第16話 想いはひとつ
M'sK本部内、同じ敷地内で中央庭園を挟んで総監室のある建物とは別の小さい建物にメモリーブレスの研究室があった。
ベルは意気揚々と、スキップをしながら庭園の中央を進み、それを魔法少女の方程式の三人が追っていった。
そして、ベルはその先にあった扉の前で三人を待ち構えていた。
「魔法少女の方程式…我が夢と希望の城へ♪M'sK魔導研究局へようこそ~♪」
ベルはそう言うと、扉を開き三人を部屋へ招き入れた。そこは普段では見たことのない、魔道具や電子機器が大量においてあり、複数の白衣を纏った研究員が作業をしていた。
あまりにも高度な研究をしているのを見て、唖然としているリオとルナを横目にミアが心をキラキラさせながら目の前にあるものを一つ一つ確認をしていた。
「ここが、メモリーブレスが生まれてくる場所…この研究は、メモリーブレス自体に刻まれている記憶…これをベースにブレスが強化されていくんですね!♪」
「そうだよ♪そしてそこのケースに置いてある3つが君たちのメモリーブレスだ!♪ちょうどチェックを掛けているからもうすぐ終わる頃だと思うよ~」
そう言いながら、ベルはこの世界では珍しいパソコン上に書かれているプログラムを見つつ、メンテナンス状況を確認していた。
その横から、リオが画面を見ながら少し間をおいてベルに話しかけた。
「スタンダード博士…このプログラム、少しおかしくないですか?」
「ん?どれどれ~?」
「ほら、これ…アースの機械技術を利用していろいろプログラム組んでるみたいなんですけど、魔力コントロールの計算を組むプログラムが、雑というか技術統合を余計に難しくさせてしまっているか…いっその事、このプログラムを1から書き換えてもいいんじゃないですか?数値だけなら私が出せますので!!」
「こ、これは…本当だ…どうして気づかなかったんだ…数値が分かれば書き換えはスタッフで早急にやれば3時間もあればできるな~♪…それにしても…リオちゃんって凄いんだね…♪」
「そうなんですよ~、一見アホの娘みたいに見える猪突猛進タイプのリオだけど、実は私やルナよりも勉学って意味では頭がいいんですよね~」
「テストで70点以下を取ると、地獄のようにテンション下がるからね~リオは頭の良いバカだから」
「ちょっと二人共、聞こえてるわよ!頭の良いバカは酷いよ~、あ、そこの数値直せますか?0079を0083にすると負担なく出力上げられるかも」
そう言いながらもリオはひたすら、画面上の数値を計算しながら他の研究員に出した数値を伝えていた。
リオを見ながらルナは呆れ、ミアはリオと一緒にブレスのプログラムを見ていた。
ふとミアはブレスの全体デザインを見ていて、気づいた点をベルに伝えた。
「スタンダード博士~少し教えていただきたいんですが、ブレスの左側面にある差込口ってなんですか?」
「あぁ、よく気づいてくれたね~♪それは出来上がったプログラムをブレスに送って、バージョンを上げるインターフェースだよ~♪まぁ、俺たち研究員しか使わない部分だけどね~」
「インターフェース…なるほど~」
「まぁ、三人共…大怪我させちゃったから…今回のリオちゃんのおかげでもっとブレスの強化ができそうだから…前ほどダメージ軽減と魔力コントロールが向上しそうだよ♪」
そう言うと、ベルは再びパソコンに顔を睨みながら、さきほど緩い顔が鋭く真剣な顔になっていた。
そして、少し大きめの独り言を言いながら、ひたすらキーボードを叩きプログラムの書き換えを行っていた。
「現場組だけじゃない…現場の皆が街の人たちを助けたいって気持ちと同じ…俺達…研究員は現場の皆を殺させない、傷つけさせないためにブレスの開発を行っているんだ。犠牲が0なんて甘い考えはしてない。少しでも…ほんの少しでいいんだ。皆が生きて帰ってこれるようにする。それが俺たちライフエレメンツだ!」
「スタンダード博士…やっぱりこの人、天才です♪」
「現場だけが全てじゃないですね。博士達が頑張ってくれる。だから私達も戦える。リオ、ミア!」
「分かってる。このメモリーブレスだって簡単に作れる代物じゃない…私達と同じで、本当にキツかったと思う…だから、私の今できること精一杯がんばるよ。」
それから数時間、ベルと研究室のスタッフ、リオとミア含め一丸となりブレスのプログラム交換をしていた。そして…
「よ~し♪これでプログラムの完成だ♪後はこれをブレスに転送してアップデートすればOKだ~♪局のみんな…リオちゃん、ミアちゃん…あとルナちゃんもありがとう♪」
「えっ!?いや、私はリオやミアと違って何もやってないですし」
