異世界編 その15 『元パーティ:ポテとテマ』
サンヴィレラ街。
オルブライト王国とアジュラ連合国との国境付近にあるこの街は互いの国への
『関所』であり身元審査が行われる場所でもある。
更に詳しく言えばこの街はオルブライト王国側となり、国境は誰のものでも無い
「始まりの河」である。
現在はオルブライト王国とアジュラ連合国は友好関係があるのでそれほど厳しい
審査が行われてはいないが審査門付近は常に緊張感が漂う。
…とここまでがキツネさんの有効活用だ。
街に到着してみると「関所」や「緊張感」とかいった言葉から真面目に暗いトコロかと
思いきやそうでもない。
まず最初に驚いたのは北から南へ街の真ん中を関所まで一直線の大通り。
石畳のこの大通りにはオルブライト王国、アジュラ連合国それぞれの物産を扱った
露店が立ち並び、首都アズライトの城下街のには劣るがとても賑やかだった。
そして歩いてみて驚いたのは「獣人」という存在。
エルフのような見た目ほとんど人ではなく、犬っぽかったりリスっぽかったりする2足
歩行の姿が。 喋る言葉は共通のようで聞き取れたけど見た目が全く異なるヒト達が
人間に混じって…だいたい1:1の割合、つまりドコを見て目に入るわけだ。
最初はキツネさん共々呆然としてしまったけれど
「ファンタジーですから」
「ファンタジーですからね」
ということで受け流すことに成功した。
さてさて。
異世界情緒溢れる光景と現実に驚いていたけれど本日一番の驚きではなかったりする。
昼過ぎにサンヴィレラ街に到着した私たちは飛行獣も入れる獣舎付きの宿屋を探していた。 すると運良く訪ねた宿屋の一軒にいた『運び屋』という獣人が自分のトコの獣舎で良ければ、という申し出によってラバルの宿が決定。 荷物は預かり賃を払えば預かってくれるようなのでその場で私とキツネさんの部屋を借り、獣人の案内でラバルの宿に向かい、さらにその親切な獣人の働き場である『アジュラ商連 サンヴィレラ支部』にお邪魔することになった。
そしてここだ。
身分証明証にもなるミレシアン様がくれた通行証を提示して旅の理由を話していると
こう言われた。
「ほぉアイザワたちのことを聞いているのか。 ならテマも呼んでやろうか?」
「「え。」」
その言葉を理解するのに3秒ほど。
理解してから振り返っての一連の流れに愕然とすること7秒ほど。
10秒間フリーズした私とキツネさんに兎な獣人は瞳でいっぱいのその目を細めた。
首に巻かれたマフラーにつけられた群青色のバッチが見え隠れする。
「それじゃあ自己紹介しとく。 俺はポテ・ユラ。 『半獣』民族であるユラ族の1人で、
弟のテマと一緒に勇者アイザワ一行の御者を務めていた…ぐらいだな、取り合えず」
普通ならそんな展開に『ええぇえ!!』なぐらいは叫んでもおかしくはないと思うけど、
私もキツネさんも「「…」」と無言だった。
いや、無反応じゃないしちゃんとポテという「半獣」さんの言葉は聞いているんですよ。
そうかテマという弟さんと一緒に勇者アイザワ一行に期間的に加わってたんですね、ほら理解もしてる。
でもさ。
この物語の主人公でもなく登場人物でも無いはずの小鳥遊小鳥が初めての旅に
任務の為立ち寄ったこのサンヴィレラ街でたまたま入った宿屋で親切にしてくれた
「半獣」さんが私の任務において接触すべき対象である…という事実。
何この偶然。出来過ぎじゃね?っていうか「補正」っぽいナニかを感じられる。
本日のベストサプライズ!とバカみたいに叫んでドッキリのプラカードの出番を待って
みたかったけど、何故此方の方を無視しなければならないのか…あ、これも含めて逃避
ですか、そうですか。
「小鳥さん、そろそろ復活してください。 早く(現実世界に)帰れるって思えば
いいんですよ」
