遅かったありがとう
湊はコーヒーを飲みながら考える。
確実に浩正は湊に警戒心を持っていた。
ルークは、コンロンの言葉で落ち着いたはずだ。
浩正さえ、見ておけばおそらくは大丈夫だと思った。
ふと、
「ごめん」
と、呟いた。
一度だけでなく、二度、三度と繰り返す。
裏切ってごめん。
嘘をついてごめん。
殺してごめん。
様々な理由で謝る。
頬には一粒の涙が垂れて、月明かりで輝いて見えた。
湊の声は、震えていた。
墓場ではミランと茜がアグナと由紀奈を埋めていた。
後ろでは、湊以外の皆が見守っていた。
胸のあたりまで埋めてミランは皆の方を見る。
「顔を見るのはここで最後です」
そういってミランと茜は後ろに下がる。
ルークがアグナの顔を見る。
「なんでアンタが殺されてんだよ。また稽古してもっと強くなった姿見てほしかったんですよ。一緒に馬に乗って散歩とかもしたかったです。そして正式に騎士になって肩を並べて戦う時が来たらいいな、とか思っていたんですよ。俺のその全部の夢を壊すんですか」
我慢していたがついつい涙がこぼれてしまう。
大粒の涙が止まらなかった。
「もう、絶対に叶わない夢になってしまった。できる事ならあと一度戦ってみたかった」
今流れている涙をふき取る。
それでもまだ流れてくるが我慢をする。
「ありがとうございました。生きている時に顔を見て言いたかったです」
「そして――さようなら」
ルークは元いた場所へと帰っていく。
入れ替わるようにケインが出てくる。
まずアグナの顔を見るように座る。
「長い間本当にありがとう。アグナのおかげでここの平和も守られ、笑顔も守ってくれたその事に深く感謝を」
ケインは頭を下げる。
そして由紀奈の方を見る。
「少しの間だったが、本当に良く動いてくれたと思う。人形と見破ることが出来なかったのも私の責任だ。先に分かっていればこんな事にはならないように出来たかもしれなかった。すまなかった」
ケインは後ろを振り返り、皆の顔を見る。
今話したい相手はいない事を確認し、ミランと茜に合図を送る。
ミランと茜はシャベルを持ち、アグナと茜の顔に土をかける。
そして、代表として、ルークがアグナに花束を、時和が由紀奈に花束を添える。
少しすると雨が降り出し、濡れる。
それでも皆は少しの間その場を動こうとはしなかった。




