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その5 『彼女がヒロインと気付いた日』下

下です。

場面はいつもの「たぬき堂」からです。

喫茶店「たぬき堂」。

謎な赤い本を手に入れてから私はここに毎日通っていることにふと気が付いた。

今までは気が向いた時に来ていたのだが、これはもう常連というか常習者…?

いや、その表現だと私が何やらヤってはいけないことをヤってしまっているようなので却下します。

ともかく。

昨日一昨日同様、本日の顛末をネタにキツネさんとお話することにした。


「いやはや、本当に何と言うか……」

カウンターを挟んで向かい合っている私とキツネさん。

本日は財布に多少のお金があったのでアイスココアを頼み、キツネさんは先程までいたお客さんのカップなどを片付けていた。

「呼ばれなかったことに安堵して他の感想が浮かばないんでしょ、キツネさん」

カランカランとグラス内の氷を弄びながら指摘する。

一見完璧そうな雰囲気でクールなキツネさんだが、慣れてくると意外にわかりやすいのだ。

それが私の「面白い」という感想の理由。

「わかっているのでしたらいいじゃありませんか。 それで?明日はデートですか」

「うん。 有希ちゃんと君島トオルがね」




カフェで色々と話し込んだ後、君島トオルは駅に来ていたのはちゃんと予定があったようで(決して有希ちゃんを追いかけて来たわけではない:本人談)、街中に消えていった。

その後姿を見送り、残った私はブッちぎれそうな有希ちゃんに連れられカラオケへ強制連行となった。

費用は全て有希ちゃん持ち。 

カラオケという習慣が全くない私は聞き手オンリーで、マイクは有希ちゃんがずっと握り締めていた。

ストレス発散のシャウトをBGMにしながら「何故」を説明しよう。

これまでがこれまでだからすでにわかる人もいるかもしれないが、一応。 コホン。


待ち合わせ時間ジャストに到着した有希ちゃんは噴水前で私を待っていた。 

五分待っても来なかったらここ(噴水広場)を見下ろす位置にある適当な店に入って待つことにしていたらしい。 

しかしそんな有希ちゃんに5分も立たないうちにまず声をかけてきたのがヨボヨボな禿のおじいさんだったらしい。 

最初は適当に交わしていたがしつこく、流石に「どっかいけ」と強く言えずにいたらひょろい男どもが集団で絡んできて…そんな感じであのリングは形成されたらしい。  

そして気が付いたらとんでもない集団が集まっていて逃げ出そうにもタイミングがわからなくて困り果てていたところ、突然手を引かれ、見てみるとあの君島トオルだった。


経緯を聞き終えると君島トオルはただ「そうか」だけ言い、本当はそこで席を立とうとしていた。

しかし有希ちゃんが呼び止め、「借りがでかいのよ。 相応な礼をさせなさい」…有希ちゃんらしい言葉だ。

そして君島トオルは「明日、一日僕に付き合って欲しい」と言い、有希ちゃんが理解する前に「デート、だよ」と続け店から出て行った。  

…元凶が去ったは良いけど落としていったのはそれなりのもので。

  