「気づいていたよ♪皆が動けない状態で飲み物を用意してくれたり、邪魔な部材を整理してくれたりってね♪」
「スタンダード博士…」
「あとね~、ルナちゃんだけじゃく~、リオちゃんもミアちゃんもそうだけど~!俺のことはベルって読んで欲しいな~♪堅苦しい呼び方はメェッ!」
そう言いながら、ベルは笑顔で三人に語りかけた。その笑顔を見たせいか三人もたまらなく笑顔になり、頷いた。
その時、ベルのブレスから呼び出し音が鳴り出した。ベルはそれを取るとブレスから出来きた声はクレハのものだった。
「ベル、三人のブレスの修復はどう?」
「総監、ちょうど最後のアップデート中なので後20分もあれば大丈夫ですよ~♪」
「あと20分…もう少し早める事はできないかしら?」
「ん~、どうしたの~?」
「キングダム現れたわ…場所はアルストフィアの南商店街、情報だとスノウ・リングがいるそうよ。」
「スノウ・リングが!?ルナ!ミア!」
「…うん」
「ええ」
「ちょ~~~っとまった!!まだブレスのアップデートが完了していないよ~~~!中途半端な状態でブレスを渡すわけにもいかないし!!」
キングダムの元へ向かおうとする三人に、ベルは横から入って道を塞いだ。
そして、三人を心配しつつも鋭い目で睨みつけた。それを見た三人は、再び笑顔になりベルに伝えた。
「ベル博士♪私も、リオもルナも博士と同じで守りたいんです♪だから、私達はブレスがなくても行きます。それに信じてますから♪アップデートが終わったらベル博士が持ってきてくれるのを」
「ミアちゃん…、分かった…出来上がり次第、持っていく…だから、それまでは死ぬな!」
「ありがとうございます。では…行ってきます。」
ミアはそう言うと、三人で外に走っていった。ベルはそれを見ながら、振り返り再びパソコンとブレスの元へ歩き出した。
「さぁ、みんな、引き続き仕事をしてくれ♪俺はブレスが完成次第、三人のところに向かうから、後のことよりぴく♪」
アルストフィアの南商店街、名前の通り都市の南に位置するこの場所は、アルストフィアの商業の担う場所であり、この商店街が機能しなくなることはアルストフィアにとって大打撃になる。
そんな場所に、スノウ・リングともう一人、不敵に笑う女性がおりその元で、大量のゾンビ型のモンスターを放ち襲っていた。
「ふふふ、スノウ・リングも隅に置けないわねぇ…私が眠っている間に、こんなに面白い事をしていたなんて。も~~~っと人が苦しむ声を聞いてもいい???」
「…別に…今の私は、魔法少女方程式さえ苦しめられればなんだっていいから」
「珍しいわね♪そんなにムキになって、そんなに魔法少女の方程式と戦いたいの?」
「あの三人…そんなに強くないんだ。なのに二回も私のキメラモンスターを倒した…絶対、私の方が強いのに…」
「あらあら~、噂をすればその三人が来たみたいよ。」
スノウ・リングと女性が話をしていると、魔法処女の方程式の三人が商店街の中央、キングダムのモンスター達が集まっているところにたどり着いた。
「スノウ・リング!!やめて!なんでこんな事を…」
「リオお姉ちゃん♪やっと現れたわね…でもね、今回は私の発案じゃないの♪ねぇ…」
そう言うと、もう一人の女性が深く頭を下げて挨拶をし始めた。
「お初にお目にかかります。私はキングダム王家5兄弟の長女…墓守の魔女プリンセス スカーレットと申します。以後お見知りおきを♪今日は、ご紹介をさせていただきに参りました。」
そう言うと、スカーレットと名乗った女性は不敵な笑顔を浮かべ、三人に向かってゾンビが襲っていった。
三人はその攻撃を避けながら名乗りを上げた。
「つながりの魔法使い リオ・ミレーヌス!」
「叡智の魔法使い ルナ・アンバーレイン」
「癒しの魔法使い ミアーシャ・コーリアス♪」
『我ら魔法少女の方程式!』
「この世界は、私達が守る!!」
襲ってくるゾンビの攻撃を避けつつ、三人は魔法での攻撃を行い倒していった。
今までより三人の魔法は安定し、メモリーブレスを使用していない状態でも、今までより格段に強くなっていた。
武器を使用していない状態であっても、手に込めた魔力弾を使用するだけでもそれなりにゾンビを倒すことが出来ているをの、三人自身も驚きながら戦っていた。
それをみたスカーレットは、浮かべていた笑みが真顔になりながら、持っていたセンスを折りたたんだ。
「スノウ・リング!貴方が三人に興味があるのはわかりました。もういいでしょ」
「…わかった………鍵よ、鍵よ、魔力の鍵よ…今扉を開き、破壊と創造を…開き出でよ!キメラゾンビ!!」
スノウ・リングは錠前の鍵を一本使い、その場にいたゾンビが全て、空に現れた扉に吸い込まれ巨大な一体のゾンビになった。
