3
「お父さん、お母さんと一緒にクリスマスツリーを飾ったり、クッキーを食べたりしたんだ。お父さんは普段甘いものを食べないけど、この日と私の誕生日だけは一緒に食べてくれるの。お母さんはいっぱいごちそうを作ってくれて、一緒にクッキーの型抜きをして焼きあがるのを待ったんだ。3人で笑いあってて・・・すごく楽しかったなぁ」
「・・・ふぅん。今年もそうなるといいな」
「・・・ううん。もうむりなの」
「え?」
歩の表情が曇りました。
今まで楽し気だった少女が悲しそうになり、カイトは驚きました。
「2人とも死んだの。3年前に交通事故で私をおいていなくなった」
「・・・」
「来年もクリスマスパーティしようと言ってたのに。次はケーキを作ろうってお母さんと約束したのに。もう2人はいない。私はひとりぼっち。あの楽しいクリスマスの夜はもう来ない」
歩の顔から笑顔が消えます。
カイトは黒い瞳でじっと少女を見つめます。
「・・・今一緒に過ごす奴とクリスマスを楽しめばいいだろう。この家の人とか」
「この家の人達は私を引き取ってくれたけど、私をよく思っていないの。クリスマスの夜はいつも私をおいてどこかに出かけるの。今年もそう。私は1人でここにいるの」
歩は窓から空に向かって右手をのばしました。
まるでそこに大切な物があるかのように一生懸命にのばします。
「だから紙飛行機をつくって飛ばしたの。寂しさを紛らわすために。私の想いが2人に届いてほしくて」
「・・・もういない人には届かないだろ。どうしたってお前が1人になった事実は変わらないんだ」
「――――!!」
ばしっ!!
歩が持っていた紙飛行機をカイトの顔にぶつけました。
いきなりの乱暴にカイトは怒鳴ろうとしましたが、歩がそれより早く口を開きました。
「そんなのはわかってるよ!!!もう2人がいないことなんてわかってる!!それでも思わずにはいられないもん!!」
「・・・・」
「カイト君なんて・・ひどいこと言うカイト君なんて大嫌い!!!もう行ってよ!!」
涙目で歩は感情の昂ぶりのままに叫びます。
カイトを責め、彼に投げつけた紙飛行機を取り戻さないまま窓を強く閉じました。
しばらく窓を見つめていましたが、開く様子がないのでカイトは溜息をついて樹を降りました。
(やっぱりクリスマスはろくでもないな・・・)
歩の家から遠ざかりながらカイトはげんなりしていました。
その手には紙飛行機を持っています。
そもそも返しにいったはずなのですが、歩が自分に投げつけてしまったので結局は自分が手に持っています。
捨ててもよかったのですが、歩の話を思うとその気になりませんでした。
(想いが届くように・・・か)
カイトは立ち止まり、じっとその紙飛行機を見つめました。
日が沈み始め、夜が来ようとしていました。




