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異世界編 その6『あとの準備は・・・』

この大陸には3つの国がある。

まず私がいる「オルブライト王国」。

魔力持ちの人間が多く暮らす国で、領土・人口共にトップ。

勇者を異世界召喚したなど私から言わせてもらえばファンタジー王道な国。

次に「アジュラ連合国」。

獣人や半獣の大半はこの国に属していて、その各族が集まって出来た国。

人口は3カ国の内一番少ないが、獣人や半獣は人間より寿命が長かったりするんで

私の感想は「量より質」。

最後に「ケヲス自治国」。

人間より平均的に身体が小さいが戦闘能力が高く、実力主義な国。

国内のほとんどが山で、東西南北の都市とその中央にある首都からなる。


以上、この3つが大陸の約半分を占めている。

残り半分は何か、といえば「山」なのだ。

山ならケヲスみたいな国があってもおかしくはないんだけど、

その山が普通ではないため人が住めないのだ。

というのも単純、魔物が多く住み着いているからなんだよね。


そんな山だらけな大陸半分の中で有名なのが「デスマウンテン」と「ツンボス突山」。

一際目立つ高さもそうでけど、この2つの山には特に強い魔物が出現するようで。

「デスマウンテン」なんか魔王がどこかにいる、という噂があるくらい。

勇者もココに向かっていたらしい。


あとは・・・そうそう、この大陸の真ん中には日本最大の琵琶湖が小さく見えてしまうほど

バカでかい河があって。

各国に流れるその河はこの大陸の命を支えているといっても決して過言ではない。

その河の名は「はじまりの河」。 誰の所有物でもなく、全ての源であり、はじまり。


「・・・こんな感じですか」

「まぁそんな感じでいいでしょう。 私も聞いて本で調べた、だけなので」



昨夜の伝言通り、今朝早くミレシアン様の所に行って勇者が訪れた土地を巡りたいので

各地の入国許可証と正式な身分証明書が欲しいといったら・・・その場で渡された。

ちくしょー、やっぱりあの任務はこういうことだったのか。

そしてあと必要なものは全て王族名義で用意して良いまで言われてしまって。

プレッシャーが怖かったけれど、断る理由もないので了解して退室。

あ、場所は水晶の間ではなくミレシアン様の私室でした。

赤い本はキツネさんが持ってていたし、体調が崩れることはなかったです。


退室後、午後に城下町で必要なものを買うとして、お昼まで時間があったので

図書庫にあった大陸地図を見ながら大まかな知識をキツネさんによって植え付けられた。

「で、どうする? この地図は持って行くの?」

広げた地図は最新で各地名が書かれている。 B4用紙2枚分な大きさなんだけどね。

「いえ、図書庫の地図ですし・・・あとで城下街に行く時に買いましょう」

「買い物リストに追加、と」


メモ用紙になる紙、というか紙なら司書長室にいらないほどあったので使わせてもらっている。

書いている文字は現実世界の、我が日本語。

意識すればコチラの文字も書けるけどやっぱり私は日本人だし、忘れては、捨てては

いけないものだと思うので。

それとオマケにキツネさんの有効活用。

「紙」は一般家庭にも普及はしているものの現実世界ほど多用しなく、紙そのものではなく

「本」として使用しているのがほとんど。 だから「紙」だけが大量に放置されている司書長室は

そういった意味ではやはり王族直属の部門ですね、とのこと。


・・・一気に詰め込まれた知識に頭が痛くなるが前日に比べれば、こんなの。

メモを書き終えたときにはお昼の時間になっていて。そこで城下街の屋台を思い出して

「あそこでお昼食べたい!」と私が主張したので、決定。

何のお肉か解らないけど良い匂いのする串焼き、見たことも無い聞いたことも無いフルーツ。

そんなのをお腹いっぱい食べたいんですか、とキツネさんに言われたけれど

いいじゃない。 私とキツネさんは精神は現実世界だとしても身体はちゃんとコチラのもの。

今まで食べてきたのだから、精神が違うだけで受け付けないなんて贅沢な。

「そんなこと言って・・・本当のことを言ったらどうです?」

「おいしそうだったからに決まっているじゃない!!」


呆れ顔は無視して、さぁいざ城下街へ!!




「さてと・・・。 あらかたは揃えましたね」

チェックマークのついたリスト。 

消耗品に関しては移動のほとんどを公道で行くので町が点々と存在しているし、旅行者用の

小屋もあるんで野宿は少ない。 

なので現地で調達し荷物を軽くしよう、のため買い物リストには書いていない。

「王族名義・・・『クローリスト』家っていえばどのお店も「はいはいどうぞ!」っていう感じに

 サクサク買い物できたしねー」


城下街に向かって早速屋台街で買い物。 

さすがにこれは自腹だけど、串焼きは勿論おいしかったし、フルーツはマンゴーとパパイヤの

中間な感じの白くて・・・濃い甘さが白いフルーツ、さすが異世界。

一番おいしかったのは透明な麺と透明のスープ。 

一見つまらないけど味はラーメンと全く同じで。けれどあっさり感がかなり強かったので

もう一杯軽くいけそうな気がした。 だって他のも食べたかったし。

そんな異世界フードを満喫している私だけど、キツネさんもそれなりに楽しんでいるようで。


買い物を終えてリストに残っているのと漏れているのを確認しつつ休もう、とお店の中へ。

ワンプレートの軽食とデザート、紅茶などが揃ったこのお店はまさしく「喫茶店」そのもの。

ゼリー入りの冷たいジュースは私、キツネさんは緑色のジュースとクッキー。

この異世界でもあった「クッキー」にキツネさんは声には出ていなかったけれど、それはそれは

すごい喜んでいる表情で。我が家で食べていたのはキツネさんお手製のクッキーだったので…

というか作れる時点で材料はあったんだし異世界にあってもおかしくないのでは?

