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プロローグ

雨だった。

冷たく小ぶりな雨が、芝を、観客席を、騎手達を濡らしていた。

雨が振り始めた時どう走ってレース展開を作るかを北海輝天きたうみ てるたかは考えていた、競馬はその日の状況で展開がひっくり返る、どんなに強い馬でもその日の状況、状態により負けてしまう、だからレース中の展開は常に考えなくてはいけなかった。

濡れた芝を馬の蹄が蹴って走っていく

(よし…ここだ)そう思った輝天は仕掛けようと手綱を引く、カーブを曲がり直線に取り掛かった時だった、輝天の視界が地面に近づいた

落馬だった、どうやら馬が足を崩したらしい

時速60キロを超える鞍上からいきなり放り出された受け身はうまく取れなかった、ベチャベチャと音を立てて輝天は転がった、うまく立てない、力が入らないうつ伏せ状態から動けない

意識が薄れ始めた、痛みは感じるがそんな事どうでも良かった、今あるのは、まだ走りたいという気持ちと終わりたくないという気持ちだけだった、視界がぼやけ、やがて暗闇に飲まれていった、最期に聞こえたのは雨音だった。


「よく…ったぞ」

誰の声が聞こえた、何を言っているのか分からなかった、神の声か、天使の声か、目を開けるとそこは知らない所だった。

上品な柄のついた天井に大きな窓があった

そして輝天は、上品な顔した女の人に抱きかかえられていた、その横には位の高そうな顔してちょび髭を生やした男が立っていた。

その男も涙ながらに何回も「良かった」と言っている、輝天を抱きかかえる女の人が何かを言っていた


「ヘデン、私たちの子よ…」 


理解が追いつかなかった、子?何を言っているのか、自分は落馬で死んでしまったはずだと輝天は思った、しかし自分の手を見てみると小さかった、自分の姿は見えないが何かしらで赤ちゃんに戻った…というか、生まれ変わったというのを理解し始めていた。


「あぁ…レイラ、本当にお前はよく頑張ってくれた、こんな可愛い子を産んでくれた」


この女の人の名前だと分かった、多分この自分を抱きかかえているレイラという女の人が母親で今話しかけている男の人が父親だと輝天は思った。

そして急激な眠気に襲われ視界は闇に覆われていった。






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