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その4 『ラブコメ的展開を見た日』下

場面はいつもの喫茶店から。

「――・・・と、まぁまた何やら起きたみたいです。 キツネさん」

「今度はラブコメですか」

「・・・はぃ?」



有希ちゃんのご要望通り一緒に下校し(君島トオルは部活を見に行った)、中学が同じということからわかると思うが家もそれほど離れていなく、そのため最寄り駅は一緒なのだ。

ただそこから西口と東口で方向が分かれるのだけど。

私は東口に向かう有希ちゃんを見送った後、駅内の本屋で時間を潰してから同じ方向の「東口」へと歩いた。


何故って、そりゃあ「たぬき堂」が「東口」方面の商店街の端っこにあるからなんだけど。


商店街内の個人経営の喫茶店ってのは制服姿の少女が一人で入るにはかなりの勇気がいる。

私の場合、キツネさんに案内されて初めて「たぬき堂」に入ったからこうして常連客となっているが、そうじゃなかったらお店に入る機会なんてありそうにもない。 

そんなところに駅の反対側に住んでいる私が常連客と友人に知られると・・・というか生まれ付いての「主人公」な有希ちゃんに知られたら「連れて行きなさいよ」とか言われそうだし・・・。 

この「たぬき堂」は私の「逃げ場」でもあるので内緒にしておきたいのだ。 

あとはただ単に私が秘密主義な性格っていうのも理由にしておこう。



「ラブコメって・・・私、もしかしてまた巻き込まれ?」

「少なくとも主人公ばりな美少年が好きな少女にとって『主人公<小鳥さん』な状況なんですから、間男ならぬ間女的な?」

いや、有希ちゃんは恋愛ごとお断りだからだし。普通に友達ですから。

少々イキ過ぎな勘違いをしているキツネさんに訂正をし、私の「いつもの」コーヒーを飲む。


本日の「たぬき堂」は平和です。 

私が来た時はタヌキ様もいたんだけど、挨拶もそこそこなところで電話がかかってきて忙しそうに二階に行ってしまった。 

あ、この「たぬき堂」は一階が喫茶店で、二階はタヌキ様の趣味が詰められているらしい。

他のお客さんもいないしタヌキ様も忙しそうだし、苦さ無しの甘いコーヒーをキツネさんに淹れてもらい今日の報告をしたのだ。

それで返ってきたのが冒頭の会話となり現在となる。


「それで小鳥さん」

「何ですか?」

「今日はそのラブコメのことを書くんですか?」

「あぁ・・・」


キツネさんの視線とその質問が私の学生バックに向けられているのを確認し、それに応えて押し込められた分厚い本(元凶)を取り出す。 

いつものコーヒーといい私とキツネさんだけといい一昨日の状況そっくりだがまぁ今はツッコまなくていいだろう。

「そうそう昨日のアレ、これに決定しましたって話を。」

ペラリ。


『わたしとキツネさんと赤い本』


「・・・何ですと?」

「だって、一人より二人。 それに初日から連続で出演しているの私とキツネさんだけですから」

少年の見送りは本に書いていないのでノーカウント。美少女(魔女)なんて言わずもがな。

「その思考もタイトルのセンスも色々と言いたいところですが・・・書いてしまったんですよね」

「えぇボールペンで」

「はぁ・・・書いてしまったんですか」

「えぇえぇ、そうです」


軽く項垂れているキツネさんに哀れみの視線を送りながら優越感に浸っていると、階段を降りてくる音がした。

タンタンタン・・・

「タヌキ様、忙しそうだね?」

いつもマイペースで素敵なオジサマなタヌキ様がアワアワしているとなると、やはり気になる。

あちこち動き回ったのか髪の毛が少々乱れている。

「そうなんですよ。 ここ2、3日で急に副業の方が忙しくなりましてね」

「オーナー、紅茶です。 どうぞ」

「ありがとう、キツネ君」

はぁー。


いつものコーヒーの私、紅茶のタヌキ様、お茶請けとして出されたクッキーを摘むキツネさん。


それぞれ一息入れてから会話を始める。

「キツネ君、悪いけどあっちの仕事が忙しくてお店に来れない日がありそう」

「それは困りましたね。 平日なら大丈夫ですが、週末はやはり厳しいかと・・・」

「うん、僕もそう思っているんだ。 だからさ、ヒナちゃん」

「へ?」

話の内容から私に振られると思っていなく、驚いて顔を上げる。

「このお店『たぬき堂』で働いてみない?」



『タヌキ様の頼み事を私は受けることにした。

私の通っている公立高校は制服もないし、校則もない。

そんなんだからバイトも勿論おkだし、週末の土日は決まりで、平日はタヌキ様の都合で入ることに。

そうなると明日は土曜日なので早速、となるが明日は有希ちゃんとの約束で「買い物」に付き合わないといけないので明後日の日曜日から「たぬき堂」でバイトをすることになった。

タヌキ様にそういった事情を話すと「青春だねぇ」と微笑ましい笑みをいただき、ご理解してくれた。

ありがたい。 』



本に「日記」を書くことも慣れてきて、スラスラとインクを乗せていく。

明日のことも考えて今日は早めに就寝すると決めているため、時計の針は未だ『12』を越えていない。

本当のところまだ眠くはないのだけど、明日イヤこれからを考えると寝て良いのなら寝ていたほうがいいのかも。精神的にね。



『今日の出来事をキツネさんに「ラブコメ」と評されたっていうことは明日も有希ちゃんがいるし、我が高校はラブコメの舞台と成り果てているのかもしれない。

そうなってしまった以上は『脇役以下一般人』に成りすますのが一番と思う。 』


「何を今更」な表情をしたキツネさん(脳内)は本のタイトルを見せ付けたときの表情で帳消しをした。

これで良し。



『兎も角、明日の買い物が普通な買い物であること祈ろう。  』



パタンと本を閉じ、何と書いてあるか分からない表紙を視線で一撫でしてからお気に入りのボールペンを置いた。

「・・・ん~っ」

背もたれに体重を預けて、固まりかけた体をほぐす。 

そうすると本日の疲れが押し寄せてきて、もしかしたらすぐに寝れるかもしれない。

ラッキーと思いつつ背後のベットに向かおうとすると・・・


「何だ。 12時過ぎているじゃん」

そりゃあいつも通りの時間なら眠くなるよね。


有希ちゃんとの待ち合わせに合わせた時間に目覚ましのタイマーをセットし、私は布団にもぐりこんだ。



もし1つの話が4つ以上での投稿になったら①とかⅠでの投稿になりそうです。

*7/7 脱字修正


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