第六章 故郷と電話ボックス
私の生まれ育った場所は、決して辺鄙とは言えないが、繁華街でも絶対になかった。
北に近いせいで、冬が早く訪れ、春の訪れが遅い。ここで幼い頃に見た窓の外の景色は、白一色であることが多かった。白色は美術において、私が思うに最も重要な色だ。ハイライトにしろ調色にしろ、白は欠かせない。しかし、自分の世界が白だけになったとき、それは全く違う意味を持つ。
風景もなく、音もなく、世界全体が眠りについたような静けさ。幼い私はそれがひどく退屈で、なぜいつも春や夏でいられないのだろうと思った。私にとって、生命力あふれる季節こそが、美しさの象徴だった。だから幼少期に経験した十数回の冬に、私は良い印象をほとんど持っていない。
故郷へ戻る準備が整ったのは半月後だった。正月の数日は故郷が一年で最も寒い時期で、大雪が降る中では調査しにくく、ほとんどの場所が休みに入っていた。
遥については、私が忘れた記憶を探しに故郷へ戻ることに何の反対意見もなかった。むしろ外に出てあちこち回れるのは彼女の望むところだった。
そんな理由で、帰省の時期を半月後に決めた。気温が少し上がることと、帰省していた人々がほとんど仕事や学校に戻り、街に人が少なくなる頃を見計らってだ。それまでの間、私は家でどんな調査方法があるか考えた。
まず家に帰って、当時残した手がかりがないか探す。ただし、両親が離婚した後、母が多くの物を持ち去ったので、私の物もその中に紛れて失われているかもしれない。次に学校へ行き、当時の保健室の先生に何か覚えていないか聞く——彼女がまだそこにいるという前提で。
正直、私は調査が苦手だと思う。この明らかに手がかりの少ない計画を見てもわかるが……他に方法がないのも事実だった。この決断をする前に一度宮川さんに相談したところ、彼女はそれを認め、心理学的に記憶を呼び起こす方法をいくつか教えてくれた。
「心理学に『プルースト効果』という言葉があるわ。ある作家が名付けたもので、彼の小説の中で主人公がケーキを一口食べた瞬間の匂いや味で、封じ込められた記憶を思い出すの。あなたに効くかはわからないけど、試してみる価値はあるわ。故郷の通りを歩いてみたら、ふと何かを思い出すかもしれない。まるで探し物が、しばらく経ってから自然と出てくるように。」
彼女はそう言った。私はあまり当てにしていなかったが、調査の方向性が見つからなくなったときの手段として使うことにした。
その後の日々、私は遥と普段通りに過ごした。早寝早起き、規則正しい食事、禁煙禁酒。生活は極めて規則正しかった。
ただ一つ予想外だったのは、出発の二日前に見知らぬ番号から電話がかかってきたことだ。私は自分の番号をあまり人に教えないので、広告電話でさえほとんどかかってこない。
電話に出ると、聞き覚えのない男性の声がした。
「喂? 枯木くんですか?」
「そうです……どちら様ですか?」
「よかった。もう何年も経ってるから、この番号は使われてないんじゃないかって心配してたよ。」
私は呆然と相手の続きを待った。
「あ、ごめん。急に電話してびっくりしたよね? 俺、伊佐だよ。覚えてる? 小学校と中学校が同じクラスだった。」
私は頭の中でその名前を掘り起こすのに時間がかかった。伊佐。クラスメイトの一人だ。私にはほとんど印象がないが、彼は昔からクラスの中心人物で、いつも学級委員長みたいな役を務めていた。でも親しくはなく、会話もほとんどしたことがない。中学になっても私は帰宅部一筋で、クラスの行事や交流にはほとんど参加しなかった。
そんな彼が私に連絡してくるのは不思議だった。
「伊佐くんか……ごめん、すぐには思い出せなくて……あの、えっと、何か用?」
