早く帰れるよ(大嘘)
第七層で獅子山と共に荒木は訓練をしていた。
だが、荒木はひどくバテた様子である。
木に背を預けて、肩で息をしながら座っている。
そもそも荒木のレベルで第七層は無謀だ。
それを獅子山という絶対的にバックアップがある状態とはいえ、危険である上過酷なのは変わりない。
しかし短期間で強くなるというのは、正攻法では無理な話だ。
「今のお前さんは、なにが目的なんだろうな。やはり、まだ四之宮を許せないか」
獅子山が問いかける。
荒木の家族はいわば四之宮に陶酔して、家庭崩壊となった。
兄が死亡した今、荒木の怒りの矛先は今だ四之宮へ向いている。
「……そうですね。まだ活動しているというのなら、力をつけたいです」
「ダンジョンブレイクも、裏に四之宮がいるとしか思えないような出来事があったしな。まあ、そんなことはありえないはずなんだが……」
獅子山はため息をつく。
ナンバーワンが辿り着いた答えとはなんなのか。
あの少女は何者なのか。
(ステータス・スキル劣化が進行している俺じゃ、もうこれ以上深くダンジョンに潜るのは無茶なんだよな……。正直、第八層はケタ違いだ。まあ、青宮辺りと組むという手もあるが……)
しかし獅子山は自分の判断で、若手を育てるという方向へ舵を切った。
最前線に立つのは、落ちぶれていく自分ではないと考えたのだ。
「さて。もう休憩は終わりだ。いくぞ」
「厳しいですね……」
荒木は愚痴りながらも、獅子山へついていった。
「なんだ? ギブアップか」
「いえ……」
「ははは、そうこなくっちゃな。俺が若い頃は、もっとガンガンいっていたぞ。さあ、頑張れ頑張れ」
(俺が若い頃はって、よく言う人だよな……相変わらず……)
獅子山伝説は結構あるらしい。
☆
『――クリア条件:ダンジョン内で9時間30分生き残る』
「9時間半か……分で刻むな。個人的には早く感じる労働時間ではあるが」
第八層の過酷さだと、9時間30分でもかなりヘビーになる。
姫咲からは無茶はしないようにと心配されているが、残念ながらダンジョンがそうさせてはくれない。
「さて。でも、珍しく入場早々に襲われないな」
内装は変わらないが、ダンジョンの内容は入るたびに変わっている。
他に挑戦者もいないから、冒険者とすれ違うこともない。
そもそもミッションなどというものを課する都合上、同じ空間にいるかどうかも怪しいところだ。
救援なども絶対に見込めないだろう。
「よし。さくっと終わらせて、強くなって、桜の作るメシでも食べるか」
青宮は∞ウェポンを持ち、気合十分にダンジョンを進んだ。
過去の女性関連のトラウマは、姫咲によってかなり癒されていた。




