社交性0の冥界の王
悪役令嬢キャサリンは城に戻ってケルベロスたちの遊び相手になっていた。
「僕がキャサリン様と遊ぶんだよ!」
「いいや、僕がキャサリン様と遊ぶんだい!」
(おいおい、ケルベロスのイメージは、いったいどこに行ったのよ……?)キャサリンはそう思いながらボールをブンッと投げた。
ケルベロスたちがボールを追いかけている。
それにしても、前世と生前の記憶とはなんだろう? そうキャサリンは考える。しかし、まだ答えは見つからない。
「キャサリン? すっかり冥界の城に慣れたようだな?」
「ええ、ハデス様。ところで、どうしてハデス様は神ではなくて、王なのですか?」悪役令嬢キャサリンは何気なく聞いたつもりだった。
だが、冥界の王ハデスの様子がおかしい。
「どうしたの? ハデス様?」笑顔がひきつるキャサリン。
「妻であるキャサリンになら話してもよいか……。実は私は神々の集まりに行かないからだ」ハデスはそう言った。
「え、えっと、どういうわけですか?」悪役令嬢キャサリンは続けて聞いた。
「私冥界の王ハデスは、その……いわゆる、社交性というのがないのだ」ハデスは恥ずかしそうに答えた。
冥界の王ハデスは社交性がない。
冥界の王ハデスは恋愛オクテ。
冥界の王ハデスは天然。
それらを思い浮かべて、キャサリンはつい笑い出しそうになった。まさか、この段違いの力をビリビリと感じさせる冥界の王がこんなのだなんて、と。
「つまりは、その神々の集まりに行かないと神にはなれないのですよね?」キャサリンは今にも笑いそうだ。
「ああ、そういえば、女神アフロディーテはどうしているだろうか?」冥界の王ハデスがそう言った途端に、悪役令嬢キャサリンの目の色が変わる。
「ハデス様? 女神アフロディーテはその神々の集まりに行くのですか?」
「ああ、その通りだが? どうしたのだ?」
キャサリンは復讐こそは考えないのだが、女神アフロディーテにもう一度会って話してみたい、と思い、
「ハデス様? その神々の集まりに行きましょう!」と自然な笑顔で言った。
「え、でも、私は社交性がない冥界の王……」
「ハデス様がそんなわけでいいわけがありません! とにかく、社交性を高める練習をしましょう!」悪役令嬢キャサリンは押しに押した。
さて、キャサリンとハデスはどうなることやら?
続く