真実と嘘
湊は走って、屋敷へと戻った。
丁度庭で、浩正と茜と出会う。
「浩正、茜。すまない」
と、湊の急な謝罪に二人は顔を合わせて不思議そうな顔をする。
茜が湊へと視線を戻すと、湊の服に血が付いているのが見えた。
「どうしたのその血――」
怯えるように、湊へと聞く。
すると瞬時的に浩正が茜を隠す。
「事情は中で話す。皆をダイニングルームへ呼んでくれ」
湊は息を上げて二人に言った。
「茜、呼んできてください。私は湊と少し話してから行きます」
「分かった」
茜は浩正に返事をして走って呼びに行った。
浩正は湊を見つめる。
「浩正、どうした」
湊を見たまま答える。
「ミランさんや茜、時和も皆が湊に怯えています。由紀奈が毒を仕込んだ時からずっと、それでも皆が湊の事を信じようとしています。お願いですから変なことをしないでいただきたい」
湊は考える、何故そんなことを言われるのか、
「何が言いたいんだ」
湊は背を伸ばし、浩正を見る。
「なんだか嫌な臭いがします。ただの直感ですが」
「詳しいことは中で話すが、アグナと由紀奈が死んだ。それをかぎ取ったんだろう」
浩正は目を開く。
予想外だったか予想以上だったか、それとも予想通りだったか。
いずれにせよ浩正は驚いていた。
「中に入るぞ」
そう言って湊が歩き、その後ろを付いていった。
ダイニングルームに皆が集まっていた。
そこに湊と浩正が入ってくる。
湊の地に真っ先にミランが気づく。
「湊、その血って」
と、周りが静かになり、浩正が席に着く。
湊は立ったまま、口を開く。
「まずは謝罪を。俺の不注意で申し訳ありません」
皆が湊に目が集まる。
ケインが焦りながらやめさせる。
「湊、どうした。頭を上げて説明してくれ」
そして湊は頭を上げ説明をする。
湊が喋った内容は真実とは別の事だった。
湊が倉庫から帰る途中アグナと出くわした。
その時アグナから、由紀奈に用事があると言われ鍵を渡す。
そこで別れたが少しして、気になって倉庫に戻る。
倉庫の扉を開けた時、由紀奈がアグナから剣を奪いアグナに刺した。
そして湊が入ったら、由紀奈が自分に剣を刺し自害をした。
という、内容だった。
「確認したが、どちらも心臓に刺さって即死だった」
せっかく戻ってきていた生活が、振り出しに戻った。
ルークは目に涙をためながら湊を指さす。
「アグナはそんな弱くない。湊、お前が殺したんじゃないのか……」
涙で声が震えていた。
ルークが泣きそうになるのも無理はない。
アグナを師匠のような、ルークは弟子のような関係だった。
悩みがあればアグナに相談をして、アグナと毎日のように特訓をして、つい最近アグナから一本取って、喜んでいた。
「湊は、そんな人じゃない」
とコンロンが椅子から降りて訴える。
「でも!」
「湊は違う!」
ルークが大声で言おうとしたら、それよりも大きな声でコンロンが反論をする。
「湊は、私が毒が塗られていたグラスで飲もうとした時に止めてくれた!湊は、私が遊んでほしい時に一緒に遊んでくれた!湊は、私を楽しい気持ちにしてくれた!だから、湊を疑わないで!」
コンロンは泣いていた。
涙を流し訴えていた。
「コンロン様、実際はコンロン様のグラスには毒は塗ってなかったかもしれないんだ」
コンロンの言っていた事を聞いていると、胸が苦しくなる。
「それでも、もしかしたらと思って止めてくれた!」
「それは、そうだけど……もっと止め方もあった……」
「もう気にしてない!」
湊は、この場所に居たくないと思ってしまった。
ルークも、実際に受け止めたくなかっただけかもしれない。
大好きなアグナが死んだことを。
「湊、事情はわかった、また詳しい話を聞く時があるかも知れないがいいかな?」
「はい」
ケインの言葉に返事をする。
「ミラン、茜。倉庫に行ってアグナと由紀奈を墓場まで連れていってくれないか」
二人とも、返事をして屋敷を出た。
「じゃあ、今日はほかの人たちは寝なさい」
ケインのその言葉に皆が自室へと戻っていく。
湊はずっと立っていた。
「湊、今日は寝るといい」
「……はい」
湊も自室へと戻った。