「実はさ、この学年の成人式がもうすぐだろ? 昔のクラスメイトで集まって同窓会をやろうかって話になって。俺が連絡係になったから、当時の名簿の番号に片っ端からかけてるんだ。枯木くんはどう? 来られる?」
同窓会? その言葉を聞いた瞬間、断ろうとしたが、ふと思いとどまった。この機会に当時のクラスメイトから何か手がかりが得られるかもしれない。
そう考えて、私は唾を飲み込んだ。
「あ……うん、わかった。」
「よかった! じゃあ枯木くん、メールアドレス教えて。日時と場所を送るよ。」
メールアドレスを交換した後、彼は電話を切った。私はスマホの画面を見つめてしばらく考えた。
数日後、故郷へ向かう電車に揺られながら、私は特に感慨はなかった。むしろ拒絶感の方が強かった。良い思い出のない場所に、簡単に愛着など持てない。好都合なことに滞在は短く、家には泊まらず近くのホテルを予約した。荷物をまとめ、近くで軽く食事を済ませて家路についた。
今日の予定は明確だ。まず家を調べ、その後夜の同窓会に参加する。
新しく積もった雪を踏むと、足元からぎゅっぎゅっと音がした。懐かしくもあり、どこかよそよそしい通りを歩きながら、白い息を吐き続ける。
「静かだね。」
遥が私の横を並んで歩いた。
「こんな田舎町の冬はいつもこうだ。時間が長くて寒い。この町は腐っていく死体みたいに感じるよ。」
「その例え、ちょっとひどいよ。」彼女は周りの屋根を見上げた。雪が一握り以上積もり、次の瞬間にも家を押し潰しそうだった。
「だから高校卒業後は南の方に行ったんだ。南の奴らが雪を見たがるのと同じ理由で。」そう言いながら、渡辺の顔を思い浮かべた。
彼女は頷き、私の顔に視線を移した。「冬が長いなら、短い春夏秋はもっと美しいよね?」
「君は本当に苦しい中でも楽しむのが上手だな。」私は思わず笑った。
その後しばらく歩くと、懐かしい家が目の前に現れた。
「行ってらっしゃい。」遥が励ますように私の背中を叩いた。
私はそのドアを見つめ、思わず後ずさりそうになったが、横の遥を見て覚悟を決め、ノックした。
一、二分ほどして足音が近づき、ドアが開くと父の顔が現れた。仕事のスーツを着ていて、ついさっき帰ってきたようだった。息を吐くときに酒の匂いがした……酔っているらしい。
「何しに来た?」父の声は平坦だったが、少し驚いていた。彼は私の顔をじっと見つめ、私は唾を飲み込んで、事前に用意していた理由を口にした。
「昔の物で持って帰りたいものがあって……すぐに出るから、泊まらないよ。」
彼はしばらく私を見てから、自分の部屋に戻りながら言った。「家を散らかすなよ。」
私は小さく頷き、遥と一緒に家に入った。二階へ上がろうとしたとき、部屋の中から父の声がした。「休学の件、学校から連絡があった。お前がどうしたいかは知らないが、もしもう勉強する気がないなら、早めに退学した方がいい。大学の学費は馬鹿にならないからな……」
「…………」
私は答えず、そのまま二階へ上がった。
部屋のドアを開け、懐かしい空間に入ると、床に雑多な段ボールが増えていたが、家具はほぼそのままだった。私はゆっくりとベッドに横になり、天井を見つめた。言葉にできない感情が全身に広がった。
突然、隣に気配がした。振り返ると、遥も私の横に寝転がっていた。彼女も天井を見つめている。
「ここ、狭いね。二人で立つのもやっとだ。」
「うん、そうだね。」私は視線を天井に戻した。「でも小さい頃の僕にとっては、ここは十分広かったよ。だって世界のほとんどだったから。」
彼女は何も答えず、ただ静かに横たわっていた。
私は起き上がり、部屋の中を歩き回った。窓の外は見慣れた雪景色。机の前に行くと、埃が積もっていて、上部の本棚には昔読んだ本が並んでいた。適当に一冊開けてみると、内容は変わらず懐かしい。私は時間をかけて全部確認したが、手がかりは見つからなかった。