「何そのポジティブ。 …流石は『先輩』ですねキツネさん」
「…褒め言葉として受け取っておきましょう」
「うん、褒めてるし」
「ただいまー兄さん。 ポックが会いたがってた…てお客さん?」
私がキツネさんに促されてやっと現実に戻ってきた時。
明るい声が後ろから店内へ通る。
振り返るとそこにはポテ・ユラと同族であろう兎な『半獣』さんが。
上着ナシでゆったりとしたズボンにそのズボンの裾を中に入れたブーツ。
モコモコのくせにマフラー…その格好はバッチ以外ほとんどポテ・ユラと同じだ。
つまり…
「弟さん?」
「え、はい僕はそこにいるポテ兄さんの弟のテマ・ユラですけど…」
どちら様でしょうとか邪魔しちゃったかなとかそわそわと落ち着かないテマ・ユラ。
そんなことはどうでもいい。
「おー呼ぶ手間が省けてたな、テマ」
「…兄さん」
「っあ! そんなつもりで言ったんじゃねぇし!!」
「流石にそれは…」
「たーまーたーまーだっつうの! 副官さんもそんな目するな!」
私が言いたいのはこうだ。
トントン拍子に物事を進ませるなってね。
日が完全に暮れて審査門が閉じた為大通りの賑やかな露店たちは店じまいして昼とは
全く違う様子中、私とキツネさんは「紅茶」を飲みながら本日の宿屋の一室でのんびりしていた。
思い返す。
今日は勇者アイザワ一行だったというポテに会えただけでなく同じく元一行のその弟
テマとも会え、話す機会があった。
流れそのものに釈然としないというか素直に受け止められないところがあるけど
一々それに反してたら私の任務は失敗、だろうな。
なので途中雑談を混ぜながらエルフの巫女さん同様インタビューすることになり、
大体のことは話してもらったけど明日も「取材」することになっている。
思い返し終わった。
「さてと」
テーブルを挟んで私とキツネさんは向かい合うように座り、「紅茶」でのんびりタイムは終了。
キツネさんが私の言葉を受けて「オルブライト王国」「アジュラ連合国」「ケヲス自治国」の三カ国が書いてある「世界地図」をテーブルに広げる。
主要都市は勿論関所や国道、街名なんかも書き潰れない程度に書かれている。
そんなモノだから当然サイズもでかくなり、ケヲス自治国の左半分がテーブルの側面に
広げられている。
その重さでソッチ側に地図が落ちてしまわないかと思ったけど、ソコは安心。
地図の右端に空のティーカップが置かれている。
陶器製なのでそれなりの重さがあり、そのオカゲで落ちることはないらしい。
「今日のことを不運か幸運とするかはほっといて、これでラストまでの道のりが
解りましたね」
キツネさんがそう言ってトントンと現在私たちがいるサンヴィレラ街を指す。
「次はアジュラ連合国の首都『コルトベヲラント』。そして…」
国道をなぞって大きく書かれた文字が重点箇所であることを示すトコロに。
「ケヲスまでの国道の南下にある『黒き渓谷』、そこにあるバラド民族集落地
に寄っていますね」
「アジュラ連合国のみが受け入れられた人間の一族、か」
寄り道のようなそのルート。
当然その疑問は訊ねていた。
「何でそのバラド民族の集落地に寄ったの?」
「エルフの誘拐未遂、というよりケヲスがオルブライト王国に手を出したのがアジュラと
しても見過ごせなかったのさ。 元々戦争していた間柄だしな。
で、同時期アジュラ国内でも拉致事件が数件発生しててな、そっちはどうもバラド民族
が関わっているんじゃないかって情報が有力でケヲスとの繋がりをハッキリさせる
ためにも『合同捜査』、っとな」
合同…その言葉にピンとくるものがあった。
「それで勇者一行にアジュラから2名ほど加わった、というわけか」
「知ってたのか。 まぁ結局はバラド民族も良い様に扱われて…思い出したくない
匂いだったな」
ポテの言葉に弟のテマも目を細めた。それによって空気が止まった様に雰囲気が重くなる。
