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野営で泊まり、だからな

 鑑定スキルを受けた、21歳の青年――青宮 翼のステータスを見て、冒険者協会の職員は、おお、と声を上げた。


「あなた、ユニークスキル持ちですね」


「本当ですか」


 50年前のダンジョン出現の後、現れたステータス持ちの異能者。それ以降、18歳の成人から冒険者になれるようになった。

 青宮は冒険者認定として必要な、職員による検査を受けている。

 広い多目的室の中で、若い男性の職員がタブレットにデータを打ちながら頷く。


「一度ダンジョンへ行けば、ご自身でも確認できるはずです。ただ……残念ながら、封印されているパターンです」


「封印?」


「はい。今、あなたのユニークスキルはこのように表記されています」


 タブレットの画面を見せてくる。

 ずらりと並ぶ情報の中に、スキル欄のとこには斧術LV1と、もう1つが「???《?》」と書かれていた。


「えっと、封印されていると……どうなるんですか」


「一切その効果の恩恵を受けず、使用不可です」


「……えー」


「ですが、封印が解除される条件は必ずあるはずです。これは冒険していく内に、紐解いていくしかないですね」


「そうですか……でも、ユニークスキルには間違いないんですね」


「はい。一定数確認されている基本スキル、レアスキル……これらが封印されている、という前例は確認されていないので、ユニークスキルである可能性は高いです。そしてユニークスキルは、強力なものが多いとされています」


「強力……」


「あくまでも傾向、ではありますが。ようするに、あなたは冒険者の才能があるということです。しかも……」


「しかも?」


「このユニークスキル、詳細を見ようとするとアイテムの表記へ移るんです。そちらも封印されているので、内容は見れませんが……スキル画面でアイテムの表記画面が出るのは初めてです。このユニークスキルは固有のアイテムか、装備を生成するのかもしれませんね」


 冒険者はステータスとスキルという制度上、先天的なものに左右されやすい。

 原則、世界で1人しか持たないというスキル……ユニークスキル持ちは、冒険者として才能がある、と思っても間違いではない。


(そうか。才能があるなら……俺、冒険者になろうかな。すごい人になれるのかも)


 21歳。社会人生活3年目。

 所属している会社は、ブラック企業であった。今日は休みを取れたが、これは12連勤の後で手に入れたもの。

 このような日常を送ると、自由でゆとりのある生活がほしい……そんな考えが自然と浮かぶ。

 一方で、経済や将来のことを考えると、すぐに会社を辞める勇気もなかった。そうしている内に、3年目を迎えたのである。

 しかし自分にもしも……冒険者の才能があるのなら。

 その道へ進んでみようと、青宮はワクワクしたのであった。





 結論から言うと、青宮のワクワクは打ち砕かれることになった。

 思い切った脱サラ後。高校時代の元クラスメイトで、そして今付き合っている彼女――泉 怜奈と、彼女の友達だという、同い年の男、有島 史郎の3人とダンジョン攻略へ出ることになった。

 そして判明する。青宮のステータスは、伸びが悪い。

 レベルが上がっても、数値の上昇は平凡なのだ。

 さらにステータス構成もちぐはぐだ。高いのがMP、魔力、攻撃力。ただし、魔法スキルが1つもないので、MPと魔力は発揮されず腐っている。

 そして希望であるユニークスキルは、封印されたまま。

 そのまま3日間が経過し、青宮達はレベル3になった。


「彼氏さんさぁ。前衛も後衛も微妙って、ぶっちゃけ弱くね?」


 草原の広がる、ダンジョンの第一層にて、有島がバカにするように鼻を鳴らした。

 彼は青宮のことを「彼氏さん」「彼氏さぁん」といった感じで呼ぶ。


「あはは、もう~、そんなこと言っちゃダメだよぉ」


 泉が有島の肩を軽く叩いて、そんなことを言う。

 あまりフォローしている感じではない。

 むしろ、泉と有島の距離感がやたら近いのが気になった。

 しかも泉の声は、メスを出すかのように甘い。

 この現象は一緒に冒険を始めた、初日から起きている。

 そもそも、泉が有島を「バイト先で一緒に働いていた友達なんだけど、パーティーに入れてもいいでしょ?」と言ってきた時点で、嫌な予感はしていた。

 ちなみに泉はフリーターで、有島も同じだ。

 有島は日焼けした肌の、金髪、アクセサリージャラジャラと、いかにもワルそうなギャル男だ。

 予感は当たり、2人はどんどん距離感が近くなっている。

 優越感にでも浸りたいのか、有島はことあるごとに青宮を見下す。

 青宮はうんざりとしていた。

 正直、泉との関係も……一応は、まだ彼氏彼女ということになっているが、もう1ミリも恋愛感情が芽生えていなかった。

 かつては違ったし、大切にしたつもりだった。泉の両親にも挨拶して「あら、良さそうな人を連れてきたわねぇ。ふふふ、孫の顔が早く見れそうだわぁ」「君みたいなしっかりした好青年なら、任せられそうだ」と、なんとか気に入られ、結婚も視野に入っていた。

 だけど彼女から離れたいのというのであれば、引き止めはしない。

 むしろこんな現状なら、さっさと有島とくっつけばいいんじゃないか、と思っている。


(このパーティー抜けたいし。というか、冒険者を辞めることも視野に入れるか)


 資格もいくつか取っている。退職はしたばかり。自己都合による退職とはいえ、前のところは3年所属している。ちゃんとした理由を話せば、悪い印象にはならないだろう。真面目に転職活動すれば、正社員で採用してくれるところはあるはずだ。

 またブラック企業じゃないといいなぁ、という懸念はあるものの。時代は変われど、サラリーマンがとりあえず安定なのは間違いない。

 青宮はそんなことを考えていた。

 ただ一方で、封印されたユニークスキルがなんなのか、気になっている。

 まだ諦めるつもりつもりはないが、ダメな可能性も覚悟しようと思った。


「――なぁ、明日の夜さ。ダンジョンに泊まらないか?」


「え?」


 有島の提案に、青宮は首を傾げる。


「最近、夜の第一層で、ゴーストと遭遇しやすいって。良い魔石になるらしくて、高いらしいぜ。俺達で狙わないか?」


 青宮が答える前に、泉が前のめりになった。


「え、賛成! いこ、いこっ」


「ああ。青宮も絶対に来いよ。野営で泊まり、だからな」


 夜の野営。嫌な予感しかしなかったが……遭遇率の低いゴーストという魔物が多くなったという噂は聞いていた。強さは大したことないのに、倒せばたった1体で30万円もする。

 金はほしい。

 小遣い稼ぎとして、やっておくか、ぐらいの軽い気持ちで青宮は参加を決意した。

ステータス表記は後の話で描写します。

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