次にそっと引き出しを開けると、さまざまな雑多な物が出てきた。画材からメモ用紙まで。どう探せばいいか悩んでいると、奥の方に積まれた白い紙の束が目に入った。
それを取り出して、これが何かわかった——私が昔描いた絵だった。
ベッドの上に広げると、遥も興味津々で寄ってきた。
「たくさんあるね。昔、こんなに描いてたの?」
「ここに残ってるのはほとんど小学生の頃のもの。中学以降はデジタルに移行してたから。」
そう言いながら、私は半分を遥に渡した。「これ、君に任せるよ。中に何か変な絵がないか探してくれ。手がかりになるかもしれない。」
遥が頷いたので、私は一枚ずつ見ていった。幼いタッチと線に、感慨がこみ上げた。隣の遥は時々不思議そうな笑みを浮かべていた。おそらく、私が一番最初に描いた抽象的な絵を見ているのだろう……
さらに見ていると、遥が一枚の絵を差し出した。「これ、見て。」
絵の中には人物が描かれていた——正確には人物と言えるかは微妙だが、着ている浴衣からそう判断しただけだ。人物自体は……正直、何を描いたのかさっぱりわからない。でもその絵を見ていると、胸の奥がざわついた。私はそれを別に置いて、残りを遥と一緒に確認した。
結果、手がかりらしいものはなかった。浴衣の絵を含め、心に響く絵は数枚だけで、ほとんどが遥が見つけたものだった。内容は浴衣の他に、保健室、鳥居、小さな家、そして電話ボックスらしき建物が描かれたものがあった。
私はその電話ボックスに特に興味を引かれた。私の記憶にそんな場所はないのに、なぜ描いたのだろう?
考えてもわからず、私はこれらの絵をバックパックにしまい、部屋を片付けた。他に何もないことを確認して家を出た。出るとき、父はダイニングテーブルで背中を向けて酒を飲んでいた。テーブルの上はインスタント食品ばかり……親子だな、と私は思った。
ドアを出る直前、父が一言聞いた。
「彼女……お前の母さん、会いに行ったか?」
「……いいえ、あれ以来一度も。」
「そうか。」
私は母に会いたくないわけではないが、この何年も連絡がないところを見ると、彼女も私を忘れたのだろう。人は嫌な記憶を、なんとかして忘れようとする生き物だ。
外に出ると、遥が私の左側に立っていた。空はすでに暗くなり始め、冬の日は本当に短い。彼女は夕陽を見つめ、突然聞いた。「これから同窓会に行くの?」
「うん……」私はスマホを見て、伊佐から送られてきた時間までまだ少しあることを確認し、どう時間をつぶそうか考えた。バックパックに目を落とし、ふと思いついた。
「近くに昔あった電話ボックスを探してみない?」
「電話ボックス?」彼女は首を傾げた。「あの絵のせい?」
「そう」私は頷いた。「今も残ってるかわからないけど……見つかったら、何か思い出せるかもしれない。」
この案はほとんど当てずっぽうで、私自身も期待していなかったが、遥は頷いた。
「わかった! 近くを探してみよう!」
その後しばらく、私と遥は近所を歩き回った。この時代、電話ボックスを使う人はほとんどいないが、こんな田舎町は数十年変わらない。私たちはいくつか見つけたが、どれも懐かしさは感じられなかった。
その間、遥は興味のあるものを見つけると猫のように走り回り、私は後ろを歩きながら、周りに何か手がかりがないか探した。
町を何周かして当然のように収穫はなく、時間が近づいたので同窓会に向かった。学校は翌朝にしよう。
「わあ! ここにアイスクリーム屋さんがあるよ。」
遥の驚いた声に視線を向けると、飲食店が並ぶ通りに本当にアイスクリーム屋があった……冬にアイスを食べる人なんているのか?
