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 部屋には木とダンボールとボンドの匂いが混ざっていた。棚には工具や「4年生」と手書きされたダンボールが積まれている。机上の白い粘土をいじっていると、何人かの子どもの笑い声が廊下から流れてきた。

「先生、何作ってるの?」

 体操着を着た男の子が一人で入り口に立っている。

「ああ、健太くん。四年生の授業の見本だよ。粘土を使って自分の好きなものを作るんだ」

 健太は見本に顔を向ける。

「みんなもクラゲ作るの?」

「へ?」

「だって先生、それクラゲでしょ?」

 授業開始を知らせるチャイムがスピーカーから響いた。

「あ、時間だ。バイバイ」

 健太は足早に、どこかに行ってしまった。窓の外では風が木を揺らしていた。

 

 三十人の子どもたちが教室に入ってきた。一人ひとりの顔を見渡すと、子どもたちのおしゃべりが止まった。

「さあ、みんな。今日はこれを使います」

 黒板の前に置いた箱から、シーグラスを取り出す。

「宝石みたい」

「先生、これどこで買ったの?」

 子どもたちの目がシーグラスに集中していた。

「これはね、シーグラスって言って、材木座海岸で先生が拾ってきたんだよ」

 最前列にいた男の子が、急に眉をひそめて言った。

「えっ、拾ったの? じゃあ、ゴミじゃん」

 子どもたちの息を吐く音が教室に広がった。

 スタンドライトをつけてシーグラスをゆっくり回すと、光が複雑に反射した。

「わあ」

 女の子が息をのんだ。周りの子どもたちも、静まり返ってその揺れる光を見つめた。

「あ、先生、こんな茶碗のかけらもあるよ。貝殻も」

「そう、これも同じ場所で拾ってきたんだ」

 子どもたちに背を向け、チョークを手にする。黒板とチョークのぶつかる音が教室に響いた。書く文字に合わせて読み上げる数名の声が聞こえた。

『ちきゅうからのおくりものからイメージをひろげて、ねん土の作品を作ろう』

「今日の目当てはこれです」

 チョークを置いて、再びシーグラスを掲げると、子どもたちの視線が手元に集まる。

「地球の贈り物っていうのはこれね。これらの『地球からの贈り物』と粘土を使って作品を作ります」

 机の下に置いていた粘土板を取り出し、机に置くと紙粘土の匂いがわずかに香った。

「あ、クラゲ」

「そう。これにこんなふうに」

 模様のついたかけらをとり、触手の先に付けた。粘土には他にいくつかのシーグラスが組み込まれている。

「うわ、変な模様のクラゲ」

 教室に笑いが起きた。

「こらこら。いいんだよ。自由に、思うがままにね。人の作品を笑っちゃいけないよ。さあ、好きなものを選んでください」

 シーグラスや陶器のかけら、貝殻を机いっぱいに広げた。子どもの一人がまじまじと見たり、ライトにすかしたりしていた。

 窓の外は曇り空だが、隙間から澄んだ青が覗いていた。窓の近くのカレンダーには二十六日に小さく星のマークが書かれていた。

 賑やかな声が聞こえ、子どもたちの輪に戻った。

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