ」

「い、意外容赦がありませんね、君は」


カルミアはダダ甘な紅茶と新たに淹れられた無糖の紅茶、二つを挟んでルーンに質問攻めにされていた。


「当たり前だ、これには妹の『リリー』のこれからと俺のこれからがかかっているんだ。うっかり泥船なんかに乗せられちゃたまらない」

「な!人の人生をかけた計画を泥船呼ばわりしますかね!?」


憤慨したように声を荒らげた『表』のカルミアは、いったん無糖の紅茶を一口飲んで、息をついた。


「まぁ、確かに君の言いたいことも分かります。実はこれには深い理由がありましてね」

「深い理由?」

「はい、実は『裏』の私にはほんの少し欠陥がありましてね、その欠陥とは……」

「その欠陥とは……?」


声をひそめたカルミアにつられて、ルーンも唾を飲む。


「なんと!ある程度以上の未来の事を考えられないんです!」

「…………………」

「あ、やめて下さい、その「こいつ何言ってんだ」っていう目。私も彼女の記憶を参照しているだけなので、詳しい事は言えないんですが、彼女の記憶を見るところによると、彼女は二週間以上後の事を考えようとすると頭が霞がかるんですって」


こう、とカルミアは自分の目の前で左手をひらひらさせた。


「だから彼女は、これから『どうすべきか』は分かるんですけど、それが『どうゆう影響』を及ぼして結果『どうなるか』が想像出来ないらしいんです」

「ふむ……少し分かりづらい気がするが……」

「例えばですね」


カルミアは机を見回して、先程までプリンの乗っていた白い陶器の皿を手に取った。


「極端な例ですが、この皿を上に放り投げたらどうなります?」

「そりゃ、落ちるな」

「はい、彼女はこの皿を上に放り投げ、それが落ちるという所までは考えられるのですが、この皿が『どうなるか』つまり割れて、『どういう影響』を及ぼすのか、例えば君が割れた欠片を掃除しなくてはなりません。という未来を考える事が出来ないのです、これは本当に極端な例ですけどね?」


なるほど、とルーンは心の中で相槌を打った。

とすると、『裏』のカルミアが先ほど言葉に詰まったのは、例えば『リリー』を救出する作戦にはどのくらいの資金が必要で、その為にはどのくらいの時間が必要か。という事を考える事が出来なかったからだ。そしてそれはとても……


「面倒だな、色々と」

「そうなんですよね、色々と」


そこで私の出番な訳です、とカルミアは胸を張った。


「私が計画を練ることで、彼女は彼女の『力』を最大限発揮出来る」

「アイツの『力』?」

「まぁ薄っぺらい言い方をすれば才能?私はこの才能って言葉が嫌いなんですけどね」

「才能……」


カルミアの言葉をオウム返しに呟くルーン、その『才能』という言葉に嫌な顔をしながら、頷いた。


「この落ちこぼれの巣に物怖じせず入っていける度胸、人を怒らせ、泣かせ、夢中にさせる事の出来る話術。どれも私には持っていないものです」

「アンタ達は自分自身の欠点を補いながら生きている……という事か?」


このルーンの言葉にカルミアは、まるで華が咲いたかのような優しい笑みを浮かべた。

今まで腹の立つ、それでいて引き込まれる『裏』のカルミアの妖しげな微笑みしか見ていなかったルーンは、『表』のカルミアが不意に見せた笑顔にドキリとしてしまう。


「はい、私達は一心同体、二人でなければ、二人の悲願は叶わない。互いに互いを、必要としているのですよ」

「………そうか」


◇◇◇◇◇


「本題に戻りましょう。えっと、妹さんの救出にかかる時間の違い?でしたっけ」


あぁ、と頷くルーン。カルミアは目を閉じ少し黙考した後再び目を開いた。


「短期契約だと一年半、長期契約なら三ヶ月です」

「!?随分と差が出るな」

「あれ?私に聞いたでしょう?君は最早計画の一部なんです。第一幕で帰ってもらっては、私も彼女も困るんですよね」


カルミアのルーンはため息をつくと、自分の手を見詰めた。実の所、ルーンの心は決まりかけているのだが、貴族なら誰でも持っている最低限度のプライドが、ルーンの言葉の邪魔をした。先程は、カルミアに力を貸すと言ったが、カルミアは臣下になれと言った。ならば力を貸すのではなく、忠誠を誓わねばなるまい。


(俺が、子爵の貧乏貴族の、しかも女に忠誠を?)


ふと幼い頃のリリーの顔が、目の前をよぎる。公爵の家へ養子に出されると決まった時の不安そうな顔、助けてやりたい、切にそう願った。神でも悪魔でも構わない。どうか、妹を。


ルーンは自分の手から目を離すと、カルミアと正面から向き合った。カルミアの紫の瞳は、真っ直ぐにルーンの瞳を見つめている。


「絶対に妹を……リリーを助けてくれるんだな」

「えぇ、約束します。君の『願い』は私が叶える」


ルーンは立ち上がり、カルミア目の前まで歩み寄ると、跪いた。プライドなんてどうでもいい、妹を助け出せるなら悪魔にでも力を貸そう。たとえそれが国を滅ぼそうとしていても……


「この『ルーン=ディズヌフ=タンペット』御身の前に、【末永く】忠誠を誓おう!」


外の豪雨はいつの間にか止み、晴れた空の鮮やかな夕焼けが、ルーンの横顔を照らしていた。

桔梗(英名:バルーンフラワー)の花言葉

変わらぬ心、変わらぬ愛、忠誠


活動報告にルーン誕生秘話を載せます。興味のある方は是非

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