82、
妹はリビングの中で身を隠していた。流し台の下。背の高い調味料をしまう場所。妹は全ての調味料を奥に押し退けて無理矢理納まった。ほんの少しドアに隙間があったのは、妹が大きかったからだ。そのおかげで隙間から外の様子が窺えた。そんな隙間に気がつかれなくて本当によかったと思う。
おばあちゃんがズボンのポケットの膨らみを押さえたのは、明らかにわざとだった。妹を逃すためだと思われる。男たちがおばあちゃんから視線を離した瞬間がある。その際に机の上に置いていた充電器をポケットにしまっていた。
男たちが視線を離した原因は妹にある。狭苦しいその場所でじっとし続けるのは難しい。結果、調味料が壁にぶつかり物音がする。
妹の大ピンチだ。
おばあちゃんはそれを救うためにもポケットに充電器をしまったようだ。直後にわざとらしい咳払いをして、視線が戻った瞬間にポケットを手で押さえた。そこにあるのか! 男たちの声が響く。おばあちゃんは頑なに否定をしながらも、決してその手を離さなかった。近づいてきた男たちが力尽くで引き離そうとしても、抵抗をやめない。
だったらおばあちゃんごと連れて行けばいいと男たちの一人が言い、そうすることにした。男たちは時間に追われている様子でもあったそうだ。しきりに早くしろと焦っていた。
そして慌てて出て行く男たちの様子を僕が目撃したってわけだ。