「ねえ、秋生くん、ひとつ買おうよ?」
本当に冬にアイスを食べる人がいるらしい。
「……同窓会が終わってからにしよう。」私はそう言って、遥を連れて伊佐と待ち合わせた店に入った。
伊佐に会った第一印象は、向こうから話しかけられなければ絶対に気づかなかっただろう、だった。顔立ちが大きく変わったわけではないが、私は人の顔を覚えるのが苦手だ。それに彼は今、スーツを着ていて、学生時代とは雰囲気が全く違っていた。
伊佐は軽く挨拶を交わした後、私を個室に案内した。人は十数人ほどで、私が知らない人ばかりだった。彼らも私を少し不思議そうに見ていたが、「久しぶり」「元気?」などと笑顔で声をかけてくれた。私は逃げ出したくなるのを堪え、隅の席に座って開始を待った。
その後も何人か来て、皆、久しぶりの友人と隣に座って昔話を始めた。私は一人、テーブルの上の菓子を食べながら気を紛らわせた。
「そんなに食べてたら、ご飯入らないよ?」遥が隣で笑いながら首を振った。
「ここでスマホいじってるふりするよりマシだろ。」
「ふふっ、大変そうだね。」
「だからこういう集まり、嫌なんだよ……」
そう言いながらも、私は来てしまった目的を忘れず、機会をうかがって質問するつもりだった。
全員揃った後、皆で食べながら話し始めた。伊佐は私の隣に座り、私の居心地の悪さを察したのか、静かな感じの女生と一緒に私を会話に引き入れようとしてくれた。
「そういえば、枯木くんは大学に通ってるの?」伊佐が何気なく聞いた。
「うん……芸術学部。」休学のことは言わなかった。言えば面倒になるだけだ。
「へえ、すごいね。私は高校卒業後すぐ就職したけど、今の仕事は全然うまくいってないよ。」
「伊佐の話、信じちゃダメだよ。彼の会社、結構大きいんだから。」静かな女生が笑い、ビールグラスを傾けた。「芸術学部か……枯木くん、芸術家になるの?」
「あ……いや、ただ……その、こう……」
私はどう答えようか考え、内心で頭を抱えた。これだけで話題を合わせるのが大変なのに、どうやって質問しよう。
遥が突然私の肩を突いた。「画家になりたいって言えばいいよ。」
「え?」
「信じて。」
私は素直に従った。二人は興味を持った様子だった。
「同級生に有名人が出るかもね。」
「枯木くん、絵描くんだ。」
「それで、秋生くん、さっき見つけた絵を出して、『ずっと勉強してたんだけど、昔の絵は下手すぎて自分でも何描いたかわからない』って言ってみて。」
私は遥をじっと見つめた。こんな使い方があるとは思わなかった。
絵を出した後、二人は興味深く見て、どこを描いたのか話し合った。
「この鳥居と家の絵は……近くの神社じゃない? 昔、花火大会やってたやつ。」
「これは保健室だよね? うちの学校の。江都先生ってすごくいい先生で、私もその影響で医学部目指したんだ。」
「この電話ボックス……」二人は少し考え、静かな女生がふと思い出したように顔を上げた。「郊外のあれじゃない?」
伊佐もそれで思い出したようだった。
「郊外?」その言葉に、私は手がかりの可能性を感じた。静かな女生が頷いた。「この近くにあるよ。昔、結構有名で、学校では『深夜十二時に行くと、未来の自分に電話できる』って噂があったの。」
「自分の未来がどうなるか知りたいか?」
その瞬間、私の脳裏にそんな言葉がよぎった。直感的にそこだと確信した。私は深呼吸して気持ちを整え、場所を聞き、「そうか……絵を見てくれてありがとう」と言った。
