その2 『少年を見送った日』上
何にも書かれていない本を(不本意で)手に入れ、(迷惑な)主人公フラグを持たされた
私、小鳥遊 小鳥。
高校一年生でまぁ小鳥は大丈夫でしょう。けれどこの先が不安です。
どんなに年を取ろうと私は「小鳥」なんですね…お母さん(名付け親)。
現在 何も書かれていない本 は タイトルの無い本 へと進化しました。(てってれー)
昨夜どうやって(不本意で)本を手に入れたかをキャスト私とキツネさんの二人で低コストに綴った。
そのおかげで少なくとも私の日記もどきがあるおかげでタイトルのみが無い、ってことになったんだけどねー。
タイトルは学校の帰りに「たぬき堂」に寄って、キツネさんと考えようかと思っている。
勿論、今日この本に書くことはそれにしようと思ってあえて昨日決めなかったんだけど。
適当でいいんだよなー。 ってか、よくよく考えたら作者名も書く必要があるのだろうか?
本名で書くのもあれだし…ペンネームを考える…あ、これ話題として使えるな。
5月14日 木曜日 天気は良好、晴れです。
でもこれだけ陽射しが眩しいと帽子か日傘が欲しい。 けれど残念ながら私服OKな高校で
「なんちゃって制服」を着ているため、帽子は無理そうです。
一応説明はしておくけど、「なんちゃって制服」というのはそのまんま、自分で自由にコーディネイトした制服、または制服風な私服、といえば良いのだろうか。
Yシャツにクリーム色のサマーセーター、紺色の膝上丈10センチのスカート、同色の靴下。
あとは気分でパチッと止めるネクタイ・・・生憎今日は付けていないけど。
まぁともかく。 (一部除くが)学生制服には帽子が似合わないってことです。うん。
いつも通りの道のりを今日書く文章を考えながら進む。
気が付けば駅から出て歩いて10分の道のりの途中…随分考えていたようだ。
少し早めに家を出ているため同じ学校の生徒もあまり見かけず、むしろ駅に向かう人の方が多い。
とはいえもう少し歩けば同じ学校の人しか見かけなくなるんだけどね。
そうやっていつも通りの周りの様子を楽しみながら、歩く。
そのまま学校に着けば・・・着けばよかったんだけど。
頭の中にあの タイトルの無い本 が強引に浮かび上がってきた。
「異世界に行きたい!!」
「っそ。 じゃあ叶えてあげる」
「え、マジで!」
「うん、マジマジ。」
あー。
「でもさ、どうやって?」
「何言っているの、そんなのは『魔法』よ」
「おー異世界召喚ってヤツだな!」
「そうそう。 私が送ってあげる」
浮かび上がってきたことをツっコもうと思ったけど…一言言おう。
ナ ン ダ コ レ ハ
隠れた近道として公園を突っ切ろうとしただけなのに、っていうか私の通学道でなんだ、この目の前の異界光景。
学生バックにYシャツ…バックが近くの私立男子高校の物なのでそこの生徒に、謎の美少女。
服装は至ってシンプルなミニスカワンピ。 けれど色は魔女の如く紫だ。
少年よ、怪しいと思わないのか、人形みたいな顔をしているが見たまんまでいえば彼女は『魔女』だ。
ミニスカだけど。
「どんな世界がいい?」
「やっぱファンタジーじゃなきゃな!」
「ふぁんたじー? 何ソレ?」
「んーまぁ、この世界に無い魔法や人種がいるとこってカンジ」
「っそ。 でもそれだと候補が多すぎるわよ?」
「どんな候補があんの?」
「えっとねー」
ゴソゴソとポケットから紙の束を取り出す魔女(ほぼ確定)な美少女。
っていうか、どうする私!?
少年と美少女は互いに見つめあって集中しているようで私に気づいていないが
私からは会話が聞き取れるほど実はそれほど距離は長くない。
危ない薫り満点すぎるこの状況に逃げ出したくて逃げ出したくて…。
とはいえ地面は小石混じりの土で無音で逃げられるとは思えない。
その前にこういった見ちゃいけない状況を前にして逃げ出したらかすかな音でも聞き取られて
私の存在がバレるっていうのがお決まりじゃないだろうか?
ならばこのまま知らん顔して通り過ぎれば…
いや、あえて「おはようございます」と挨拶をして通り過ぎれば…
逆に一切動かないで息を殺して去るのを待てば…
ヤバい…上手い逃げ出し方が思いつかない。
あーだこーだと考えてもどれも「私の存在がバレない」ですんなり終わってくれない。
これって『巻き込まれ』パターンじゃないでしょうか、キツネさん…。
鞄に何とか詰めこめられたずっしりな本の存在を思い出しながら問いかけてみれば
脳内でニコヤカに「王道ですね」とキツネさん。
そうか、まずは王道…ってんなもんいるか!
ちょっと長かったので、上下に。