有希ちゃん曰く。

明日はかなりのストレスを溜めるのだからそれまでに今のストレスを退けるのよ、ということ。

そして付き合わされている私は彼女が示す曲番号をただただ打ち込み、その合間に昼食にと頼んだ「きつねうどん」を食していた。  

奢る覚悟でいたがすべて有希ちゃん持ち。

けれどこの苦行カラオケ…あと4時間あるんだよね。



声を多少嗄らしているがいつもの有希ちゃんとは駅で別れ、私は重い足を引きずりながら「たぬき堂」に向かい、そして現在いまとなる。


別に有希ちゃんがかなりの音痴とかではなくて。

むしろ上手い方になるんだけどね…流石にカラオケ約5時間というのは初心者にはキツかったです。

「はい、どうぞ」

トン、と置かれたお皿の上にはナッツ系のクッキー。

「いただきます…」

お腹はすいてはいないんだけどキツネさんのご好意なので頂くことに。

疲れた時には甘いもの…クッキーにアイスココア。

うん、見事な組み合わせで甘すぎる。


けれどそれを文句言うほどの元気もあまりないのでもう一つの本題へと入ろう。

「ねぇキツネさん」

「何でしょう?」

「明日私、バイト初日だよね?」

「そうですね」

…そうですねって。研修とかさ、事前に説明なり色々あるでしょ。


私のジトーとした視線を受け流し、キツネさんは自然にクッキーを摘むとポイッとお口に。

「まぁやることは単純でして。 私が作ったモノを運んで、始めと終わりに掃除をしてくれれば

 良いですよ。 お給料は月末。 あとの細かいことはその都度きちんと説明します」

「確かに…別にタヌキ様やキツネさんを疑うとかそーゆうのはないし。

 あ、そうそう、服装はどうするの?」


ちなみに服装はだいたいこんな感じ↓

キツネさんはYシャツに黒のズボン。腰からのエプロンを付けてて色はズボンと同じく黒。

タヌキ様は縦ストライプの入ったYシャツにクリーム色のズボン。その日によって色の違うエプロン。

このエプロンは普通の首と腰で紐を結ぶタイプ。


「服装は特に指定はないですね。 ただオーナーと同じタイプのエプロンをしてもらう、くらいです」

「ふぅ~ん……」

その後ポツポツとゆっくり質問をして仕事を把握。 

お客さんがいないのでカウンターに入って色々見せてもらった。

へぇーこうなってんだ。へぇーとまぁ簡単に覚えて、早速明日本番なんだが…。


いささか緩過ぎる気もしなくはないがまぁ元々がタヌキ様がいない時の応急処置らしいのでこれでいいんだとか。

上司のキツネさんがそう言うのならまぁいいかと納得し、夕飯まで家で昼寝をしたかったので帰ることに。

「じゃあね、キツネさん」

「えぇ、ではまた明日」

「明日は従業員ですか、私」

「私はその上司ですか」

では、また。


そして重い足を引きずりながら私は駅の向こうの自宅へと。

場面はいつもの。



昨日よりは早い時間。

自室の机に向かい、眠い目を擦りながら何とか起きている。

ホットコーヒーを入れてたが何故かホットミルクの役割をしてくれる。…甘くし過ぎたか。

もしかしたら久しぶりに日付変更前に落ちそうです、本当に。


けれどやらないといけない事があるので起きることに。

えぇ、やらないといけないのは「日記」です。


今日の出来事…いやぁ長い。 有希ちゃんとの待ち合わせ、それに盛大に遅れた私。

解決策として引き摺りこんだ君島トオル。 カフェからカラオケでの顛末。

ココアとクッキーの甘いコンビを選択したタヌキ堂でのキツネさんとの会話。

疲れのせいか簡略して書いてしまったがまぁいいだろう。

一応書き終えて、お気に入りのボールペンを置く。


ラブコメ展開…かぁ。

張本人にならないのが脇役以下一般人な私にぴったりだし、というか役不足だ。

むしろ主人公になるなら有希ちゃんや君島トオルに…でもラブコメっていうかこーゆーのって主人公は一人だよねぇ…で、ヒロインって最初は一人いるんだけど、色々なイベントで落として落として増えていくんだっけ? まぁいいや。

と、なると…主人公は君島トオルで、ヒロインが有希ちゃんか。


あれ……?

眠気でボンヤリとする頭がやや冷めた気がするが無視。

思考する余地ができた気がする領域で思考する。


何? 有希ちゃんってばヒロインポジションの子だから今日の出来事って彼女には必然というかごく自然な休日イベント? 何ですかそれ?

そして主人公が君島トオルだからアイツが助けるのも当然で明日の「一日強制デート」も当然な結果イベント。 だって、ヒロイン助けたんだもんね。


「えぇ~~~……」


布団に潜りながら一人呟く。

独り言にしてはやや感情過分な叫びだがここはまた無視して。

いい加減素直に受け入れてみたらいかかでしょう?という脳内のキツネさんには「なら巻き込むよ?」と脅しといて。


…明日はタヌキ堂でのバイトなんだからそんなイベント起きないハズ。

そう自分を説得して落ち着かせ、長く「待て」をさせてた眠気に身を任せた。



ラブコメってこんな感じだよね?な展開を元に。

このお話は「本編」な有希ちゃんと君島トオルに沿うような

サブなストーリー、そんなお話のつもりです。


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