「いいよ、面白い絵だったし。枯木くんが大画家になったら、私の仕事も割引してね。」静かな女生が冗談めかして言った。
その後もいくつか質問したが、有益な情報は得られなかった。私は電話ボックスに行きたくて、適当に話を合わせて早めに切り上げ、スマホで電話がかかってきたふりをして言った。
「あ、すみません。急に家から用事ができて……」
「そうか。じゃあ出口まで送るよ。」伊佐が立ち上がり、他の人たちは特に反応しなかった。私がこの集まりではどうでもいい存在だったからだ。
出口で、伊佐が突然言った。「実は、枯木くんを見たときから何か懐かしい感じがして、ずっと何だったか思い出せなかったんだけど……」
私は彼を振り返った。
「さっきの絵を見て、思い出したよ。小学校のとき、君がその絵をクラスでみんなに見せて、『友達と一緒に描いた』って言ってたよね。それが急にいなくなったとかで、後で何人かと喧嘩したって聞いた気がする。具体的なことは覚えてないけど、あんまりいい話じゃなかったみたいだね。」
伊佐の顔を見て、私は何と答えていいかわからなかった。彼は笑って言った。「まあいいや。何かあったらまた連絡して。成人おめでとう。これから、みんな立派な大人になろうぜ。」
伊佐が戻った後、遥は大きく息を吐いた。「はあ……同窓会、つまんなかった。全然知らない人ばっかり。」
「学生時代を懐かしむんだろうな……」
「秋生くんがここを嫌う理由、なんとなくわかった……こういう面だけ見ても、つまらないよね。」
「うん、理解してくれてありがとう。」
私たちはそう話しながらアイスクリーム屋の前を通り、私はダブルを注文して遥に渡した。「はい、さっきの同窓会での助けに感謝。」
「気が利くね。二個もくれた。」
「感謝だから……」
「秋生くんは食べないの?」
「僕はいいよ。この寒いのにアイスはまだ早い……」
「え〜、一口ちょうだい。ほら、私のあげる。」
「いや……いい。」
こうして、私と遥は徒歩で電話ボックスを目指した。
電話ボックスを見つけたとき、外は雑草に覆われ、ひどく荒れ果てていた。赤い外装には銅錆と苔が生えていた。
慎重にドアを開け、中に入ると軽い錆の匂いがした。廃棄されて久しいようだが、中には子供たちの落書きがたくさんあり、その中に二つの赤い花のような模様を見つけた。
その瞬間、私はもう一つの記憶を思い出した。
…………
「聞いた?」私は彼女の隣に顔を寄せて聞いた。
「何?」保健室で絵を描いていた彼女は、私の突然の言葉に不思議そうな顔をした。
私は後ろに隠していた絵を彼女に見せた。赤い電話ボックスが描かれ、横に大きく「未来」と書いてある。
「あのさ、深夜十二時に郊外の電話ボックスに行って、九を九回押すと未来の自分に電話できるんだって。」
「うーん……絶対嘘でしょ?」彼女は馬鹿を見るような目で私を見た。
「でもみんなそう言ってるよ。本当かもしれないじゃん? 試してみるだけだから、損はないよ。」
「嫌。」
「お願い。」
「断る。」
「わかった……」私はベッドに肩を落とし、魂が抜けたようにがっかりした様子を見せた。
彼女は再び絵を描き始めたが、数秒後に私を見て、また描き、数秒後にまた見て……それを十数回繰り返した後、とうとう耐えきれなくなったように言った。「……わかったわかった! 一緒に行くから!」
「やった! 君は最高だよ!」私はベッドから飛び起きた。自分が騙されたことに気づき、彼女は顔を真っ赤にした。
後で私は、約束した特盛アイスクリーム二個分で死刑を免れた……が、結果的には目的を達成したよね?
