第23話 私の全てを賭けてでも…
全身に黒い魔力を纏わせ、その場にいる全ての生き物たちが震えるような気迫で、彼女は一歩、また一歩と歩いてきた。
結界内に入ったミアは、そこで暴れていたキメラタイタンと目を合わせた。
纏ったオーラは、自我のない生き物ですら怯え無我夢中で攻撃をしてきた。
「ごめん。その攻撃、私には通らない…」
キメラタイタンのパンチ攻撃を、ミアは片手で受け止めた。
それはあまりにも衝撃的であった。つい先程まで攻撃をくらい飛ばされていた人間が、今度は全く同じ攻撃を受け止める様は、逆に恐怖をも覚えたであろう。
ミアは、受け止めた手を掴みそのまま空中に投げた。
「ユキワ…少し痛いかもだけど、我慢しててね…古代魔法ヴァイスシューティングアロー!!」
空中に投げ出されたキメラタイタンの周りに複数の矢が出現し、それが相手に向かって飛んでいった。
矢は、相手に突き刺さると自然に爆発し、それが連続して発生した。
爆発後、キメラタイタンは地面に落ち相当なダメージを負っていた。
「戦わないで救う事が…私は出来ると思っていた。でも…戦うから救えることもあるって…仲間が信じてくれるから戦えるって…そう思えたから…今なら私は、強くなれる!!」
そう言うと、再び倒れたキメラタイタンに向かい同じ魔法を掛けた。
衝撃で地面の土埃が舞った。身体がキズだらけになりながらも、キメラタイタンは立ち上がり再び攻撃を行おうとしていた。
「痛いでしょ…怖いから…また攻撃してくるんだよね…?…ッ!!でも、まだ終わらせないから!!古代魔法ヴァイスアイスストーム!!」
詠唱直後に、相手の周りに強力な吹雪が発生し、キメラタイタンの身体が凍りついた。
動けなくなった状態に、ミアは更に呪文を詠唱して攻撃を行った。
その様子を、少し離れた場所でジュナが見ていた。
ジュナは、唇を舐めながら樹木の中の太い枝を椅子にし座っていた。
「あらら、あの出来損ない…クッソ使えねぇな…まぁ、古代の魔法まで使わせたのは良しとしよう…だがな、テメェはもっと苦しみながら周りも壊していかねぇといけねぇんだよ~~~!!スノウ・リングよ~~~!まぁいいわ、追加でテメェにプレゼントをやるよ…鍵の魔法を使った強化ってのはこうやるんだよ~~~♪」
そう言うと、ジュナは手物にあった赤く染まった鍵を使い、魔力をキメラモンスターに与えた。
すると、キメラモンスターは凍りを破り再び暴れだした。
ミアは、瞬時に体制を整えて避けたが、その攻撃の威力が上がっていたため、衝撃は彼女を含め3人全員に当たり吹き飛ばされた。
飛ばされた時に、三人は体中に大きなダメージを受けた。
「っ…、リオ!!ルナ!!」
そして、飛ばされた際にでた砂煙が落ち着くと、そこでミアが見たのは飛んできた無数の枝が複数箇所に刺さりつつも戦闘態勢を取ろうとするリオと、血だらけでギリギリの状態でも魔法を使おうと構えているルナだった。
「これって…あの夢と同じ………あの時見た、あの悪夢…っ」
たったの一撃ではあったが、その攻撃のせいかダメージを受け意識が朦朧としていた二人に対して、ミアはある程度、状況判断は出来ていたが以前に見た夢のような惨状が目の前にあり、身体が竦んでしまっていた。
そして、キメラタイタンは今度は魔力を集め巨大な魔導波を撃とうとしていた。
それに気づいたミアであったが、やはり悪夢を思い出し、防御魔法を使って朽ち果てている自分を思い出し、身体が動かなかった。
そしてキメラタイタンが攻撃をしようとした時、ミアを後ろから通り過ぎて攻撃が入っていった。
ルナとリオが、意識をギリギリまで集中させて攻撃を行い、相手を怯ませた。
「後は…任せたよ…ミア…」
「私達は、もう限界~~~、私なんて複数箇所、貫通してるし…痛みヤバ…」