「…」
何があったのかは聞いておきたかったけれど、自分からは聞いてはいけない感じなので黙るしかない。
それは隣にいるキツネさんも同じ。
口を開いたのはポテだった。
「…なぁ管理司書長さん」
「何ですか?」
「お前さんなら話しても良いとは思っているんだが…内容が内容だ。
少しばかり時間をくれないかい? 一日でいいさ。 俺たちが話せること、全部話そう」
「じゃ、それでお願いします」
バラド民族集落地がある「黒き渓谷」。
そこで何があったかはわからないままだけど、そこから先のルートだけはポテから教えてもらっていた。
国道を西に進み、始まりの河を渡るとその国土の大半が山であり十字の真ん中と四つ端からなる都市で形成される「ケヲス自治国」。 一通りこの5つの都市には足を運んでいるらしい。
次は緩やかな斜面から始まり途中から急な斜面となるツンボス突山。
そして最後のデスマウンテン、らしい。
魔王がソコにいるっていう情報が元々あるわけだし「らしい」って言うのはおかしいかも
しれないけど仕方ない。
ポテとテマがツンボス突山までのメンバーだからだ。
何でもデスマウンテンに住む魔獣は縄張り意識が過剰であり侵入者に対して
容赦なかったりとただ単純にレベルが高い地域になるので非戦闘員の2人が
自らパーティーを抜けたらしい。
デスマウンテン以降は巫女さんのいるヴィフィールの里に寄って出発地点でもあるオルブライト王国、となる。
そして現在地のサンヴィレラ街までキツネさんの指が戻ってきた。
「とまぁこんなもんですか」
私に対してなのか単なる独り言として処理して良いのか迷うところだけど返しておかないと部屋が無言になってしまうので応えておく。
「色々と聞くところが多すぎますよねー」
肘をついて頬を支える。
ついでにほんの少しで届かない脚をプラプラ。
「えぇ勿論オルブライトにいる勇者一行に聞けばほとんど解消するんでしょうけど…そう
しないのでしょう? 小鳥さん」
「そうですね。 主人公の「勇者」が「魔王」を倒すまでの旅、ですよ?
アジュラにしてもバラド民族にしてもケヲスにしても…イベントがあったのは必然。
物語なら良かったんですけど歴史ですから登場人物、舞台を調べないといけない
でしょうね」
あ、今私の方が上司っぽいって思った。
まぁ本当に異世界では私が上司なんだけど。
「明日のポテへの取材でその対象を絞る、ですか」
「正解。 勇者帰還までっていう期限を設けたのは自分らだし、のんびりは
してられないしね。 現時点で言えることとしては取り合えず…」
トントン
空いている手を動かし「ケヲス」と文字が書かれた箇所を軽く叩く。
「ケヲスまでは確実に行かないといけないですねー」
私の発言に対面のキツネさんは顎に手をやり「ふむ」と喉を鳴らすように呟くと
「ではそこから先のツンボス突山とデスマウンテンは勇者一行の取材のみで
済ますということで?」
「いやだってそこは高レベルの魔獣エリアですよ? 私とキツネさんで踏み込む
わけにはいかないでしょ」
それとも死にたいの?と言えば時々うっかりなキツネさんはあ、と気が付いてくれたようで。
「あぁそうでした。 しかし魔王が倒されたというのなら少しは安全なのでは?」
魔王が倒されて世界は平和になりました…なんていう文章は一回は読んだことはあると思う。
確かに原因がなくなればそうなるよ。
「どうかな。 なーんかその辺さ、どうもピントが合わないというか霧が晴れないというか
…しっくり来ないんだよ」
「…」
肘を突いて丸めていた背中をまっすぐ伸ばし、卓上の地図の全体を視界に入れるようにする。
そしてこれまでちょっぴり思ってたことを口にする。
「オルブライト王国にしてもヴィフィールの里にしてもこのサンヴィレラ街にしても