夜、私は懐中電灯と硬貨を用意し、宝くじの当選番号を聞こうと思って紙とペンも持った。こっそり靴を履いて家を抜け出し、学校の門で彼女と合流した。彼女は電柱の下で膝を抱えて震えていた。
「よし、来たよ……えっと、どうしたの? 暗いの怖い?」
「馬鹿、馬鹿、馬鹿!」彼女は私を見るなり怒って叫び、目には本当に涙が浮かんでいた。
「ごめん、次はもっと早く来るよ。」私は後頭部を掻き、困った。
その後、私たちは並んで歩いた。当時の通りは街灯が少なく、ひどく暗かった。彼女は私の袖をずっと掴んでいて、まるで私が次の瞬間に置いていきそうに思っているようだった。
「意外と臆病なんだね。」彼女を緊張させないよう、私はわざと軽い調子でからかった。
「ふん……あんたが馬鹿なだけ!」彼女は頰を膨らませて言った。「後のアイス、三個! いや、四個!」
「そんなに食べたらお腹壊すよ。」
「知らない! 罰だよ!」
私は仕方なく頷いた。彼女はすぐ忘れるだろうと思った。
さらに進み、ようやく郊外に出た。もう少しで電話ボックスが見えるはずだと足を速めたとき、彼女が私の肩を突いた。
「前見て。あそこ、光が……」
その言葉で私は嫌な予感がした。幽霊ではなく、大人に見つかるのではないかと思った。この年頃で夜中に外を歩いていたら、警察に連れていかれる。
私は慌ててゴミ箱の陰に隠れ、前方を見た。巡査が懐中電灯を持って見回りをしているようだった。
「最近ここに来る人が多すぎて、警察が張り込んでるのか……」私はそう呟いた。
「どうしよう?」彼女も私の隣のゴミ箱に隠れて小声で聞いた。
私は持っていた目覚まし時計を見て、もうすぐ十二時だと気づき焦った。周りを見回し、巡査を遠ざける方法を考えた。考えた末、私は計画を立て、時計を11時59分にセットして遠くの草むらに投げ、身を低くして心の中でカウントダウンした。
「りんりんりん!」
静かな夜に目覚ましが鳴り、巡査はすぐにそちらへ向かった。私は反対側の影に回り込んで電話ボックスに入り、硬貨を入れ、九を一つずつ押した。
「一つ、二つ……五つ。」
「大変! アキ、巡査さんが気づいたみたい!」彼女が外から電話ボックスのドアを叩いた。見ると、確かに巡査の姿が近づいてくる。
私は額に冷や汗を浮かべ、手を速めた。
「……八つ、九つ!」私は急いで通話ボタンを押し、受話器を耳に当てた。数秒待ったが、何の音もしなかった。
仕方なく諦め、急いで外に出た。巡査の懐中電灯がもうすぐ私を捉えそうだった。私は彼女の手を引いて、背の高い雑草の茂みに飛び込んだ。身を低くして動かず、雑草に体を隠した。巡査は受話器が動かされたことに気づき、周りを探し始めた。私たちはどれくらいそうしていたかわからないが、巡査が諦めて去るまで息を潜めていた。
「はあ、怖かった……」私は地面にへたり込み、大きく息を吐いた。あの短時間で体中に蚊に刺された痕ができていた。彼女の方を見ると、埃を払っているだけで虫に刺された様子はない。なんで俺だけ狙うんだ! と心の中で叫んだ。
「まったく、あんたが行きたいって言うからこんな目に遭うんだよ……」
「でもおかしいな。つながるかどうかにかかわらず、反応があるはずなのに。」私は疑問を口にし、再び電話ボックスに入った。そこで原因がわかった。
この電話ボックスはそもそも通電していなかった。とっくに廃棄されていたのだ。
「あああ、くそ! 誰が広めたデマだよ!」私は目が回り、倒れそうになった。
「はあ。」彼女はいつの間にか中に入って、私を見てため息をついた。とても呆れた様子だった。「そんなにその噂、気にしてたの?」
「うん。」
「どうして?」