スノウ・リングの持っている錠前の鍵は1本減り、残り3本となっていた。それを本人は少しため息をしながら姉であるスカーレットを睨みつけた。
「怖い怖い♪さて…と…魔法少女の方程式さん!!今日は挨拶代わりにこのキメラゾンビを置いていきますわ♪私達姉妹の作ったモンスターと楽しんでくださいね♪」
「…魔法少女の方程式…お姉ちゃん達…ブレスを使わないで戦うなんて…私なんてその程度で倒せるってと?…最低…」
そう言うと、スカーレットとスノウ・リングは姿を消した。
スノウ・リングは普段以上に敵意を剥き出しにしながら、その場を後にした。
「まって!スノウ・リング!!」
リオがそう言って、手を伸ばしたが…10mほどの距離ではその手は届かず、その前にはキメラゾンビが立ちはだかっていた。
「リオ!今はまずこのキメラゾンビを倒すよ!」
「…わかった。」
三人は、魔法弾をキメラゾンビに放った。ダメージは入っているらしく、大きなキズができるがその度に瞬時にキズが治り再び攻撃をしてきた。
「クッ!?やっぱりキメラ化すると強くなるな…ミア!回復魔法できる?」
「なんとか!!でも、やっぱり大きな魔力コントロールは難しい」
ミアがリオを回復しつつ、ルナがキメラゾンビを攻撃していた。しかし、やはり攻撃は入った瞬間から再生されていった。
「やっぱり、こいつを倒すには強力な魔力で一気に倒さないとダメみたい」
「なるほどねっ、なら私が囮になるからその間にルナとミアは詠唱を!」
「でっ、でもそうしたらリオが…」
「お困りですかな?お嬢様がた?」
三人が悩んでいるところ、唐突に後ろから声が聞こえた。三人は慌てて振り向くと、そこにはバイクに乗ったベルがいた。
ベルはバイクのアクセルを吹かしながら、完成したブレスを投げた。それを受け取った三人はブレスを腕に取り付けた。
「ベル博士!!完成したんですね♪」
「オフコース♪ミアちゃん。リオちゃんとルナちゃんも全員に合ったバランスで調整してあるから、安心して使ってくれ!」
「ありがとうございます!!」
「ありがたく使わせてもらいます。リオ、ミア行くよ!!」
『チェンジ!マジシャンズ ローブ アップ!』
ローブに包まれた三人は、武器を召喚し戦闘態勢を取る。
その周りには今までの三人にはなかった魔力のオーラがにじみ出ていた。
「すごい…これって…」
「心の開放だけじゃない…メモリーブレスが…」
「2つの新しい力が、私達を包んでくれる。これなら…」
「いけ、魔法少女の方程式!!俺たちの成果!みせてあげな!!」
ベルのその言葉に、三人が一斉に動き出した。
リオは剣を使い、攻撃を受け流しながら複数箇所に瞬時に攻撃をする。
再生を始めたキズに、ルナの詠唱した氷魔法でキズ元を凍らせて再生を遅らせた。
「ダメージが通った!!ルナ!そのままキズに氷結魔法を!」
「オーケー!ミア!!ゾンビ系だから光魔法の大きのお願いね!」
「分かった。光の魔力を収束させるから、少し時間を頂戴!!」
『了解!!』
ミアの言葉に、リオは更に連撃を加える。それに合わせてルナはキズ元だけではなく、足回りにも氷結魔法を与えて、キメラゾンビの動きを抑えた。
『ミア!!』
「我、眩き光の主なり!今、安らかなる癒やしをかの者へ!!光魔法・ヘブンズサークル!!!」
ミアの詠唱と共に、キメラゾンビの周りに巨大な光の円が発生し、発生している光の粒子がキメラゾンビを浄化していった。
浄化と共に、身体が少し、また少しと、剥がれ落ち、落ちた身体の一部がそのまま粒子になって消えていった。
「光よ…かの者、永遠の休息を…」
円が一段と、光った瞬間に弾け飛んだ。それと一緒にキメラゾンビも完全に浄化されその場から消えた。
ミアはそれを確認すると、ローブを解いて座り込んだ。
「はぁ・・・はぁ・・・魔力が・・・」
「ミア!大丈夫!?」
「立てる?とりあえずキメラゾンビは倒せたみたい。…ミア?」
「あ、うん。大丈夫…疲れた~集中しすぎて疲れたよ~」
(やっぱり、思ったより魔力の消費が激しい…)
現地の処理をしつつ、ミアは休みつつリオとルナで状況確認を行っていた。
破壊箇所は多かったものの、幸いにも今回は犠牲者はいなかった。
リオもルナも喜びながら、ミアに伝えた。
「なるほど…メモリーブレスは修理中だったのね…そしてあの三人、前より強くなっている…私も、あの三人に勝てるくらいに強くならないと…お父様から頂いたこの鍵の力もあと3本…しばらくはお別れね…でも死なないでね…お姉ちゃんたち♪」
不敵に笑いながら、現場から離れた協会の鐘のそばで、スノウ・リングはそう言った。
そして、その事件から半年は、キングダムの絡んだ事件が発生しなかった。