…いつも通り過ぎるんだよ」
オルブライト王国では勇者帰還を1つのお祭りのような扱いだった。
まぁそうで良いはずだけど露店街のあの盛り上がり様…まるで退屈だった時に
舞い込んだブーム的な風というか。
ヴィフィールの里は魔獣が住む森の中にあるのだから警戒を怠らないのは当たり前。
それが普通であって勇者一行が魔王を倒したからといってそれを緩めていない。
いつも通り。ずっと。
サンヴィレラ街の大通りは友好関係にあるオルブライト王国とアジュラ連合国の2国民によって賑やかだ。戦争で生活苦だからそれを補う為に物々交換やら服を売る、とかではなく純粋に儲けを追求する商人達によって。
「魔王ってさ…本当に存在していたのかな? 勇者一行は魔王を倒したのかな?」
↓オマケ。
勇者アイザワ一行、サンヴィレラ街に到着する。
そろそろ霧の出る時間だったのでその日は街の宿に泊まることにし、明日関所を抜けることにした。
しかし宿の一階にある食堂で夕食中、アジュラ連合国の首都までの道について街の人間に訊ねるとある問題が発覚した。
「馬が使えないですって?」
「そうなんだ。 この時期は砂嵐が酷くて国道が砂に埋もれてしまって、馬じゃ無理って言われたよ」
「どうすんのよ」
「…そうなんだよなー」
稀有な光属性オンリーという異世界から召喚された勇者アイザワは何の野菜かは
わからないが歯応え充分そうで新鮮そうなサラダを口に入れる。
…うん、味が全くない。
「ケヴィー、あんたスキル持ちなんだからどっかから借りた魔獣で行けば良いじゃない」
「僕の適性は飛行獣のみだよ。 それに飛行獣も騎乗走行獣も慣れるまで相当日数が
いるんだ。 例え借りられても一月はいるね」
「じゃあ魔獣と一緒に御者も雇わないといけないのね」
「『運び屋』を探すしかないね、これは」
取り合えず口の中のものをしっかり噛んで嚥下し、テーブルの上を見渡す。
するとファミリーレストランにあるような調味料のボトルらしきモノがあったのでそれをサラダにかける。
お、色がケチャップとマヨネーズが混ざったような感じだ。 見た目美味しそうになった。
「まぁフランフォルグ様に伝えないとね、人数が増えるんですもの」
「そうだね。 …にしてもフランフォルグ様遅くないかい?」
「もしかしたら別室でオモテナシされているかもよ。 こうした一般食堂で食事する
なんて有り得ないもの」
パクリ。
「そうかもしれないけどさ…でも『先に行ってろ』ってココに来るって言っているのと同じだよね」
「食事を共にするとは一言も言ってないわ。 食後来るかもしれないし」
おぉシャキシャキ感にこのドレッシングの相性良いな。ビリリ。
うまい…ん?ビリリ?……って辛辛辛ぁああああああ!!!!!!!
「どうなるにせよ霧の夜過ぎだから明日、だね」
「そうね。 げ、ケヴィーこれあげるわ」
「何、って…相変わらず苦手なの、ソレ」
水、水は…く、ちくしょう来た時一気に飲み干したから空じゃないか!
セルフだったから…アソコまで歩くまで耐えられない。っていうかすでに耐え切れないんだけど。 仕方ない…湯気がはっきりと見えるスープ。 これで誤魔化すしか…!!
「うーだって叔父様が大好きだからって1日3食以上これが主食になった幼い日の
記憶が今でも鮮明に思い出せるのよ!
私は人生における許容範囲以上食べたのよ、あれで」
「まぁクセが強いコレが大好きっていう君の叔父さんは確かに変わり者だよね。
んぐ…そういえば噂程度なんだけどその叔父さん、庭園にアジュラの新種の果実を
植え始めたらしいね」
「…収穫時期になったら本当かどうかすぐわかるわ」
火傷しないように気をつけて器を持ち、辛さで痺れる口内に。
うぅ胡椒が強い。 そして…沁みる!
舌はミントのようにスースーするけど喉奥は辛さに痺れていて…!