二人は、息を荒くしながら笑顔でミアに全てを託し、再び倒れ込んだ。
ミアは、二人の顔を見て少し心が落ち着いたのか、再びキメラタイタンへ振り向いた。
怯んでいキメラタイタンは、再び魔導波を打つ準備をしていた。
(あの攻撃、なんとなするにはあの魔法しかない…しょうがないか…やるしかないね…)
そして、キメラタイタンは貯めた魔力を勢いよく放った。
「なっ!?しまっ!!」
放った攻撃はミアに向けてではなく、倒れているリオとルナの二人を狙った。
さきほどの攻撃に激昂して、放ったのであろう。
ミアは、とっさに二人の間に入ろうと走り出したが、魔導波の速度の方が早く間に合いそうにはなかった。
「ダメッ!!魔法よ、二人を守るチカラを貸して!!」
その言葉に反応したかのように、ミアの移動速度が早くなった。
そして、二人と魔導波の間にうまく入ることができた。
「っ…古の魔法よ!今、我がチカラを使い、絶対無敵の障壁を作らん!!古代魔法輝きのファンファーレ!!!」
ミアが詠唱を行った瞬間、どこからか流れる音と共に目の前に羽衣のような淡い壁が発生した。
それは、魔導波を受けながらその魔力を分解していた。
「輝きのファンファーレは、攻撃魔法の分解能力を持つ防御魔法…この魔法はどんな攻撃魔法通さない!!」
ミアは、輝きのファンファーレの壁を利用しつつ、少しずつキメラタイタンに向かって歩いていった。
キメラタイタンは魔導波を打ち続けるため、他の動作が取れないようであった。
そして、キメラタイタンの前に行った時に、ミアは再び詠唱をした。
「古の魔法よ…我が力の源、かの物を浄化せよ…古代魔法!煌めきのレインシャワー!!」
詠唱した魔法が発動し光の雨が、キメラタイタンに当たると、その身体が溶けてきた。
キメラタイタンはそれを受け、悶ながら大声で鳴き叫んでいた。
ミアは、引き続き魔法をコントロールしていたが、魔力が切れかかっているのか魔法が途中で切れかかっていた。
「こんな時に…後少しなの…お願い、もう少し…頑張って!!古代の魔法達…私の全てを投げ売ってもいい…だから皆を助ける…チカラを貸して!!」
すると、ミアの服の中から光る者がミアの右手に付いた。それはミアが作っていたメモリーブレスであった。
それを見たミアは、落ち着きながら笑顔で笑い、2つのブレスを見ながら再び魔力コントロールに集中しはじめた。先程の移動速度が早くなったのも含め、新しいブレスが力を貸してくれていた。
「行くよ…貴方の新しい持ち主を、助けるからね…ユキワ!!キメラタイタンのコア、そこから出すからね!!」
2つのブレスの力で、半分近く浄化したキメラタイタンはほぼ動かなくなってた。そこにあるコアを見つけたミアは手を伸ばしそのコアに手を入れた。
そして、そのコアの中を探り周るとそこには間違いなく、腕があった。それを触れた瞬間、ギュッと握りしめながら、精一杯の力で引っ張り出した。
それは裸で意識もなくなっているユキワであった。ミアはそれを抱きしめると泣きながら頭を撫でた。
「やっと、見つけた…もう大丈夫だから…。さて、キメラタイタン…貴方も…おやすみ…古代魔法バーストレイ!!」
光の爆発がキメラタイタンの中から発生し、キメラタイタンは消えていった。
その衝撃を、ミアは再び防御魔法を使い受け流した。
「ハァハァ、やっと…倒せた。そして、救えた…これ…で…もう…あれ…」
ミアはそのまま、笑いながらそのまま倒れた。
それを見た、リオとルナは二人共怪我だらけではあったがミアとユキワに近づき、応急処置をしながら救護を待った。
二人が、慌てながら声を掛けているのが微かに聞こえていた気がするが、そこから先が全く分からないまま、ミアは声にならない声で一言発し、意識を失った。
(バイバイ…みんな………)




