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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第五章「最強の冒険者」

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152/168

ダンジョンマスター

 ドーム型の広々としたフロアであった。

 まだ敵の気配はない。

 中央のエリアへ向かって歩くと、前で魔法陣が生まれた。

 紫と白のまばゆい光が弾けるのと共に、ボスが召喚される。


「お前は……」


「やっほ~」


 女の子の、軽い声。

 現れたのは、貞雄を殺害した、りりかと名乗った女の子である。

 150後半の身長。肩の辺りまで伸びた髪は、右側が黒で左側が紫色。

 映像で見た通りの少女だ。


「八層はダンジョンマスターの1体が選ばれるからね~。君の相手してみたかったんだ~」


「ダンジョンマスター?」


「りりかを倒したら――教えてあげる!」


 りりかは背中から、禍々しく大きい漆黒の翼を広げ、音を置き去りにして前へ飛んだ。

 右腕と左腕が黒くなり、長い爪は血のように赤くなる。

 その右腕を真っ直ぐに突き上げ、青宮の胸を狙う。

 横へ飛んでそれを回避しながら、青宮は言った。


「人間じゃないのか」


「まあね~。人の形と性質を持った方が面白いかなって。そう思っただけ☆」


 凄まじいスピードで距離を詰められ、腕を振るわれる。

 長い爪が剣のように一閃、また一閃と走った。

 赤い色が残像のように線を描く。

 青宮はカウンターとして、斧を振り下ろした。

 りりかは両手で斧刃を挟み、強力なパワーで受け止める。

 青宮は押し込もうとするように、力をこめた。


「強いんだね~。りりか壊れちゃいそう☆」


 ギギギギギ、と力と力がせめぎ合う。

 青宮のパワーをもってしても、りりかは耐えている。

 りりかはウインクをして、斧を掴んだ状態で天井へ向けてハンマー投げのように投擲。


「っ!?」


 凄まじい遠心力と重力によって体が浮き上がり、弾丸のように真っ直ぐ飛ばされる。

 青宮と天井の距離が瞬く間に縮まった。


「させるかよ!」


 青宮はベルセルクの炎で勢いを殺し、激突を避けた。

 すぐさまバランスを確保。

 だが、戦闘はスピーディーに進んでいく。

 その瞬間に、りりかの背後に闇の矢が複数浮かび上がる。

 それも尋常ではない、100を超える数だ。

 闇の矢はマシンガンのごとく、数え切れないほどの連射速度で襲いかかってきた。


「簡単に当たるかよ」


 青宮は空を飛び、闇の矢を回避する。

 戦闘機へ向かって連射しているかのような構図だ。

 りりかはふん、と鼻を鳴らす。


「はや~い。しぶといね~」


「……」


 青宮はひたすら回避しながら、∞ウェポンに魔力を込める。

 ダークブルーの炎が肥大化し――時が来た瞬間、青宮は斧を振るった。


「カオス・クレイブ!!!」


 りりかとの間には距離があったが、それすらも巻き込む広範囲のダークブルーの炎。

 高威力のスキルは、ダンジョン内を大きく揺らし、炎の爆発によって内装にヒビが入る。

 パチパチパチ、と音が鳴りながら、炎の残滓が辺りに散らばっていた。


「……これでやられないのか」


 巨大ナメクジのようにはいかないようだ。

 りりかの周りには、彼女を包むように真っ黒な球体。

 その球体が弾けると、無傷なりりかが現れた。


「びっくり~☆ ダンジョン壊れちゃうよ~。床も天井も削れちゃってるぅ」


 青宮は前へと飛び出し、りりかへ距離を詰める。


(これだけの防御手段があるんだ。近距離じゃないと仕留められない)


 そう判断し、斧を一閃した。

 りりかは空中でそれを回避し、腕を振るう。

 空での激しい攻防戦。

 爪と斧がぶつかり合うたびに、火花が激しく散った。


「上ガラ空き☆ 人間の死角って色々あるんでしょ?」


 青宮の頭上めがけて、闇の矢が虚空から生まれ、発射される。

 ∞ウェポンの宝石部分が青く光る。

 彼の体を守るように、ダークブルーの炎の壁が現れ、闇の矢を受け止め浄化し、消滅させた。


「っ!?」


「……そこだ!」


 青宮は左腕を振るう。

 瞬間、ベルセルクの青い炎が飛ばされ、りりかの胸を焼いた。


「あっ、うぐっ!」


 炎の勢いは小規模だが、ダメージは大きいようだ。

 ダークブルーの炎は、高密度高魔力。

 多少の量でも大きな火力となり得た。

 怯んだことにより、大きな隙が生まれる。

 ガードをする暇を与えない。

 青宮は斧を一閃した。

 重たい斬撃が、りりかの体に深い切れ込みを入れる。


「ぐふっ!?」


 悲鳴と共に、りりかは力なく床へと落ちる。

 どすん、と硬い床に叩きつけられた。

 切り裂かれたところからは、紫色の魔力が漏れ出ている。

 瞬間――りりかのいたところから、闇の矢が飛び出した。

 青宮はそれを回避しながら、りりかへ距離を詰める。


「あはっ、りりか殺されそう……でも、これはどう?」


 りりかはヨロヨロと立ち上がりながら、闇の矢をさらに背後から連射。

 まるで背後に砲台が控えているかのような火力だ。

 しかし青宮はそれでも、空中でジグザグ飛行し、矢を回避していく。

 彼女の攻撃の全てがよく見えていた。


「終わりだ!」


 力強い声。

 弱ったりりかはその一閃を止められなかった。

 りりかの右半身が魔力となって消え、床に倒れる。


「えへへ……すごいじゃーん。りりか満足。君が強くなるところを見れないのは残念だけど」


 りりかは何故か、笑みを浮かべていた。

 そしてその体は、魔力となって消滅していく。


『――青宮 翼のLVが58へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』


『――青宮 翼のLVが59へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』


『――ミッションを達成しました。レベルアップボーナスが付与されます』


『――青宮 翼のLVが60へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』


『――斧術LV8へと上昇しました』


『――???が解放されました』


『――∞・ワークスを習得しました』


『――水魔法のLVが8へ上がりました。“ハイドロ・ウェーブ”を習得しました』


 青宮はため息をついた。

 自身の成長で気になることがあるものの、それどころじゃない。


「結局、なにも教えてくれないじゃねぇか」


 そう思っていた、その時である。

 パチパチパチ、と間抜けな拍手が聞こえた。

 振り返ると――そこには、黒いドレスに身を包んだ四之宮がいた。

 切れ込みの入った、足のよく見える、肩だしのドレス。

 美しい肢体によく似合っていたが、当然、青宮は女性として彼女を見ていない。


「……なんの冗談だ?」


「ふふふ。ようやく、ここまでたどり着きましたね」

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