「うーん……特別な理由はないんだけど、自分の未来を考えると、いつも暗い気持ちになるから……未来の自分がどうなるかわかれば、もっと頑張れるかなって。」
「悲しい考え方。」
「ちょっと、ひどいよ。」
「ねえ、未来の自分がどうなるか知りたい?」
「え?」私は彼女を不思議そうに見た。
「実は私、小さい魔法が使えるの。未来のあなたに連絡できるよ。」
私の表情を見て、彼女の頰が赤くなった。「いらないならいいけど!」
「いる、いる。」私は慌てて言った。彼女がどうするのか本当に気になっていた。
彼女はどこからかクレヨンを取り出し、電話の下の赤い壁に二つの赤い花火のようなものを描き、ぼそぼそと呪文のようなものを唱え、私に試すよう顎で促した。
「これ……本当に効くの?」私は半信半疑で彼女を見た。
「試せばわかるよ。」彼女は私を電話の前に押し、自分は外に出た。
私は信じがたい気持ちで受話器を取り、耳に当てた。やはり音はない。私は試しに言った。「喂? 誰かいる?」
すると、明らかに声を低くして大人ぶった少女の声が、壁の向こうから聞こえた。「喂? 未来の枯木秋生だよ。小さい頃の僕、電話してきたの何?」
正直、この展開は予想していたが、彼女が本当にやるなんて……私は笑いを堪えて続けた。「でも声、なんか変じゃない? 僕と全然違うよ。」
「これは……変声期! そう、変声期! 大人になると声が変わるんだよ。もう、いい加減にしなよ。何聞きたいの? 早く言わないと切るよ。」
「うーん、次回の宝くじの当選番号教えて。」
「それ以上言うと本当に切るよ。」
「わかったわかった……」私は苦笑し、電話ボックスの金属壁に背中を預けて座った。
「実は、未来の僕はどんな人間になってるか知りたいんだ。」
すると、背後の金属壁の向こうからも座る音がした。
「未来の枯木秋生? それはすごい有名な画家だよ! ピカソやダ・ヴィンチよりすごい! 毎日たくさんのお金で絵を頼まれて、友達もいっぱい! みんな秋生のことが大好きで、毎日とっても幸せに暮らしてる!」
「そんなにすごいの?」私は笑いが声に滲み出ていた。さらに聞いてみた。「じゃあ、小さい頃からずっとそばにいた女の子は?」
「彼女は……」声が少し止まった。どうやって自分を大きく見せるか考えてるんだろう、と私は想像した。
「彼女は世界中を旅する冒険家になったよ! 秋生くんとはなかなか会えないけど、毎回新しい場所から手紙と写真を送ってきて自慢するの。可哀想な秋生は、その写真を見て、彼女がそこにいる姿を想像しながら、一枚一枚絵に描くんだよ!」
「確かに可哀想だね……」私はもう笑いを堪えきれなかった。向こうもそれに気づいたようで、「もう時間だよ! 魔法のつながりが切れちゃう! 秋生くん、絶対にこの未来に向かって頑張ってね!」
その後、声はしなくなり、私は受話器を戻して外に出た。外で真っ赤になった彼女の顔を見て、とうとう笑い出した。涙が出るまで笑い、彼女に心から微笑んだ。
「魔法、ありがとう。」
「ふん……アイスの球、四個ね!」
「わかったわかった、約束するよ。」私は笑みを浮かべたまま思った。今度こそ、彼女が忘れる前に。
後で知ったが、あの電話ボックスはとっくに停電していた。理由はそこに行く生徒が多すぎたからだ。私はその噂を知ったときにはすでに停電した後で、情報がかなり遅れていた。でも後悔はない。もう一度チャンスがあるなら、私はまたあの電話ボックスに行く。
…………
私は錆びついた受話器を見つめ、そっと持ち上げた。小さい頃より、ずっと小さくなった気がする……
そう思いながら耳に当て、ため息のような声で言った。
「ごめん、期待に沿えなくて。」




