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つ
つまりである。俺は何かものを書く為に旅に出た訳ではないのだ。そんなことなら最初から書くのを辞めれば良いのである。そうすれば旅に出る必要もなかろう。時間と労力と金銭の節約になり一石三鳥である。そうではなくて、俺がものを書くのも、旅に出るのも、無意味かつ無目的なそれぞれ独立した行為なのである。お互いに何の関連も交渉もない。
しかしそうは言いつつも、このことについてここに既に書いているということは、やっぱりこの旅を何らかのダシに使って、物を書こうとしていたことは否定できない。物書きというのは何をしていてもそれが作品の肥やしになる事を求めて止まない甚だ吝嗇な人種らしい。すると金勘定を一時も忘れられない俗人と何ら変わらないということになる。いや、それを自覚せずに表向きには無欲で煩悩を解脱したような顔をしている分、俗人よりも更にたちが悪いとさえ言えるかも知れぬ。




