リクエスト1 キツネさん視点『出会い』
連載一周年記念でした。
以下に注意書きみたいのがあるのでお読みください。
*今話はサブタイそのまんまの小話となります。
時間列は本作より前、小鳥とキツネさんが2度目の出会いからしばらくして、です。
*今作は限定ではなく個人の企画のため削除する予定はありません、が場合によってはそうなるかもしれません。
*長い前書き失礼しました。読んでくださってどうもです。
ではリクエストありがとうございました!!
私は人生において『一生モノ』として位置づけられる出会いを数度している。
なんてことのないただの平日の午後、ようやくきた春の陽日は心を穏やかにしてくれる。
そんな心地の中腕を振る舞う。
注がれた波に茶葉が揺るかに踊り、そこから立ち上がる色気ともいうべき香りに包まれた。
あまりの幸福感に目を細め、浸ることにする。
私は人生において『一生モノ』として位置づけられる出会いを数度している。
一人目は『父』。
母を知らない私にとって唯一の親であり家族であった父は自慢する、というより
尊敬すべき人だった。
私を優しく、厳しく育ててくれた父。
確かにそれも大切で宝のようなものだけれども。
やはり父は父の雇い主であった旦那サマの斜め後ろに佇んでいる姿が印象強い。
幼心にあの静かで自然な絵画のような光景は鮮明に刻まれた。
二人目は『旦那サマ』。
父のようになりたくて旦那サマのご好意でその元で働かせてもらった。
上司となった父は厳しく、旦那サマが苦笑してしまうほど。
時折こっそりと旦那サマに色々と教わって、それが父に見つかって二人で
怒られるのだ。
今思えば私が旦那サマを盗ったかのようで父は息子に嫉妬してたのかもしれない。
第二の父、そんな感じの方だった。
三人目は『お嬢様』。
儚げな外見だけれども実際は気のお強い、私だけの『主』。
仕える経緯は中々複雑で最初は私だけが気まずく、彼女はただ受け入れていた。
きっかけはやはり彼女で、今にして思えば一歩引いていたのが悔やまれる。
そんなこともする気もさせる気もまったくなかったのに。
ただそれをきっかけに時は華やかに煌めいてそして雪の結晶のように儚く、融けた。
四人目は『オーナー』。
ココは『タヌキ様』と呼んだ方がいいだろうか。
まぁそれに従う理由も特にないしいいだろう、『オーナー』で。
オーナーとは知り合いの弁護士の紹介でお会いした。
生憎その時の私は不安定で、記憶が曖昧なのだ。
ハッと気が付いたらオーナーの前で紅茶を淹れていて、思わぬ滴がポチャンと波紋を生んだ。
…今ではオーナーにそのことでからかわれるし『皆様』からも笑われているようで
恥ずかしい限りだ。
そして『小鳥さん』。
五人目ではないのは「一生モノ」と位置づけられるほどではない、と思ったからだ。
それでもこうして思い浮かんでくるのは小鳥さんという人物が私にとってそれなりの
『人』だからだろうか。いまいちしっくりくる言葉が見つからない。
彼女風に言えば『言葉は当てはめることより浮かんできてこそ、しっくりでしょ?』だろう。
まぁそれはともかく。
そもそも小鳥さんとは出会いからして衝撃で、まさかあの時の少女との2度目の
出会いで自分が『キツネさん』と名付けられるとはあの時思っていなかった。
それこそしっくりときたその変わり過ぎた名前が今では捨てられないもモノであることは認めよう。
私の名前は『キツネ』。
私の過去の、過去で出会った大事な人たちとは全く関係がなくなってしまった、『キツネ』。
唯一繋がりのあるオーナーは既に『タヌキ様』と呼ばれ『たぬき堂』のオーナーを楽しんでる。
私は、私たちは『キツネさん』と『タヌキ様』として、ここにいる。
そんなきっかけを作った小鳥さんは本当に不思議で…とても面白くて…私にとって、
「何1人内心百面相してるんです? キツネさん」
「…おやまたいらっしゃいましたか。 小鳥さん」
香りを楽しむだけ楽しませてもらった冷たい紅茶は捨てた。
そして、新たに『小鳥さん』のために紅茶を淹れるため、私は動き出した。
色々謎の多いキツネさんがちょっと知れた小話でした。
仕上がりについては触れないでくれると助かります;
*今後リクエスト企画について。
→終了しました。削除予定は今のところありません。