「相席、お邪魔しても良いかい?」
「どうぞ。 ケヴィーもアイザワも良いでしょ?」
「勿論」
「…」コクンコクン。
それどころじゃないしっていうか痺れていてるし取りあえず何だかわからないが頷いておく。 …こうなったら他の食材で誤魔化すか。
「あたしはカトリーヌ、こっちはアイザワ」
「僕はケヴィン。 君たちはアジュラの方だね?」
「おぅそうさ。 俺はポテ・ユラ。 で、隣は弟のテマさ。
確かに見ての通り半獣で…お前さんらが探している、『運び屋』をやってんのさ」
「「!!」」
「そう警戒すんなって。 何、こっちは聴覚が人間の倍以上良いから聞こえて
しまったのさ」
「す、すみません僕が聞こえちゃって兄さんに言っちゃったんです」
ボイルされたソーセージ…これなら辛くはないんじゃないかな。パクリ。
「まぁ何だ、食事しながら話そうじゃないか。 『商売』の話さ」
「…ケヴィー、フランフォルグ様は?」
「僕があとで話しておくさ」
「それじゃあオーケーのようだし、早速…の前にテマ、水をジョッキでもらって来いさ」
「わかったよ」
うぉこのソーセージ…ピリ辛かな。 ピリリ。
ってよく見たら赤いのが練りこまれている!?辛ぁぁぁあああああ!!
「ジョッキで水って…」
「いや、俺が飲むんじゃねえさ。 そこの顔を真っ赤にして悶えているお兄さんさ」
「え、アイザワどうしたんだい? 大丈夫?」
ゆするなケヴィン。 今の俺は何だか小刻みに揺れているんだ、何ていうか辛い。
「あらヤダ。 ってそのドレッシングに半分のソーセージって…」
「おぅさ。 ドレッシングは『唐辛子』で、俺たちみたいな半獣には匂いが
キツ過ぎるから辛さはそのまんまに匂いを柔らかくしたもんで、ソーセージは
『唐辛子』が練りこまれているのさ」
「そんなドレッシングをこんなにたくさんにソーセージ…自殺行為じゃない」
辛い辛い辛い辛い。
「どんな泥酔しや奴でも一発で起きる『唐辛子』を躊躇なくパクついた人間、始めて
見たさ」
「アイザワは…知らなかったんだろうね、多分」
「お待たせお水だよっ」
「あ、アリガトぅ…ピーター、らびっと…」
「いや僕はテマ・ユラっていうんだけど…」
「…何気に重症ね」
「そうだね」
「あーお兄さん、水飲んでからコレ口の中で噛みな。 味覚を反転させる果実さ」
ゴクゴク…ゴクゴク…ゴクゴク。カミカミ。
「あ、何だか甘くなってきた」
「ちなみにお前さんの叔父さんとやらが植え始めた果実がコレだったりするさ」
「…え」
「だって売ったの俺だしな」
「まぁこの果実は主食にはならないさ。 ホラ、食べてみなさ?」
「そうねじゃあ一つ…あら面白い果実ね」
「僕も一つ良いかい?」
「どうぞ。 それにコレ、お酒とよく合うんだぜ?」
「…ケヴィー」
「一本だけだよ、一本だけ」
「アハハハハー♪」
「え、ちょカトリーヌさん!? 俺未成ね…ぶわぁーっ」
「僕だってそりゃあそうさ…」ブツブツ
「…ポテ、テーブル移ろうか」
「名案だねぇ」
「…という訳でしてこのポテ・ユラとその弟テマの2名をアジュラの首都まで
雇うことになりました」
「ちょっと待て。 何が『という訳』かわからんし何だこの状況」
「ハハハー。 まぁ雇い主さんよ、という訳で弟共々よろしくさ」
「オォ、フランやーっと来たのか! お前も一口どぉだ!?」
「……ケルヴィン、あとでじーっくり話そうか」
顔を今度は別の理由で真っ赤に…テーブルの上にはいくつもの瓶が転がりヘラヘラと肩に手を回してくるアイザワからはアルコール臭が。つまり酒だ。
陽気な馬鹿をそのままにして酒瓶の散乱したテーブルを見てみればカトリーヌと
先ほどの弟だろう、の2人がお互いブツブツ呟きながらハイペースで手酌にハイペースで空に。
フランフォルグ・クローリストはピンク色のドレッシングがたっぷりかかったサラダに遠慮なくフォークで一刺しするとその口に突き入れた。
「こんの馬鹿ザワがぁああ!!」
「ギャー辛ッー!!!」