そう聞けば「材料が同じなら全く同じ料理モノが出来る、それは珍しいんですよ」と真剣に

語ってくれた。


日持ちが良くて持ち運びおkどこでもいつでも食べれる、それが売りのとある屋台。 

そこでクッキーを見つけてしまったキツネさんはそれからずっと、この喫茶店に持ち込んでまで

ずっと幸せそうに食べ続けている。

「およその準備は出来ましたし・・・あとは何でしょうね?」

「もう少し“旅人ロード”の奥を行ってみますか?」

「そうすると帰りは馬車の方が良さそうですね」

「そうですか」

太いストローでジュースの中のゼリーを吸い込む。

「・・・」

詰まりやがったし。



"旅人ロード”というのは正式にはそうじゃないけれど大体の人が使う名称みたいなもんで、

旅に関する商品を取り扱う店が密集し、ソコに行けば誰でも旅人になれる!な紹介をされてた。 近くにファンタジーとか冒険モノでよく見かける「ギルドホーム 首都アズライト支所」があるらしいのでそれでそういったお店が集まったんだとか。


地図もそこで買ったんだけどそのお店は旅人ロードの入り口付近で、奥の方には武器とか

防具が多いので行かなかったのだ。 

・・・というのはそれなりの理由で。

本当は


「あの勇者と同じデザインの防具 大量入荷! これでキミも立派な冒険者へ!!」

「勇者も訪ねた○○店!! 今なら全品20%引き!」


そんな変な熱気で異様に盛り上がっている地帯に踏み入れたくなかったのだ。

「勇者凱旋」は公表されていないハズなんだけど・・・王城中がアワアワしてるし、

洩れたか洩らしたかで広まったんだろう。 

私にとっては特に関係ないし、むしろ勇者に会っている商人には話を伺いたいくらいだし。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


とはいえその前に「踏み入れたくない」のだ。

せいぜい入り口付近の地図ぐらいで、その先は「NO」。

キツネさんも私と同じ気持ちなのか異様に盛り上がっているゾーンを無言で突っ切る。

中には旅の便利グッツを取り扱っているお店もあったけど「勇者」の文字が入った煽り看板が

視界に入ったため見なかったことに。



黙々とただ前のみを見ながら進んでいくと、やや開けた場所に出た。

「ここは・・・座小市みたいですね」

この場所一体はギルドの土地で、決められた額を払えば誰でも店を出せる。

ただ敷物を敷いて、その上でしか商売は出来ないんだけどね。

けれど普通のお店と違うのはメインは「商品」ではなく「自分」であること。

まぁ見習いが自分を売る為の場所、それが「座小市」。


旅人ロードの奥にあるこの広場は入り口付近とはまた別の熱気があって。

けれどそれは先程の不快さはなくて・・・

「とはいっても冒険者じゃない私たちには無用ですかね」

「そんなこと言って・・・本当は見たいんでしょう?」

「だって、楽しそうじゃないですか」

キツネさんのため息は無視して、私はまず一番近くの店を覗こうとした、その時。


「「---!!」」


奥の方にある人だかりから歓声が上がる。

広場に入った時から人が集まっていたけど商品の実演とかもやっていたので

多分それかな、と思ってたけど・・・そんなレベルじゃないな、アレは。

「何だと思います? アレ」

後ろに控えるキツネさんに聞いてみる。

「何人か手を上げている人がいますしねぇ・・・競売でしょうか」

確かに視線を人だかりに戻してみると何人かが手を上げたり下げたり。

盛り上がっているみたいだし・・・

「行ってみましょうか」



「コノ子はそんじゃそこらの飛行獣とは違うよ!!

 血筋は勿論一等級! 育成・調教はその腕前はケヲス一のベレントの愛弟子である

 この私アイラが5年かけて鍛え上げた今まで以上の出来さ!!

 さぁさぁ我がコに心を奪われたヒトよ、コレが1万セルだなんて笑わせる!

 上はいないのかい?」



木箱を台に声を張り上げている女性が人だかりを見渡すと、手は上がり値も上がっていく。

一万セル、といえば大体一般家庭の年収に相当し一般人ならある意味笑える額だ。

まぁ馬車や騎獣より断トツに速い飛行獣なら1万セルでも高くはない、というのがキツネさんの

考えらしいが…現在3万セル。

それでも人の手も大分減ってはいるけれど熱心な何人かまだ競っている。

「小鳥さん、コチラからなら見れますよ」

そう言われて人だかりの後ろからズレて木台の斜め後ろへ。


堅牢な檻に頑丈そうな鎖。

人の盛り上がりなんか気にならないようで・・・あ、あくびした。

商品である飛行獣というのは小型のドラゴンをイメージしていたけれど、違った。

一言で言うならば「途轍もなくバカでかい鳥」。

藍色の羽はふさふさしてきっと顔をうずめてみたら気持ちよさそう。

座り込んでいるため脚は見えないが、尾の先っぽの羽は空色。

そして鳥には無いはずの角が2本。


触ってみたい・・・!!

ふわふわな羽は勿論、存在感ありありな角も。

きっと心地いいんだろう!きっと想像できない驚きがあるんだろう!


思わず飛行獣のいる檻に近づこうとした私の肩をキツネさんに掴まれ、抑える。

と、そこで檻の中の瞳と合う。

「・・・」

喧騒の中に沈黙が生まれる。

音だけでなく動きも沈黙したその場を打ち破ったのは、キツネさんだった。



「10万セル、でどうでしょうか」



喧騒が沈黙を塗り潰した。



次回から勇者アイザワサイドのオマケが付きます。

ネタばれとかはないですが、彼らのストーリーもあるので。


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