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沈黙の都市  作者: トシユキ
第二章:「広がる沈黙」
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第39話:「神戸の空に立ち昇る黒煙」

時刻:10時15分——兵庫県庁・防災対策センター

「——ッ!!?」


兵庫県庁の窓ガラスがビリビリと震えた。

一瞬の静寂の後、巨大な爆音が地響きを伴って建物を揺らした。


「な、なんだ!?」


防災対策センターに詰めていた職員たちは、突然の衝撃に驚き、思わず頭を抱えて床に伏せた。

振動と共に、天井の蛍光灯が一斉に揺れ、細かいホコリが降り注ぐ。


その場にいた全員が、一斉に顔を見合わせた。


「今の……爆発音か?」

「地震……ではなさそうですね。」

「まさか……事故?」


最初に声を発したのは 県危機管理監・矢野浩二 だった。

彼は額に浮かぶ汗を拭いながら、窓の外に視線を向ける。


次の瞬間——


「……え?」


兵庫県庁の窓越しに見える 神戸港の向こう側、神戸空港の方向から、巨大な黒煙が立ち昇っていた。


「……嘘だろ……。」


黒煙は、まるで生き物のように天を覆い、ゆっくりと空へと広がっていく。

周囲の雲をも飲み込み、太陽の光すら遮るような、異様な暗黒の柱。


「……神戸空港で何かが……?」


副知事・杉本啓一 が椅子から立ち上がり、震える声を絞り出した。


「こんな……こんなことがあり得るのか……?」

「事故……?いったいなにが……?」


次々と声が漏れ、誰もが口々に呟いた。

その場の誰もが理解していた。

——これはただの爆発ではない。


「……煙の広がりが異常です。」

窓に張り付いた 兵庫県防災課の松井直哉 が、呆然とした声を漏らした。


「これは……燃料タンクが爆発したんだ……。神戸空港の燃料備蓄タンクが……。」


「そんな……!!」


神戸空港には、大規模な燃料タンクが複数存在する。

もし、それが爆発したのだとしたら——

爆発のエネルギーは桁違いで、神戸港一帯にも影響が及んでいる可能性が高い。


「すぐに被害状況を確認しろ!!」


矢野浩二 が怒鳴るように指示を出した。


神戸市役所・危機管理課の大橋健太 が青ざめた表情で、震える手で机の上の受話器を取った。

「……ダメだ、つながらない。」

「もともと通信はダメだろう!」

「いや、それでも、現場に職員たちが……。」

受話器を持ったまま膝に力が入らない、そのまま床へと崩れ落ちる。

「おい、しっかり気をもて!」

市役所危機管理課課長:藤井誠一が思わず叫ぶ、

「誰か、すぐに空港へ、消防手配だ救助要請だ、至急!」


無線はもとより、電話回線もすでに途絶えている。

何の情報も入らないまま、刻一刻と状況が悪化していく。


兵庫県防災センター

「副知事、どうしますか?」

「……とにかく、現場へ職員を派遣しろ。」

杉本副知事は苦渋の表情を浮かべながら指示を出した。


しかし、そのとき——


「……え?」


庁舎の天井のライトが、一瞬、ふっと消えかけた。


「まさか、停電……?」

「電力供給に影響が……?」


兵庫県庁の建物は自家発電システムを備えているが、今の一瞬の電圧低下は ただの揺れによるものではない ことを、誰もが直感的に理解した。


「神戸空港だけじゃない。神戸の都市機能そのものがやられた可能性がある……。」


松井の呟きに、誰もが凍りついた。

これは"ただの爆発"では終わらない。


時刻:10時15分同時刻——神戸港・岸壁

「何だあれは……!!」


神戸港の岸壁では、港湾関係者や海上保安庁の職員たちが、一斉に空を見上げていた。

彼らの視線の先には、空を埋め尽くす黒煙の柱——。


「神戸空港で爆発……?」

「まるで……阪神大震災の時のような……。」

「まさか……テロじゃないよな……。」


誰もが口を開けたまま、恐怖に震えながらその光景を見つめていた。


「……やばいぞ、これは……。」

「避難命令、出した方がいいんじゃないか……?」


誰かが震える声で呟いたその時——


「ドンッ!!」


空気が震えた。


港の向こう、爆発の余波が、波を押し寄せさせた。

海上の水が盛り上がり、港の壁に激しくぶつかる。

数隻の停泊していた小型船が、衝撃波に揺さぶられた。


「ヤバい!! 津波来るぞ!!」

「すぐに船から降りろ!! 階段あがれ、急げ!!」


警告の声が上がる中、港の職員たちは全速力で走り出した。


「とにかく安全な場所へ……!」


しかし、彼らはまだ知らなかった。

これは"終わり"ではなく、"始まり"にすぎない ということを——。

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