偽りの世界
朝四時、湊が起きていた。
誰もいなくて、静かで足音が響くだけの廊下。
ただ、誰も起きていないだけなのに、その空間に『孤独』を感じていた。
一人墓場へ行く。
二人の墓に手をあわせる。
「湊も来てたんだ」
その声は後ろから聞こえた。
振り返るとそこにはルークが花を持って立っていた。
湊は立ち上がり頭を下げた。
「本当に、すまない」
ルークはこちらへ近づきながら喋る。
「謝るのは僕の方さ、根拠もなしに湊がアグナを殺したと言ってしまった。それに本当に殺しているならそんな悲しそうなオーラを墓の前で出さないだろう」
そういって、アグナの墓の前に座る。
持っていた花はアグナを埋めている土の上に置く。
ピンクや白、紫ととても綺麗な花だった。
するとそこに浩正がやってきた。
「おはようございます。先日の二人で心配でしたが……大丈夫みたいですな」
「あぁ、おはよう」
ルークはまだアグナの墓を見ていた。
「かなりショックだったのでしょう」
「だろうな」
二人はルークを見ながら話を進める。
浩正がアグナの所にある花を見つけた。
「あの花はルークが?」
「あぁ、この時間だと町の店も開いてないだろうからそこの森から採ってきたんだろう」
「ベルフラワーと桜草ですな」
「それがどうかしたのか?」
湊は不思議そうな顔をして浩正を見る。
「ベルフラワーの花言葉は感謝。桜草の花言葉は、沢山ありますが……」
ルークは立ち上がり振り向く。
「その中でも俺が言いたいのは『憧れ』だよ」
湊はうつむいた。
浩正は静かにうなずいた。
「ルーク、湊。今日一緒に買い出しに行きませんかな」
「別にいいよ」
「はい、ぜひお願いします」
そして三人で屋敷の中へと戻っていった。
ルークは、朝食まで素振りをすると言って庭に行った。
浩正は、自室に戻ると言って二階へと上がって行った。
湊はホールで座ってゆっくりすると言って椅子に座っていた。
少しすると、湊は調理場へと向かった。
入ったところの隣にある棚を探る。
紅茶の葉の瓶を見つけ、その中に白い粉状の物を入れる。
棚にしまって出ようとした時に、ミランと出くわした。
「ここに居るなんて珍しいね、つまみ食い?」
何をしていたかまでは見られていないようだった。
「――そうだよ」
流れを合わせるために嘘を吐く。
「今から作るから待っときなさい。簡単なものにするから三十分ぐらいかな」
「分かった、ホールの所で待っておくから、声をかけてくれ」
「はいはい」
そこで、湊は調理場を出た。
そこで、時和とぶつかる。
「キャ」
と、小さい声が聞こえた。
「キャって、お前男だろ」
と、時和は顔を赤らめ、湊を睨む。
「そんなことはどうでもいんですよ」
「……すまない」
時和は頬を膨らませながらではあるが、許してくれた。
と言っても、走っていたのは時和の方なんだけど……。
「なんで湊さんがここに?」
「つまみ食いだ」
ミランに行った事を言っておく。
「な、貴方と言う人は――」
怒られそうなので湊は流す。
「さっきミランが入ってきたぞ」
時和はふと、力が抜けて慌てだす。
「本当ですか!また後で」
そう言って急いで調理場に入って行った。




